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嫌なことは数えても減らない。
例えば雨の日の通学、毎朝の満員電車、グループワーク、ひそひそ話と仲間外れ。
それ以外にも小さな靴ずれ、逆剥け、綺麗に塗れなかった指先等、これらを昇華できずに18年も生きている。
幸せによく似た彼と出会ってから、増え続ける大小様々な嫌なことを見ないふりするのがとても上手くなったと思う。
彼もそうだと思う。そういう運命の上で出会った、同じ線の上をぐらぐら生きている者同士、そうやってしか生きられない。
それでも、一人じゃ無いだけでこんなに生きやすい。背負う必要のない不幸を二人で抱えるのではなく、置き去りにして見ないふりをする。私たちは、ズルいやり方でしか幸せになれない。
画面が光る“18:00 いつものとこで”
たったこれだけの文字が、この文字列が私を救う事を彼は知っているだろうか。
:
「いつものとこ」に君がいる事で俺を救えている事を知っているだろうか。
幸せはいつも新たな不安を連れてくる。
新たな不安も常にある焦燥感も人の溢れる街に置いて夜の中で2人は溶ける。18歳の彼女、永遠を生きる俺。
流線形になった俺の背中にぴったりとくっつき熱を与えてくれる彼女の一瞬を永遠にしたい。叶わないと分かっていても願わずにいられない。
不安を忘れたいだけ、行くあてもなく風を割る。彼女に希望を訊いても答えはない。

俺たちは2人でいることを望むだけ。
それ以上はなにもいらない。ひとりぼっちだった永遠に君がいてくれれば。
腹に回る腕に力がこもる、君が何かを言う。聞こえない。耳を寄せる。大きな声で君が言う。希望に沿う未来を捧げる。俺にしか出来ないこともあると久しく忘れていた。
「君と夜空を駆けたい」
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