ポーカーフェイス
部活が休み、雨の放課後、乗り換え駅の大きな本屋。
新刊や映画化した話題の本の表紙をサラッと見る。
雑誌のコーナーを抜け、一応参考書に目を通す。
詩集の棚を目指すまでの道すがら、ふと、目をやった文庫の棚に、見覚えのある立ち姿。
(あ、電車の子や)
立ち止まるでも、声をかけるでもない。
ただいつもと変わらぬ距離、視界に入れただけ。
(本好きなんやな)と思うだけ。
‥
良さげな本を一冊だけ買い、無くなりかけの消しゴムを新調した。雨の夕方は人の流れもゆっくりだなと、往来を眺めながらコーヒーを飲む。
買ったばかりの本を開くか、明日提出の課題をやるかぼんやりと考えながら、ふと視線を上げると、少し離れた席に見覚えのある白いマスコットと目が合う。
マスコットの持ち主、あの電車の彼女は、帰るところだろうかカバンを背負って、書店の袋を持ち、カップを下げにゆくところだった。
そんな背中を見送って、課題を進めるため筆記具に手を伸ばす。
どれくらい経っただろう、店員が新商品の試食を配る声で顔を上げる。
視線の先で大学生だろうか、ラフな格好のカップルが試食を受け取っている。
小さいトレーを持って回る店員が何かを手に取る。
見覚えのある布のブックカバー。
(あ、それ。)
思わず立ち上がる。
ガタ、と椅子が鳴って周囲の視線が少しだけ集まった。
(いや、何で立っとんねん)自分の行動に少し驚く。
驚きつつも、店員に声をかける。
「その本、多分、持ち主わかるんで」
店員は、少し不思議そうな顔をしている。
「知り合いの、友達の忘れ物です。」
店員はまだ、不思議そうな顔をしていたが、電車の彼女の本を回収できた。
自席に戻りコーヒーを飲みながら、
(名前も知らんのに、友達て)
と自分のことながら鼻で笑ってしまう。
(まあ、明日の朝も電車で会うやろ)
適当に納得させて、再び課題を進めるため、シャーペンを握った。
新刊や映画化した話題の本の表紙をサラッと見る。
雑誌のコーナーを抜け、一応参考書に目を通す。
詩集の棚を目指すまでの道すがら、ふと、目をやった文庫の棚に、見覚えのある立ち姿。
(あ、電車の子や)
立ち止まるでも、声をかけるでもない。
ただいつもと変わらぬ距離、視界に入れただけ。
(本好きなんやな)と思うだけ。
‥
良さげな本を一冊だけ買い、無くなりかけの消しゴムを新調した。雨の夕方は人の流れもゆっくりだなと、往来を眺めながらコーヒーを飲む。
買ったばかりの本を開くか、明日提出の課題をやるかぼんやりと考えながら、ふと視線を上げると、少し離れた席に見覚えのある白いマスコットと目が合う。
マスコットの持ち主、あの電車の彼女は、帰るところだろうかカバンを背負って、書店の袋を持ち、カップを下げにゆくところだった。
そんな背中を見送って、課題を進めるため筆記具に手を伸ばす。
どれくらい経っただろう、店員が新商品の試食を配る声で顔を上げる。
視線の先で大学生だろうか、ラフな格好のカップルが試食を受け取っている。
小さいトレーを持って回る店員が何かを手に取る。
見覚えのある布のブックカバー。
(あ、それ。)
思わず立ち上がる。
ガタ、と椅子が鳴って周囲の視線が少しだけ集まった。
(いや、何で立っとんねん)自分の行動に少し驚く。
驚きつつも、店員に声をかける。
「その本、多分、持ち主わかるんで」
店員は、少し不思議そうな顔をしている。
「知り合いの、友達の忘れ物です。」
店員はまだ、不思議そうな顔をしていたが、電車の彼女の本を回収できた。
自席に戻りコーヒーを飲みながら、
(名前も知らんのに、友達て)
と自分のことながら鼻で笑ってしまう。
(まあ、明日の朝も電車で会うやろ)
適当に納得させて、再び課題を進めるため、シャーペンを握った。