ポーカーフェイス

通学電車でいつも見る隣の女子高の制服。名前も学年も知らないけど、顔は覚えている。人の波の中で、あの子を見かけると、(お、今日もおる)と思う。

校章のついたカバンには目を引く大きめのマスコットが付いている。伸びた背筋、手には文庫本。
(いつも本読んどるな)
混んでいる電車の中で、彼女の周りは不思議と静かだった。

彼女達、女子校の人らが降りる駅を知らせるアナウンスが聞こえて気持ち半歩、扉から遠ざかる。
セーラー服の波がじわじわと押し寄せる。
彼女は大抵周りから半拍遅れて立ち上がる、(自分、本に集中しすぎでやで)と少し面白い。

駅に着き、扉が開く、セーラー服が一斉に降りてゆく。
朝の少しひんやりとした風が車内に吹き込む。
ガッ…っとした衝撃の後、
ツン、とカバンが引っ張られる。

「わ、ごめんなさい」
文庫本の彼女が、俺のカバンに引っかかったあのマスコットを触っている。
誰でも知ってるあの白いキャラクターと目が合う。
「ええよ、取れる?」
「はい、すみません。」
するりと外れたマスコットを握りしめたまま、人混みをかき分けて彼女は駅へ消え、電車の扉が閉まった。
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