短編
166.5センチ。
未だにジワジワ伸びる身長を止める術を知らない。
周りの女子より頭一個分高い、制服の袖が少し短い。
下手したら男子より背が高く、ガタイがいい気がする。
スポーツするには恵まれた体だと納得してる、自分の武器だと思える。早く走れる、高く飛べる。
でも、彼の隣に並んで歩くとなると話は別だった。
気になるクラスメイト、不二周助くん。
カッコいいというより、綺麗な人だと思う。
優しくて、穏やかで同い年だと思えないくらい大人っぽい。
教室では席に座って話すだけだったから、こんなふうに並んで歩くことなんてなかった。
中学3年、一大イベントの修学旅行で自由行動の班が同じになった。男女混合6人、みんな楽しそうだ。
軽いスタンプラリーになっていて点在するチェックポイントを探しながら歩く。
ちょっとした謎解きや、それに伴う話し合いの中で、前を歩く友達たちが男子を見上げて笑っている。
楽しそうな横顔をぼんやり見ていたら、隣から
「楽しそうだね」
柔らかく笑う声がして、そっと、不二くんの方を見る。
目線の高さが、思ったよりずっと近い。
目があったことが嬉しい。それと同時に
見上げずに目が合うことが恥ずかしい。悔しい。嫌だ。この感情にぴったり合う言葉を私は知らない。
とにかく、周りの女子みたく可愛らしく笑えない。
彼の隣に立つ自分がすごく大きい気がして悲しくなる。
「あ、見て。あそこに次のヒントありそう」
彼の指が指す方を見ると、
整えられたお庭の低木の影に、猫が丸まっている。
「不二くん、あれはネコだよ。」
「ネコだね。」
不二くんがくすくす笑う。
そこでやっと彼が冗談を言ったんだと気づく。
笑ってる不二くんの顔をまじまじと見てしまう。
思ってたより子供っぽく笑うんだな。なんて失礼かもと思ったり、そうだよね、同じ15歳だもん子供っぽくなきゃ困るよ。と思ったり。なんか脳内が忙しかった。
「あのネコがヒントだったら面白いのにね。」
意外とお茶目というか、適当なことも言うんだな。なんて、彼のことを全然知らなかったと自覚する。
「…ネコはきっと移動しちゃうから探すの大変だね」
つまんない返事をしちゃったかもな、でも、なんで言えば面白いかもわからなかった。
「…ふふ、そうだね。」
不二くんが笑ってくれて、救われる。
遠くで友達が私たちを呼んでいる。
気づかないうちに随分と置いて行かれていたみたい。
私たちに向かって手を振っている。
不二くんに「置いて行かれちゃったね」と言われて初めて2人きりだと認識した、さっきまで身長の事で悩んでいたのに、いつの間にか自然に彼と並んでいた。
「はやく追いつかなきゃだね」
わたしの言葉に、不二くんが柔らかく笑った。
歩き出してからもう一度、隣を見る。
目線の高さは変わらないのに、さっきより少しだけ苦しくなかった。
未だにジワジワ伸びる身長を止める術を知らない。
周りの女子より頭一個分高い、制服の袖が少し短い。
下手したら男子より背が高く、ガタイがいい気がする。
スポーツするには恵まれた体だと納得してる、自分の武器だと思える。早く走れる、高く飛べる。
でも、彼の隣に並んで歩くとなると話は別だった。
気になるクラスメイト、不二周助くん。
カッコいいというより、綺麗な人だと思う。
優しくて、穏やかで同い年だと思えないくらい大人っぽい。
教室では席に座って話すだけだったから、こんなふうに並んで歩くことなんてなかった。
中学3年、一大イベントの修学旅行で自由行動の班が同じになった。男女混合6人、みんな楽しそうだ。
軽いスタンプラリーになっていて点在するチェックポイントを探しながら歩く。
ちょっとした謎解きや、それに伴う話し合いの中で、前を歩く友達たちが男子を見上げて笑っている。
楽しそうな横顔をぼんやり見ていたら、隣から
「楽しそうだね」
柔らかく笑う声がして、そっと、不二くんの方を見る。
目線の高さが、思ったよりずっと近い。
目があったことが嬉しい。それと同時に
見上げずに目が合うことが恥ずかしい。悔しい。嫌だ。この感情にぴったり合う言葉を私は知らない。
とにかく、周りの女子みたく可愛らしく笑えない。
彼の隣に立つ自分がすごく大きい気がして悲しくなる。
「あ、見て。あそこに次のヒントありそう」
彼の指が指す方を見ると、
整えられたお庭の低木の影に、猫が丸まっている。
「不二くん、あれはネコだよ。」
「ネコだね。」
不二くんがくすくす笑う。
そこでやっと彼が冗談を言ったんだと気づく。
笑ってる不二くんの顔をまじまじと見てしまう。
思ってたより子供っぽく笑うんだな。なんて失礼かもと思ったり、そうだよね、同じ15歳だもん子供っぽくなきゃ困るよ。と思ったり。なんか脳内が忙しかった。
「あのネコがヒントだったら面白いのにね。」
意外とお茶目というか、適当なことも言うんだな。なんて、彼のことを全然知らなかったと自覚する。
「…ネコはきっと移動しちゃうから探すの大変だね」
つまんない返事をしちゃったかもな、でも、なんで言えば面白いかもわからなかった。
「…ふふ、そうだね。」
不二くんが笑ってくれて、救われる。
遠くで友達が私たちを呼んでいる。
気づかないうちに随分と置いて行かれていたみたい。
私たちに向かって手を振っている。
不二くんに「置いて行かれちゃったね」と言われて初めて2人きりだと認識した、さっきまで身長の事で悩んでいたのに、いつの間にか自然に彼と並んでいた。
「はやく追いつかなきゃだね」
わたしの言葉に、不二くんが柔らかく笑った。
歩き出してからもう一度、隣を見る。
目線の高さは変わらないのに、さっきより少しだけ苦しくなかった。