短編

猛烈に暑い夏休みど真ん中。
お盆休み的な?部活連休的な?とにかく彼女とお泊まりデートするためみたいな休み。
「海が見たい!」なんて言うからチャリ2ケツして少し遠くまで来たりして。めっちゃ夏って感じ楽しい。

暑すぎてやばいし、海の手前の最後のコンビニだって地図見ながら言うから入るしかない。
「あああ〜すずし〜」
「お前毎回それ言うよな」
(おっさんみたいな声出すなよ、せっかく可愛い顔してんだから)って思ったけど言ったら蹴られるからわざわざ言わない。
「だって生き返るし」なんて、笑うから確かに生き返るわ〜と共感してTシャツの裾をバサバサ動かして涼しい空気を皮膚で感じる。
コンビニに入ったせいか彼女のハンディファンのモーター音が大きく聞こえる。

「もう外出たくねぇ〜」
爆裂にかいた汗が冷えていく、気持ちいい。
「住む?」「コンビニに?」「コンビニに」
なんの権利があってコンビニに住むか誘うんだよと面白くなる
「住むか〜」
こう言うのは全力でノるほうが楽しいに決まってる。
「雑誌読み放題、アイス食べ放題」
「最高すぎ」
グミの棚見ながらコンビニでやれること考える。
テレビないから意外と暇かもと思った、ゲームできないし。Wi-Fiあんのかな。
俺のビーサンの足音がペタペタ聞こえる。
彼女の偽物のクロックスからも同じ音しててなんかウケる

アイスケース見ながらここで昼寝したら気持ちいいだろうなー死ぬかなとか思うくらいには外が暑い。
「アイスどれにする?」
急な上目遣い、可愛いしぬ。
「当たり前にガリガリ君!!」
照れ隠しにでかい声出しちゃったウケる。
「絶対こぼすよ」とケラケラ笑うから、
「お前みたくチンタラ食わないからこぼさねぇよ」なんて言い返す、それでも笑ってるからやっぱ楽しい。
「赤也と違って、ちゃんと味わってんの」
このクソ暑いのにバニラだかミルクだかの白くて甘ったるいのを選ぶのがそもそも間違えてると思う。

「一口が小せえんだよ、いつも手ベタベタじゃん」
「うるさいな〜、オレンジジュースも買お〜っと」
偽物のクロックスがペタペタ移動する、飾りがいっぱいついてて重たそうだなーと思った。
紙パックのオレンジジュースを手に取るのを横目に
「俺コーラ」とペットボトルコーナーを目指す。
「ゼロ?」「どう考えてもノーマルだろ」なんて会話しながらペタペタついてくる可愛い。後ろで「どう考えてもゼロだな〜」
カロリーとかゼロのが良くね?とケラケラ笑ってる。
笑い方まで可愛いのずりいよなーなんて思ったり、
レジ横のホットスナックを買うか悩んで、今日の晩飯がカレーとメンチカツなのを思い出して我慢したりした。

自動ドアの向こうは灼熱で最悪だった。
「アヅ〜いしぬ」半袖の袖をこれ以上ないくらい捲り上げる。それでも暑さは何も変わらない気がした。
隣で彼女も「これはしぬ」とTシャツの裾を捲り上げててヘソが出てる。
「ヘソ出てる」と言ったら「そっちもワキ全開じゃん」と言われて何か違うと思いつつ何も言い返せなかった。

チャリを動かしながら夏を嘆く。
嘆くってどう言う意味か知らんけど。
「なんでこんなに暑いのまじ日本終わりだわ」なんて俺が言っても「ほんとに終わりだよ」と笑う彼女が楽しそうでこんな終わりならアリかもと思った。

「こんな暑いならマンホールで目玉焼き作れるよ絶対」とか言うから「じゃあそこで生ハム焼いてハムにしようぜ」って言ってから普通に焼肉食いてえなと思った。
「赤也ってまじバカだよね、生ハム焼いてもハムにはなんないよ、別もん」チャリの後ろであまりに楽しそうに笑うから俺このままバカでもいいかと思ってしまう。
「まじかよ、ハムの生が生ハムじゃねーの?じゃあ名前変えた方がいいじゃん」
バカな俺が好きならお前もまあまあバカだな〜とか思っただけで言葉にはしなかった、そんなことより生ハムの話が楽しかった。
「えー、なにに?」「偽ベーコン」「しぬ」
ほんとにしぬほど笑ってくれるから大好きだなーって思う。
でもあれよね、プロシュートとか言うよね、何語か知らんけど。なんて楽しそうにしてくれる彼女とギャハギャハとじゃれあいながら海に向かって漕ぎ出す。
携帯のスピーカーからは爆音で流れる音楽、今俺たち全力で夏って感じ、知ってる歌詞だけ歌ったりしちゃって、誰が見ても青春で幸せだと思う。

:

海に続く砂まみれの階段に並んで座る、ギリギリアイスの形を保ってるのを急いで食べる。少し頭がキーンとするまあ、これも夏だな〜なんて思ってたら隣で彼女が騒ぐ「わーぁ溶けてる!!」当たり前だろと笑ってしまう。
「お前食うの遅ぇんだって」と笑い、見てみろよ半分以上食ったと見せびらかす。俺より小さくて高いアイス食ってる彼女が「赤也が食べんの私より早いだけだよ!」とか言って肩パンしてくる。小さい拳で殴られても痛くはないけど、不意打ちで体が揺れた。持ってたアイスが崩れる。
「うわ落ちた最悪」もったいね〜なんて笑える。
「バカじゃん」と彼女も笑ってる。

「アリさんのご飯だよ。よかったじゃん」
アリにさん付けする14才可愛いなオイと無意味に腹立つ、イライラじゃないなんかよくわからない感情を
「高級なもん食ってんな〜」とアリにぶつける。
落ちてぐちゃぐちゃのアイスにつま先で砂をかける。
当たった試しのないアイスの棒をゴミ箱に放る。

「次からカップにしろよ手汚すから」ぬるくなったコーラ飲みながら言う。
まだアイス食ってる彼女が「ウェットティッシュあります〜」とニヤーっと笑いながら言う。
「女子かよ」ぬるいコーラは心のなしか炭酸もゆるい、甘いだけの汁が喉に張り付く。
「女子だろ、こんなに可愛いんだから」と可愛いポーズでこっちを見るから、本心で「たしかに」なんて言う。
「可愛い彼女でよかったね」ニコニコしてる彼女が可愛すぎて脳みそ溶けてる、それは暑いせいかもしれないけど。
脳死で「たしかに」と言ったら何故か不満そうで2度目の肩パンを喰らう。暑さのせいか照れてるのか顔が赤かった。
「いてぇな〜」
全然痛くないし、照れ隠しで殴ってきても可愛いなと思った。言わないけど。
砂浜はそれなりに人が多かったけど、海はバカみたいに広くて、「前髪終わった〜」とか言ってる彼女は俺の隣で可愛くて、なんか、全部が完璧で最高の夏だった。
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