短編

「靴下、わざとか?」

彼が指差すほうに目をやる、私の足元、靴下。
ワザトカ?長さが違う、少しだけ。
朝からまるで気づいてなかった。

「うわ、わざとじゃない、なにこれ」
と答えながら笑ってしまう。

短い方をぐいぐいと伸ばしてみるが、つま先がギュンと上がる。これは長い方を弛ませる方が良さそう。
何もかもが面白い。

だってもう放課後なんだもん。
顔を上げると、肩を振るわせて笑っている。

「笑わないでよ、いつから気づいてたの」

止まらない笑いが連鎖して、2人で笑っている。
はたから見たらほんとうに変な二人組だ。

「朝から」
なんて当たり前みたいに言うから
「ちょっと、早く言ってよ!!」と彼の二の腕のあたりを小突く。
親にも友達にも気づかれず、指摘もされない。
自分でも気づいてない靴下の左右差を放課後になるまで1人で楽しんでいた彼はほんとに変わり者だ。

「あー、恥ずかし」
「誰も見とらんよ」
「見てたじゃん」
「俺だけじゃ」
「ならいいか」

ひとしきり笑い尽くして、帰路に着く。
歩き出した彼のカバンがあいている。
我慢できずに言っちゃう。

「ちなみに、今カバンあいてるのはわざと?」
「……わざと」
「おそろいだね」

私の靴下に気づいていて、朝から黙っていられるのは才能だよ。私は良くも悪くもすぐ言っちゃう。
彼といると退屈しない。
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