短編

夕暮れの堤防、前を歩く彼女のスカートが風を受けてヒラヒラしている。
そんな彼女の長い影を踏みながら歩く。

「今日さ、後輩に変なこと聞かれた」

彼女が急にくるっとこちらを向いて喋り出す。
バランスを崩して海に落ちないかヒヤヒヤする。

「変なこと?」
「佐伯と付き合ってるのかって」

この好意を周りに隠してるつもりはないけど、少し恥ずかしい。

「へぇ、なんで答えたの?」
「違うって。なんかめっちゃ驚いてた」

(まだ、付き合ってないからね)
心の中でつぶやいて、西日に照らされた彼女の横顔を眺める。

「……だろうね」
「うちら、そんなに仲良く見えるのかな」
「見えるんじゃない?」
「付き合ってるように見えるってこと?」
「そうなんだね」

思わず緩む口角、好きな女の子と付き合ってると噂されるほど仲良くなれていたらしい。


「めっちゃ友達なのにね」


「…待って」
「ん?」
「友達?」
「え、ちがった?」

聞き間違えかと思った、
友達?
こんなに好きなのに?

「え、だって、好きだって言ったよね?」
「まじだったの?」

恋愛としてってこと?
なんてびっくりした顔をしている。
信じられない。

「嘘でしょ…」
「冗談かなって」
「冗談だと思ってたの?」

これ以上確認しても傷つくだけだと思いながらも口は止まらない。

「思ってた!いっぱい言うな〜って」
「そりゃ言うよ。好きなんだから」

もう笑うしかない。
こんなに隠せてないのに届いてなかったなんて。

「軽いよ」
「本気だよ」

俺の視線から逃げるように海を眺める彼女は眩しそうに目を細める。

「えぇ…」
「えぇ…はこっちのセリフだよ」

彼女のこの、つかみどころのない感じ。
彼女の左手を掬い取ろうと伸ばした右手は空を切る。
2、3歩進んだ彼女が振り向いて、

「次からちゃんと受け取るね?」

なんていたずらっぽく微笑む。
風が吹いて、スカートがヒラリと揺れる。
手を伸ばしても捕まえられない。
そんな彼女がどうしようもなく好きなんだ。
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