短編
自転車の鍵が無いことに駐輪場で気づく放課後。
駐輪場から教室まで来た道を走ってもどる。
友達には「一緒に行こうか?」とか「待ってるよー」と言われたが、先行ってて〜と返した。
放課後の廊下は人がまばらで少し涼しかった。
教室にはなぜか仁王くんがひとりでいて、窓の外を見ていた。声をかける前に足音で気付かれたらしく、彼はゆっくりとこちらを向く。
そのまま、目が合うとポケットに手を入れたまま教室の机の間を縫うように歩きこちらへ近づいてくる。
彼はこれから部活なのだろう、黄色いジャージを着ていて、制服の時とは違う人みたい。
目の前に立った彼はポケットから手を抜いて、
「どっちだ」
と二つこぶしを差し出す。
「え…?」
なんのことかわからず戸惑う。
「ん」
ズイと差し出される彼の拳が、骨ばっているなと思った。
「…みぎ?」
よくわからないまま答える。
私が右と言って指した拳は彼の左手だったと遅れて気づく。
ふ。と軽く笑って彼は左手を返して開く。
パっと開かれた手のひらには、私の自転車の鍵。
「え、なんで?」
いろんななんでが頭に浮かぶ、なんで私のだとわかったの、なんで仁王くんが持ってるの、なんで私が探しに戻ってくるとわかったの。
なんで左手を選ぶってわかったの。これはたまたまか。と勝手に納得する。
私のいろんななんでに対して彼は
「プリ」
と一言だけ言って左手をヒラヒラ振りながら部活へ歩いて行った。
そんな彼の背中にお礼を言うまで時間がかかった。
駐輪場から教室まで来た道を走ってもどる。
友達には「一緒に行こうか?」とか「待ってるよー」と言われたが、先行ってて〜と返した。
放課後の廊下は人がまばらで少し涼しかった。
教室にはなぜか仁王くんがひとりでいて、窓の外を見ていた。声をかける前に足音で気付かれたらしく、彼はゆっくりとこちらを向く。
そのまま、目が合うとポケットに手を入れたまま教室の机の間を縫うように歩きこちらへ近づいてくる。
彼はこれから部活なのだろう、黄色いジャージを着ていて、制服の時とは違う人みたい。
目の前に立った彼はポケットから手を抜いて、
「どっちだ」
と二つこぶしを差し出す。
「え…?」
なんのことかわからず戸惑う。
「ん」
ズイと差し出される彼の拳が、骨ばっているなと思った。
「…みぎ?」
よくわからないまま答える。
私が右と言って指した拳は彼の左手だったと遅れて気づく。
ふ。と軽く笑って彼は左手を返して開く。
パっと開かれた手のひらには、私の自転車の鍵。
「え、なんで?」
いろんななんでが頭に浮かぶ、なんで私のだとわかったの、なんで仁王くんが持ってるの、なんで私が探しに戻ってくるとわかったの。
なんで左手を選ぶってわかったの。これはたまたまか。と勝手に納得する。
私のいろんななんでに対して彼は
「プリ」
と一言だけ言って左手をヒラヒラ振りながら部活へ歩いて行った。
そんな彼の背中にお礼を言うまで時間がかかった。