短編

「ねえ!!!」痺れを切らした私の声が響く。
「うぉっ、びっくりした!」私を上回るでかい声。
彼の広い背中が大きく揺れる。
振り向いた彼の優しい顔が私の不機嫌な顔を見て、眉毛を下げる。
「お、どうした?」少し心配そうでもある。

「前髪!!」
可愛げとかもはやどうでも良かった。

「まえがみ?」
聞こえた言葉がそのまま口から出てきたって感じ。

「前髪切ったの!」
いう前に気づけよ!とは言わなかった。

彼のポカンとした顔に、より一層むかつく。
気づいてないんだろ!言及してこないし!
わかってる、前回ロングをボブにした時も何も言われなかった。そういう男だとわかってはいるけど、
毎日一緒にいるんだよ?少しの変化にも気づいて欲しい。
あ、でも太った?とか当たり前に言いそうだから、それは言わないで欲しい。
そういうオトメゴコロ、わからないだろうな〜。


「あー!それでか」
「今日ずっと可愛いと思ってた」


ほんとに気づいてたかお前。という気持ちと
好きな男に可愛いと言われて嬉しい気持ちが同時に湧いて、ギリ嬉しさが勝つ。顔がニヤける。

私の上がった口角を見て、勝ちを確信した彼が私の頭をわしゃわしゃ撫でるから前髪が散らかる。
「やーめーてーよー!」
声だけで抵抗して彼の大きな手を受け入れる。
彼の飼い犬たちと同じ撫でられ方なのはこの際別に良いとしよう。

「お前はいつも可愛いよ」
なんて、ピカっとした笑顔で言うから、やっぱり好きだな〜と思った。
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