3-B

大学2年の短い冬休みも終わり、ダラダラとした日常を適当に過ごしている。
明日は意図的に作った全休だし、珍しくバイトも休み、いわゆる完オフってやつなので授業終わりに友人達と街に出た。
外は寒かったが、街には少しずつバレンタインが近づいていた。
チョコレートのポップアップストアを眺めつつ「これ良いじゃん」とか「相手いねぇ〜」とか口々に言いながらぶらぶらと散策をし、暖を取るためにカフェに入る。

コーヒーを飲みながらどうでも良い話を延々と口からこぼす、気になる化粧品、来月のイベント情報、大学の課題、友人の噂話。喋りながら寒々しい街を眺めていた。
友人達はこの後バイトだったり飲み会があるのでそろそろ解散するか〜と思いつつ誰も立ち上がらない。外は寒いし、この時間は楽しい。きっかけがないまま椅子を温める。私はこの後も暇なので、いくらでもここにいられるし、予定のある友人達も時間を気にするそぶりもない。
みんなが帰ったら映画でも見て帰ろうかと頭の隅で考えた。

ダラダラとした時間を過ごす私を知ってか知らずか携帯に通知が鳴る。
仁王からの「18:00ここ集合」という文字とマップのURL
私がトークルームを開くと同時に
丸井からの「3人で予約しとく〜」の吹き出し。

こいつらは私が絶対に来るという確信があるのか…と驚くやら嬉しいやらで適当なスタンプを送り返す。即既読が2つ付く。ずっと見てんのかい。と笑えた。
マップアプリを開いて場所を確認する、知らん場所すぎるなと思いながらメッセージアプリに戻ると、
今きた吹き出しのすぐ上に成人式の写真が並んでいて、先週も会ったばかりだな。と思った。

友人達に予定が出来たと伝えて、時間を見る。
彼女たちもこの後の予定に向かうと笑いながら立ち上がる。「時間やべ〜」とか「バイトだる〜」とかおおよそ全ての大学生が言うような言葉を例に漏れず口からこぼしつつ各々の予定に向かうため温かいカフェを後にする。

外はやっぱり寒くて、スマホを持つ手が悴む。
乗り換えアプリを開きつつ今向かうと少し早いかもなと思う。
乗り換えアプリと地図アプリを交互に見ても、ちょうど良い時間潰しもないので適当に歩き出す。

駅に着き温かいお茶を自販機で買う。一月はまだまだ寒い。早く暖かくなればいいと思うけど、暑い夏も嫌だな。ずっと春ならいいか、いやそういうわけにも…などとどうでもいいことを考える事で電車を待ちながら時間を潰す。イヤホンからは友人に勧められたバンドミュージックが流れる。

電車の中は無駄に暑い、外の寒さに合わせてアウター選んでるんだから暖房こんなにかけてくれなくて良いですよー。とマフラーを緩める。
微妙な時間に微妙な方向へ向かっているせいかすんなり座れた。鏡で前髪とメイクの状態を確認しつつ、リップを塗り直す。ポーチをしまったタイミングで通知が鳴る。

「早く着きそう」という丸井の言葉に
仁王が変なスタンプを一つ送ってきた。
可愛くないキャラクター、どこで見つけるの。と思いながら私も変なスタンプを送る。
目的の駅に着くまで、どうでもいいスタンプの応酬とか、何分の電車に乗るとか、今どこだとか通知が止まなかった。
最終的に駅のホームの待合室で全員集合すると言う状況になって、こいつらってずっとバカだなと思った。
いつからか挨拶が「おつかれ〜」になったし、制服も無くなったし、毎日顔を合わせたり出来なくなったが、こうして多い時は月に何度か、少なくとも2ヶ月に一度は顔を見ている気がする。

指定された居酒屋はチェーンと個人の間みたいな空気感で、仁王が好きそうだなと思った。
席につくなり仁王が私にメニュー渡してくるからざっと眺めて仁王に返す、アウター脱ぐ前にメニューを決めるのは初めてだなと面白かった。
おしぼりが温かいを通り越して熱い。
「私、生で。揚げ出し豆腐頼んでいい?」
「カシオレ。ポテト、マヨケチャで。」
「俺も生、食いもん適当に頼むわ、すいませーん!」
丸井に注文任せるとテーブルから溢れるほど頼むから慌ただしくなる、でも彼の選ぶものにはハズレがないのでいつも流れで任せてしまう。
「んで、今日は何の会な訳?」
注文を終えた丸井がおしぼりをたたみ直しながら核心に触れる。
仁王が「まあ、まあ」とお茶を濁す。
「前回から1週間しか経ってないよ」
さっき見た成人式の写真を思い出す。
仁王が「まあまあ、」と苦笑いしてるところに飲み物が届く。

丸井が「んじゃ、かんぱーい」グラスを持ち上げる。
「なんの乾杯さ」笑いながら、みんなでグラスを触れ合わす。
じわじわ届く料理と、1週間の近況報告を楽しむとほどほどに酔った丸井が、「まあ、大体想像つくんだけどよ、仁王お前先週地元帰ってきてこっち戻ったら寂しくなったんだろ」とニヤニヤしている。
先週の成人式やら同窓会で旧友に会って寂しくなったらしい。
「何、仁王まだこっち友達いないの?」もうすぐ2年目も終わる大学生活でいまだに友達を作れていない事はとても彼らしいなとも思った。
「未だにホームシックかよ。はやく友達作れよ」仁王を肘で小突きながらケラケラ笑う丸井は皿に残った最後の唐揚げを自分の皿に移した。

「そういうのが一番傷つくんじゃが」仁王がカルーアミルクに口をつける。
「なんで、地元残らんかったの」私の他にも地元に残っている人は多い。かつてのテニス部も何人かは地元にいたような気がする。さらに言えば地元から東京の大学に通ってる人だって当たり前にいるのになと思う。
「俺は普通に友達いるし、大学入って増えたし」唐揚げを食べながらあっけらかんと言う丸井は確かに昔から友達が多い。明るく優しい丸井の周りには人が多い。
私と仁王は割と狭く深くのタイプだから、丸井が仲良くしてくれる事に感謝しつつ、仁王はチームメイトとしても、なぜ私なんかと疑問もある。

店員さんが追加したお酒を運んできて、空いた皿を片付けてゆく。
テーブルを溢れさすのも丸井だが、片付けるのも丸井なので、何を頼んでも文句は言わない。今日は長芋の竜田揚げが美味しかった。
「俺たち優しいよな〜、仁王の急な呼び出しにすぐ駆けつけて慰めてやるんだから」と私と目を合わせる。
「まあ、今日なんも予定なかったし、明日休みだし」見たい映画もないのに上映時間調べてたくらいだし。と思って口にはしなかった。
「今度はウチで鍋パしよぉや、材料買って待っちゅうき」
酔ってかなり上機嫌なのに顔が赤くない。仁王は昔から色が白い、テニス部で外にいるくせに日に焼けないのが不思議でしょうがない。日焼け止めを塗ってるところも見たことが無い。変なやつ。
「本気で寂しがってるじゃん。一人暮らし向いてないよ」
2年も1人で住んでいてまだ寂しいなら本当に向いてないと笑ってしまう。
「おまんら今日、この後泊まって行きんしゃい」
脱色のしすぎでパサパサの白髪の酔っ払いがなんか言ってる。昔の彼は家の場所すら教えてくれなかったのに。
「いつからこんなに素直になったの、前はもっと秘密主義だったじゃん」と口にしてからそう言えば仁王は12月生まれだったなと思った。外でお酒が飲めるようになってから1ヶ月程しか経っていないなら、この感じも納得できるなとイジってやろうと口を開いたその時、

「俺はいいけど、こいつはダメだろ女だし」

「…は?びっくりした。急に女扱いされたかと思った」
出会ってから5、6年?もうすぐ7年目か、今までされたことの無い扱いに本気で驚く。
「したけど?男の家に泊まりはダメだろい」
「えなに、今までそんな扱いしたことないじゃん」
丸井はほどほど酒に強いので、酔っ払いって感じがしないせいか冗談に聞こえなくて精神衛生に良くない。
「俺もブンちゃんも、普通に女子だと思って接しよったんじゃけど」
「じゃあお前は誘ったらダメだろ」
「待って待って、いつから?急すぎなに怖、ちょっとキモいんだけど…!」
酔ってふにゃふにゃしてる仁王と、酔ってるくせに真顔の丸井。お酒のせいでちゃんと思考ができない私の全員がちょっとずつおかしい。
当たり前みたいに私を異性として見ている体で話を進める2人についていけない。

ポテトにマヨネーズをつけながら丸井が
「急も何も、最初から女子だと思って接してるよ、逆にお前、俺たちのこと男だと思ってないだろい」とこちらを見ずに言う。顔も赤くないし笑ってもいないあたりマジなのか…?となぜか不安になってくる。
最初からって言うのはつまりえーと、中学生の頃同じクラスになって、何故かわからないけど3人でつるんでた時からってこと?と脳みそだけがフル回転していて気持ちは置いてけぼりだった。
「…男だとは思ってるよ、異性だとは思ってないけど」
必死に絞り出した答えがこれで合ってるかはもうわからなかったし、ほんとうに異性として意識したことが無かった。
「傷つくなーこんだけずっとアプローチしてんのに気づいてないとか」ポテトを食べながらそう言う丸井の顔をもう見れなかった。
「中学の頃からずっとアピールしよったん、気づいとらんかったん?」もうこの酔っ払いが何を言っても驚かないかもと思いながらジントニックの入ったグラスの水滴に視線を落とす。

「待って、本当に待って、なに?2人とも私のこと好きなん?酔ってる悪ノリとかじゃなくて?」
顔が熱いのはお酒のせいだけじゃないとわかっていたけど、バレたくなかった。口も上手く回ってない気がする。
「酔ってはいるけど、これはマジ。」本当に真顔で言うから怖い。
「てか何、本当に私のこと好きなん?中学の時から?でもお前ら彼女いたじゃん」必死に思考を巡らせて、この話が冗談だと言う裏付けを探す。時間を稼ぐために口数が増える。グラスの水滴が輪を広げてゆく。
「それはお前に彼氏いたからだろ」と当たり前みたいに言う丸井はグラスの中の梅干しをマドラーで潰していた。
「彼氏いたら何?好きな女に彼氏いたら、彼女作っていいルールなん?普通に全方向に失礼では?」
必死に脳みそを働かせたせいかだんだん酔いが覚めてきて、良いのか悪いのか、この変な空間を客観的に見れるようになってきた。

梅干しサワーを一口飲んでから丸井は
「まあ、オレは結構モテてたし?告白されたから、まいっか。って何度か」とヘラヘラしている。
「なんか腹立つな〜…」
確かに丸井は何人か彼女がいた気がするし、バレンタインはやたらチョコレートを貰っていた気がする。
同級生やら後輩やらと、半年単位くらいで付き合ったり別れたりしているイメージがある。

ほとんど減ってないカルーアのグラスを両手で持ちながら、「まーくん、彼女おらん」とろんとした目でこちらを見る仁王に「酔って過去を改変するなよ。他校の先輩と付き合ってたの忘れてねぇからな」丸井が仁王に肩パンを喰らわせる。
「あー、なんとなく覚えてるわ」
少し派手目な先輩と制服姿で歩いてる仁王の記憶が蘇る。一緒に目撃した友人が隠し撮りしてたことまで思い出した。あの写真は結局どうしたんだっけ。
彼女が他校の人だったせいか、いつから付き合ってていつ別れたか正確な期間を知らないかもしれない。

「あれは彼女じゃないき、まーくんはおまん一筋じゃ」と目尻を下げて私を見つめる仁王から視線を外し、そう言えば一人称に言及するタイミングを失ったと思ったし、
仁王の下の名前を呼んだことが無いせいで名前をすぐに思い出せなかった。まさはるだからまーくんか。と遅れて納得した。
「仁王の酔い方だるいな〜」もう笑うしかない。
「でもこいつカルーアしか飲んでないぜ」
「この見た目で酒弱いのだるいな〜」
余計なこと考えてたせいで聞き流した一筋宣言に後からじわじわ照れてしまう。ジントニックを飲み干す。そうする事で変な空気を押し流したかった。

私がグラスを空けたのを見て丸井が仁王にメニュー取ってと合図をする。酔っ払いのくせに仁王からちゃんと私向きにメニューが差し出される。
実際、こいつら気が効くというか、サラッと優しくしてくれるんだよなーと今更ながら思った。
「んで、オレと仁王どっちが好み?」冷たくなったつくねを食べながら丸井が言う。
「え、私もっとインテリジェンスな感じが好きなんだけど」メニューから視線を逸らさず答える。
これは本当。賢い男が好きだ、過去の彼氏がそうだったかと聞かれたら答えには困るけど。
もう飲むのやめよかな、とグレープフルーツジュースか、ノンアルカクテルにするか悩みつつメニューを眺める。

「は?オレめっちゃメガネ似合うけど?」ドヤ顔の赤毛、
「まーくんはメガネもスーツも似合うが?」張り合う白髪。全然飲まないからカルーアが薄まってゆく。
「本当になんの話?知性のかけらもないじゃん」
笑いながら次はシャーリーテンプルにしようかなと思う。
「まーくんはチェスもできるが!!」急に大きな声でそう言い、立ち上がる仁王。
仁王のでかい声初めて聞いたなと見上げてしまった。
居酒屋の暗い照明が仁王の長いまつ毛を影で強調する。
丸井がトイレか?と少しずれて道を開ける。ぐだぐだの仁王を見て危な、と氷が溶けまくりのグラスを倒さないようにテーブルの中央に寄せる。
「…てか2人はどういうスタンスなの。信じ難いことに2人とも私のこと好きなわけじゃん?こう、どういう関係というか、どうしたかったわけ?」
仁王がフラフラとトイレに向かう背中を見ながらまだ会話の成り立つ丸井に向かって聞きたいことがまとまってないまま質問をぶつける。
「まあ、平たく言えばライバルってことになるんだろうな〜、普通にクラスメイトで部活一緒で好きな子が一緒の友達って感じ。なんか、お前気づく様子一切ないからこのままでも楽しいしいっか!ってズルズルここまできた感じ」ケラケラと笑う丸井を見ながら彼らは人に気持ちを強要しないところが、一緒にいてすごく居心地が良いなと思い出した。それが『友達として』とても好きだった。
「はぁ〜…いまだに信じられないし、信じてないんだけど、今後どうすんの、どうなんのこれ…」
普通に仲のいい友人だと思っていたばっかりに、急な関係性の変化に心がついてこない。深いため息が出る。
もう6年も友達だったわけで、急に実は好きでした。なんて言われてそのまま友達として仲良くできるほど図太く無いし、急に異性として意識できるほど浅い関係じゃ無い。

「どうもなんねぇんじゃね?3人でいるのが楽しいんだし」
あっけらかんとそう言う丸井に救われる。
梅干しサワーを飲み切る丸井の肩に手を置いて
「まーくんも、3人でいるのたのしい。」とトイレから戻ってきた仁王もこの関係を肯定する。
「えぇ…?それでいいならいいけど、いや、いいのか…?」
変わらないのなら良い気もするし、友人でいられるのはとても嬉しいが、彼らの気持ちを知った上で続ける事ができるのか不安でもあった。

そんな私の顔を見て、少し顔の赤くなった丸井が「でもまあ、今後はもっと隠さなくなるけどな」と笑う。
「もっとぐいぐいアピールするき、待っとってね」そう言いながら仁王が私の隣に座ろうとする。
「…返事に困るな〜。あと、その顔腹立つわ〜…」
こう言う事を恥ずかしげもなく言えちゃう奴らなんだと思うのと、その相手が私である事にかなり動揺する。照れ隠しに悪態をつく。
仁王が物理的にぐいぐい押してくるから仕方なく奥にズレる。隣に座った仁王から高校の時から変わらない香水の匂いがする。
「どの顔?オレのかっこいい顔の事なら見慣れてもらわないと困るんだけど」ニヤニヤ笑う丸井の顔はやっぱり少し赤い気がする。2人の変なテンションのせいか私の顔も熱い。
隣に座る仁王が白く細い指で私の頬をつつく。「顔真っ赤じゃね〜やっぱおまんは可愛いのう」しみじみと言われたせいかなんかすごく恥ずかしい。触られたところが熱を持つ。頬をつつく仁王の手をはらいのけて小さく叫ぶ「あー!もー!!顔が赤いのは酒のせいだよ…!!私追加頼む、2人は!」これが今の私にできる必死の抵抗だ。

「なんか飲む。ブンちゃ、メニュー取ってくれん?」
「仁王カルピスしか頼むなだるいから」
2人の会話を聞きながら空いた皿を重ねてゆく。
あんだけあった料理のほとんどを丸井が食べた、いつも会計時にいっぱい食ったからと少し多く出す丸井は他の飲み会でもこうなんだろうか。とどうでも良いことを考えた。
「まーくんカルピシュサワーのむ」
「もう口回ってないじゃん、酒飲むのやめな」呂律の回らなくなった酒に弱い仁王の手からメニューを奪って、丸井に渡す。
「じゃあ、ブンちゃんの一口もらう」
「オレが飲むやつお前飲めないだろい」
「飲む〜…」
どうでも良い駄々をこねる仁王を横目に店員さんを呼ぶ。シャーリーテンプルとお冷を頼み丸井に注文を促すべく視線を送る、「あ、ハニートースト追加で」てっきり酒を頼むと思っていたから最初、何を言ってるかわからなかった。

「てか食い過ぎじゃね?何ハニートーストって」いたずらっぽく笑いながら丸井が「え、シメの甘いもの」と当たり前みたいに言うので笑ってしまう。自然な仕草で彼は、仁王の残した薄いカルーアを飲み干す、端々に滲み出る兄属性が彼の良さを引き立てるんだろうなと心の中で思った。丸井には確か弟が2人いた気がする。
「まじ、丸井ってこんだけ食って太らないのなんなの」羨ましい限りだ、私は食べれば太るし、食べなくても痩せない。インドア派なのも手伝って代謝が良く無いんだろうなとずっと思ってはいるが運動は好きじゃない。
「動いてるからだろうな〜運動やめたらすぐ太ると思う」
あとバイトがハード。と笑っている。
飲み物が先に届く、シャーリーテンプルを受け取る。
カピカピのポテトの端っこを箸でつついている仁王は多分もう眠たいんだろう。受け取った水を少しこぼしてから、そっと一口飲んであくびをしている。
「まだテニスしてんだっけ?」高校までは真剣にやってたのを割と近くで見ていたが、大学でも続けているかは知らない。いつのまにか仁王の動きが止まっている。知らない間に寝たんだろう。
「いや、テニスはたまに。普段はフットサルか〜、最近スポーツチャンバラ始めた」
「なんそれ、友達多いやつすぎる。なんで丸井みたいな陽キャがうちらとつるんでるのかわからん」
スポーツチャンバラなんて名前しか知らない。多分だけどサバゲーもやるだろうな。丸井にはスポッチャ行って楽しめる友達がいっぱいいる。スポーツできて、ダーツ好きの仁王はともかく、私はスポッチャどころかカラオケも楽しめないタイプの人間すぎてそれらに誘われたこともない。これも彼らの優しさかもなと思った。

ハニートーストが届いて店員の背中を見送ってから丸井がフォークで溶け始めてるアイスを転がしながら「普通に好きだからだろ」と少し掠れた声で優しく言うから、流石に少し、初めて異性として意識した。隣で仁王が寝息をたてている、香水とは別の何かいい匂いがする。
「返事しづら〜」笑って誤魔化したけれど、心臓の音がうるさかった。ハニートーストの甘い匂いが漂っていた。
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