詐欺師

「え。」口からこぼれた言葉を慌てて飲み込む。
後ろから回ってきた小テストには
仁王雅治 10/15の文字
いつも全部解いて一問誤答なのに、今日は10問解いて5問は空欄だった。

そこまで考えて、我に帰る。
(他人の小テストまじまじと見過ぎだな。)
慌てて自分の答案を重ねて前に送る。

考えない様にすればするほど意識してしまう。
人間の脳みそはなんて不便なんだろう。
そして、一瞬でも私のせいかと思った自分を恥じる。
私なんかが彼に影響するわけない。
昨日まで他人だったのだから、そして今もクラスメイトの枠を出ていないのだから。

授業中にも関わらず、思考は重く沈んでゆく。
この時間だけでシャーペンの芯は2回折れ、
カバンの中には選ばれなかったグミがじっと息を潜めて、昨日借りた本は同じところを何度もなぞり、栞は先へは進まなかった。

そんな感情とは裏腹に空は晴れて少し冷たい風がカーテンを揺らす。夏が近づいている。
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