詐欺師

「お、仁王珍しいじゃん、グミなんて。一粒よこせ」
俺が反応を示す前にもう手を伸ばす赤毛の食いしん坊。
「これはだめじゃ、やらん」
触れられる前に回収できて良かったと思った。

そう思う自分が不思議だ、手元にはコンビニのグミ。
普段からグミなど自分では買わん。手に馴染まない紫色のパッケージ。なぜか開けられる気がしない。

「ケチだな〜。まぁいいやジャッカルのとこ行こうぜ、なんか持ってるだろ」と笑う丸井。
「…プリ」グミをカバンにしまい立ち上がる。

丸井と連れ立ち廊下を歩いても、友人と会話していても、心のどこかで昨日の出来事を反芻し、グミの事を思い出す。談笑の中気もそぞろな俺を今更気にする奴も居ない。そういった意味では俺もひとりなのかもしれない。

そんな事ばかり考えながら迎えた小テストは散々だった。
普段は適当に解き、一問だけ意識的に間違える事にしているが、今日は集中力が無く15問解き切ることすらできなかった。問題を読んでいる様でずっとリフレインする記憶をぼんやり眺めるうちに時間がなくなっていた。

ぐだぐだの解答用紙を前に送り、一息つく。
カバンの中の紫のパウチが目に入る、その時前の席から「え。」と小さな声が聞こえた気がした。
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