詐欺師

黄色い本を返し、あれから話しかけられる事もなく。なんなら目も合わない日々に馴染みいつからかニキビも目立たなくなった。

珍しく放課後に予定が詰まり、校舎を出るのが遅れた。最終下校を告げる放送が背後で聞こえる。

電車の時間を確認しつつ足早に校門を抜ける、
夕焼けの中、自販機の前には数人の人影。
こんな時間に出会うのは、知り合いでも嫌だし、知らない人でも怖いので顔を伏せ、速度を早める。

「お、お疲れぃ。お前も駅?一緒に帰ろうぜ」
弾かれるように顔を上げるとクラスメイトが手を挙げている。後ろを振り返り誰もいないことを確認してしまうのは日陰者の癖だなと思った。
「…え、いやだいじょぶ、です。」

絞り出した声に「なんで敬語」と笑う赤毛。
見たことない男子が「誰すか?クラスの人すか?」と私を一瞥した。その視線に目つき悪いな…と思ってしまう。
「そー俺らのクラスの人、俺らも駅だし。なあ仁王」
癖毛の彼は後輩なんだ。と理解する前に
「……ピヨ」
いつのまにか背後にいた白髪にリュックを持ち上げられる。距離が近くて、心臓を握られたみたいに痛い。

「や、あの…」
「はいはい帰るぞー!」赤毛の彼が缶のゴミを捨てると駅に向かって歩き出した。
癖毛の後輩くんは微妙な顔でチラリとこちらを見て、首を傾げていたが、その視線が私に向いていたのか、背後の白髪に向いていたのかはわからなかった。

そのまま歩き出そうとする背後の彼に
「ちょ、…離して…。」と抵抗する。
ぱっ。と手を開きリュックは離してくれたが、その場に立ち止まり私が前に進むのを待つ。

今更走り抜けるのも感じ悪いし、そもそも足はそんなに速くない。変な感じになるくらいならこのまま男子と駅まで向かうという不思議なイベントをこなす方がマシか。と一歩踏み出す。
ローファーが小石を踏んでジャリ…となる音が大きく聞こえた。
なぜが、歩幅を合わせて真横を歩く白髪。

何を言えばいいか、どうすればいいか考えてもわからなかった。
ぐんぐん離れていく前方では丸井と後輩くんが談笑していた。
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