詐欺師

連日の雨のせいか、集中力が続かない。
本がうまく読めないストレスからかニキビができた。
初めてニキビパッチを貼ってみた。
パッチを貼ることで逆に目立っている気がする。
どうするのが自然かもうわからなくなっていた。

本はとっくに読み終わっているのに図書室へ足が向かない。カバンの中でチカチカと目を奪う黄色の背表紙。
気を紛らす為に持ってきた自前の文庫本は枕に丁度いい。

本が読めないとすることが無い。友達がいないから寝るしか無い。しかし謎の焦燥感で寝られもしない。
ニキビよりパッチが気になって顔も上げられない。

なんとか日常をやり過ごし、玄関へ向かう人の流れに逆らって図書室へ向かい歩く。
(この本を返して、頼んでいた新刊を借りて帰る)
と繰り返し呟き逃げたくなる気持ちを踏み潰す。
(この本を返して、頼んでいた新刊を借りて帰る)
すぐこなせるように黄色い本を抱える。
(この本を返して、頼んでいた新刊を借りて帰る)

(この本を、返して、、、
人の少なくなった廊下で一番会いたくない黄色いジャージと目が合う。

(この本を、かえして、、
ニキビパッチに気づかれたくなくて俯き速度を上げる。

(このほんを、かえし
「……その色、目立つな。……遠くからでも、すぐ分かったぜよ」

目頭が熱くなる。恥ずかしくて死にそうだ。
返事もできずにその場から走り去る。

司書さんが「あなた持ち物が黒いから、黄色が目立つね」と笑いながら返却手続きをしてくれて、白髪の彼が
本の色の事を言っていたと気づいた。
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