詐欺師
思えばずっと変だった。
思い返せば一年の頃には始まっていたのかもしれない。
入学したての頃、部活のチームメイトである仁王がテニスコートから見える図書室を指さして「あれ誰じゃ、丸井知っとるか?」と声をかけてきた。
目を凝らし指先を追う。
「ん?ああ、同じクラスのやつだよ。何、ああいうのタイプ?」話広げてやろうと聞いた質問には答えてくれなかったが、不思議と満足そうな仁王の横顔を覚えている。
ある日、チームメイトと集まる予定に仁王も誘おうと近づく、珍しくお菓子のパッケージを持っている事に気づいた俺は違和感よりも先に食い気が勝った。
「お、仁王珍しいじゃん、グミなんて。一粒よこせ」
当たり前のようにもらえると思って手を出す。
「これはだめじゃ、やらん」
断られた上に触ることすら許されなかった。
お前グミ食わねぇじゃん。と思ったが声には出さなかった。
「ケチだな〜。まぁいいやジャッカルのとこ行こうぜ、なんか持ってるだろ」と違和感ごと雰囲気を押し流すことで場を保つ。
「…プリ」いつものように謎の返事が返ってきたがグミは未開封のままカバンにしまわれていった。
もともと友人やチームメイトの輪にいてもどっか別の何かを考えているような奴ではあった。が、今日は一段とひどい。隠してるつもりだろうが急にニヤリと笑ってみたり、と思えば悲しい顔をしてみたり。
なにを百面相してるのかと思ったが、他の奴らは気にしていなかった。それくらい些細な表情の変化なんだろう。しかし、グミの違和感は些細な変化を強調するだけだった。
その日の部活もひどかった。
柳はいつもの事としても、優しい柳生にすら小言を言われるようなミスを連発。それをみて赤也が笑う。
赤也もろとも怒鳴られる仁王。
ジャッカルが「なあ、あいつどうしたんだよ…」と聞いてくるくらいにはぐだぐだだった。
「知らねー…」そう答えるしかない。情報が少なすぎる。
そんな部活終わり。
「おら、丸井。欲しがっとったろ、やるぜよ」
「赤也、お前も食え」
昼間のグミが未開封のまま投げつけられる。
は?あんなに必死だったくせに?と顔には出た気がする。
「…おつかれさん」と部室を出る仁王の背中を、捕まえるべきか悩んでいるうちに姿を見失う。
「丸井先輩食べないんすか?全部食べちゃいますよ〜」
何も知らない呑気な後輩がグミを食べながら笑っている。
「…食うに決まってるだろい。」
違和感だけが増えてゆき、核心に触れるべきかもわからないまま、口に入れたブドウ味が妙に嘘くさかった。
思い返せば一年の頃には始まっていたのかもしれない。
入学したての頃、部活のチームメイトである仁王がテニスコートから見える図書室を指さして「あれ誰じゃ、丸井知っとるか?」と声をかけてきた。
目を凝らし指先を追う。
「ん?ああ、同じクラスのやつだよ。何、ああいうのタイプ?」話広げてやろうと聞いた質問には答えてくれなかったが、不思議と満足そうな仁王の横顔を覚えている。
ある日、チームメイトと集まる予定に仁王も誘おうと近づく、珍しくお菓子のパッケージを持っている事に気づいた俺は違和感よりも先に食い気が勝った。
「お、仁王珍しいじゃん、グミなんて。一粒よこせ」
当たり前のようにもらえると思って手を出す。
「これはだめじゃ、やらん」
断られた上に触ることすら許されなかった。
お前グミ食わねぇじゃん。と思ったが声には出さなかった。
「ケチだな〜。まぁいいやジャッカルのとこ行こうぜ、なんか持ってるだろ」と違和感ごと雰囲気を押し流すことで場を保つ。
「…プリ」いつものように謎の返事が返ってきたがグミは未開封のままカバンにしまわれていった。
もともと友人やチームメイトの輪にいてもどっか別の何かを考えているような奴ではあった。が、今日は一段とひどい。隠してるつもりだろうが急にニヤリと笑ってみたり、と思えば悲しい顔をしてみたり。
なにを百面相してるのかと思ったが、他の奴らは気にしていなかった。それくらい些細な表情の変化なんだろう。しかし、グミの違和感は些細な変化を強調するだけだった。
その日の部活もひどかった。
柳はいつもの事としても、優しい柳生にすら小言を言われるようなミスを連発。それをみて赤也が笑う。
赤也もろとも怒鳴られる仁王。
ジャッカルが「なあ、あいつどうしたんだよ…」と聞いてくるくらいにはぐだぐだだった。
「知らねー…」そう答えるしかない。情報が少なすぎる。
そんな部活終わり。
「おら、丸井。欲しがっとったろ、やるぜよ」
「赤也、お前も食え」
昼間のグミが未開封のまま投げつけられる。
は?あんなに必死だったくせに?と顔には出た気がする。
「…おつかれさん」と部室を出る仁王の背中を、捕まえるべきか悩んでいるうちに姿を見失う。
「丸井先輩食べないんすか?全部食べちゃいますよ〜」
何も知らない呑気な後輩がグミを食べながら笑っている。
「…食うに決まってるだろい。」
違和感だけが増えてゆき、核心に触れるべきかもわからないまま、口に入れたブドウ味が妙に嘘くさかった。