詐欺師

朝はそれなりに晴れていた空はだんだんと雲が厚くなり、遠くで雷が鳴っていた。
そういえば午後から雨が降ると誰かが言っていた気がする。

雨が降っても部活はあるんだろうなと他人事の様に思った。
事実なんの連絡もないあたり、室内練習か自主練という名の筋トレがあるだろう。

(…めんどくさいな。)
適当にサボる口実を考えつつ昼休みの騒がしい教室の隅で襟足の毛に触れる。
白く脱色し続けたおかげで潤いなどなく、無機質に近い何かの様に感じた。

チャイムがなり、丸井を含めたクラスメイト数人が教室に流れ込んでくる。
目があった丸井に「仁王!雨だから室内練だって柳に言われたぜ」と伝えられ、「…プピーナ」と適当な返事をしつつ本気でサボる口実を考えなければと思った。

午後の授業に向け自席に座って教科書とノートを出す。
ふと目線を上げると、図書室から戻ってきたであろう黒髪の女子が同じ様に机の上を整えている。

そんな前の席の女子を俺は少し気にしている。
好意というほどでもなく、興味が近いような、
しかし踏み込んだら後戻りできない様なそんな予感のある女子だった。

友達が少なそう。あまり誰かと喋っているところを見ない。
口数が少なそう。そもそも笑っているところを見たことがない。
そういうところが、自分に近い様な気がして目につくのだ。似た雰囲気への共感なのか、孤高の存在への興味なのか。それはまだわからなかった。

そんな思いを薄らと抱えながら、彼女の後ろ姿を見るともなく見ている。

(ツヤツヤしとる。)
俺は、彼女の何にも染まらない黒髪が羨ましかった。

何者かになりたくて脱色した髪の毛が水分を失いパラパラと首筋に触れていた。
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