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crsm

[依央利と思考実験の話2]


以前、依央利にトロッコ問題の話題を振ったら、

「君はそのトロッコをどうしたいの?代わりに僕が全部やってあげるよ!」

と言われるだろうという考察をしていたのですが、
最近は、依央利がトロッコ問題もとい思考実験の“核心”を、
突いてくるんじゃないかと思いはじめています。

依央利に「暴走したトロッコの線路に5人死ぬ道と1人死ぬ道がある。どっちを選ぶ?」
的なことを尋ねたら、

「有名な思考実験の話だね。哲学者フィリッパ・フットが提示したやつでしょ」
とか話し出す。
依央利は頭がいいから哲学とか論理とかの話題にも詳しそうなので、
めっちゃ解説してくれるかもしれない。

「ここでポイントになるのは、命の数や倫理よりも自分の手でスイッチを切り替えるかどうかって部分だよ。
多くの人は、“積極的に誰かを犠牲にした”っていう事実そのものを、本能的に怖がる。
人間は、罪悪感から逃げたい生き物だから」

自分の価値観じゃなくて“社会”とか“人間の傾向”の話に切り替えてくる。
自分の空虚を隠すために、理屈で周りを埋めてそれっぽく振舞う依央利。

「多くの人は『最悪の結果』よりも『自分が加害者になる感覚』を避けようとするものだよ」

依央利の雑学も聞いていたいと思うけど、
依央利がどうするか・依央利がどう思うかを知りたいんだよなーという顔をしてたら、
依央利がそれに気づいてにっこり笑う。

「僕は空っぽだから罪悪感を背負うのは平気だよ。
誰かのために汚れ役だって買えるし。
でも、僕自身の正義のためには引かないかな。僕は倫理で動かない。数でもない。
君がどうしたいかで決める。
……言ったでしょ。
僕は誰かの命令じゃなきゃ動けないって」

空虚な瞳の中に、少しだけ困惑の色をのせて、
依央利はやっぱり、自分じゃなくて他人本位で動くと言っていた。
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