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TOUKENRANBU

[22XX年X月XX日の追憶]
※『昨日公園』オマージュ


その本丸の初期刀である加州清光は、本丸の主と夫婦であった。二人の子にも恵まれ、平穏な日々を送っていた。

ある日、主が「たまには両親に顔を見せておかないとね」と微笑み、審神者の故郷である現世へ帰ることになった。護衛を兼ねた3日間の滞在だった。現世では、主が自ら手料理を振る舞いたいと張り切り、清光とともに買い出しに出かけた。夕暮れの街並みの中、ふたつの影が並んで歩いていると、主が「あっ」と声を上げた。目線の先には、主が幼い頃によく遊んだという公園が見えた。

「寄っていく?」清光が問いかけると、「夕飯までまだ時間あるもんね」と、いたずらっ子のような笑みを浮かべて主が応える。その笑顔に背中を押され、二人は公園へと足を運んだ。

清光は主の故郷に何度か訪れたことがあったが、この公園には初めて来た。そう呟くと、主は「大人になると、公園に行く用事なんてなくなるもんね」と、どこか懐かしげに笑った。清光が「小さい頃はここで何してたの?」と尋ねると、主は目を輝かせながら、幼い頃の思い出を語り始めた。

その時、本丸から通信が入った。不在中の部隊編成についての相談だった。清光は「少し込み入った話になるから、先に帰ってて」と主を気遣い、公園に残ることにした。

だが、その少しの別れが悲劇の始まりだった。

遅れて帰った清光を迎えたのは、顔面蒼白の義両親の姿だった。「あの子が突然倒れて……亡くなった」と震える声で告げられる。
ぴょこんと現れたこんのすけが「完全に形跡を辿れたわけではないが、時間遡行軍の仕業だろう」と毛を奮い立てながら伝えた。
そんなはずがない、そんなことはあってはならない。錯乱しながら、こんのすけの案内で主が襲われた場所へ向かう。天候は一振りと一匹の心情を表すかのように激しい夕立に見舞われていた。束の間、やけに明るい道があり、何故かそこに向かえと本能が叫んでいる。なりふり構わず進めば、そこは数刻前まで主と共にいた公園だった。戸惑いながらその中へと足を踏み入れて行くと、降っていたはずの雨がやみ、そこには死んだはずの主がいた。

つい今しがたまで己の肩に乗っていたこんのすけが消えている。
まるで時間が戻っているかのように、すべての景色が数刻前と同じだった。
混乱する頭で「主、生きてるの?」と聞けば「まるで私が死んだことあるみたいな……」と苦笑いする。
「というか、突然だね。さっきまで昔この公園でなにして遊んでたかって話をしてたのに、急にいなくなったと思えば、生存確認してくるなんて」
もしかして、数時間前に時が遡っているのだろうか。この場合、主を助ければ己は時間遡行軍になってしまうのだろうか。でも、それでも。
かかってきた本丸からの電話に、やはり過去に遡ってしまったのだと確認する。
「主、ちょっと電話に出るけど、この公園で待ってて。まだ帰らないで」

果たして、清光は主と無事に家に帰ることができた。
刀剣男士としてこれでいいのか、これは歴史修正になっているのではないか、と不安になり、ふわふわとうたた寝をしていたらしいこんのすけを呼び出し、例えばの話なんだけど……とお決まりの台詞を挟みつつ、先ほどまでの体験を話していた。
「はぐぅ、時間遡行軍が関与しているのであれば、むしろ加州清光様の方が正史を守ったということになるのではないでしょうか」

そうであればむしろ加州様は英雄ですよ!主さまにお伝えしなくては、と軽い足取りで主のもとへ向かおうとするこんのすけについていこうと立ち上がれば、台所から爆発音が聞こえた。
何事かと慌てて向かえば、台所が燃え盛っていたのだった。傍にいた下の娘を避難させ、母と姉はどうしたと聞けば、母と姉が共に台所で料理をしていたら突然爆発したのだという。ぎゃんぎゃんと泣き叫ぶ我が子を義両親に預け、慌てて消火活動をするも、真っ黒こげになった母子が息絶えていた。
また、時間遡行軍の仕業かもしれない。なぜだか、あの公園は時空装置の役割を担っているみたいだ。清光はそんな憶測を頼りに再び公園を訪れ、そうして、最愛の主と出会った。
そして、台所に立つ妻と娘をサポートするという名目で台所に張り付き、ガス栓が漏れていたのを確認したらすぐにガス漏れしないよう元栓を閉めて事なきを得る。

だが、それからまもなく、風呂場に入っていた強盗に刃物で刺され、そして娘二人も一緒に刺殺されたことを知り、ショックを受ける。その後も、強盗に襲われるのを防いでも、家が突如崩壊し妻娘だけでなく義両親まで死亡するなど、むしろ一緒に亡くなってしまう人が増える結果となったことに愕然とする。
こんのすけに解決方法を乞うも、時間遡行軍が関与していないから被害が拡大しているのかもしれない、と項垂れたように小さく返された。
最初から、主さまは帰宅途中に亡くなる運命なのかもしれない、と。

失意の中、公園へ向かい清光は主に「もし、あんたの大事な人が死んでしまうと知ったら、どうする?」と問う。
清光の思いつめた様子に、一瞬戸惑いつつも「助けるよ」と笑って答える主。
「もし、家族も大変な目に遭うとしたら?」と重ねて訊く清光に、主は「家族も助けるよ」と即答する。「うん、そうだね……そう言うと思ってた」と清光は涙を流す。
そうして、本丸からかかってきた電話を取る仕草をし、主に先に帰るよう伝え、そっと後を追った。

主に先に帰るよう促した清光は、その後をそっと追った。そして、主が運命の階段で転び、命を落とす瞬間を見届けた。

数年後、主の周忌を終えた清光は、その帰り公園へやってきた。ここが昔、母がよく遊んでいた公園らしいよ、と娘達に母の話を語り継ぐ。友達と一緒にシャボン玉の大きさを競ったり、靴を飛ばしてすべり台に乗せる遊びをしてたんだって、と話していると、上の娘の様子がおかしいことに気づく。
泣きはらし、思いつめた娘に声をかけると、少女は嗚咽を漏らしながら問いかけてきた。


「もし、大切な人が死んでしまうとして、それが先にわかっていたら……父さんならどうする?」
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