夕食にはまだ日が高い気もするが、ジョナサンの言う通り三人はホテルの一階にあるレストランに入った。

「バンフィールド博士」
「ジョナサンで良い」
「ジョナサン博士。よろしければ私の人参、差し上げましょうか？」

##NAME1##の隣で彼は静かに戦っていた。メインディッシュの添え物の内、人参だけが皿の端へ丁寧に寄せられている。

「……何故そんなことを言うんだ」
「だって、人参だけ綺麗に残してらっしゃるじゃないですか」
「何だと？好きなものだから最後にとっておいているように見えたとでも言うのか？」

正にその通りだが、何か琴線に触れてしまったらしい。

「まさか、この姿から俺は人参が好きだなんて安直に想像した、なんてことはないだろうな」
「え？」

兎といえば人参。人参といえば兎。他の野菜も食べるし実はそこまで好物とも限らないのだが、このオレンジ色の野菜がやはり一番イメージし易い。

しかし彼はその発想が気に入らないようだ。

「失礼しました、博士」
「謝るってことは、想像したんだな」
「まあ…はい…」

##NAME1##は渋々肯定する。そうでもしないと、いつまで経ってもこの話題を終わりにしてくれなさそうだからだ。

自分から念を押すような言い方をしておいて、ジョナサンはナイフとフォークをぎゅっと握り締めて俯き、そのまま押し黙ってしまった。

「……」
「……」

まだ詳しい事情は知らないが、彼は好んでこんな姿になった訳ではない。特殊な呪いのせいで周りから馬鹿にされたり疑われたり、きっと嫌な思いをしてきたのだろう。たとえ周囲の人間に悪気は無くとも、今みたいに人参を押し付けられたことだってあるのかもしれない。

「ごめんなさい…私、出過ぎたことを」
「##NAME1##ちゃんは謝らなくて良いよ。ジョナサン、好き嫌いしちゃダメっていつも言ってるだろ」

向かいの席に戻ってきたジャックに叱られ、大きな兎は眉間に皺を寄せる。

「あ…好き嫌い？」
「……」
「…そう……お嫌いでしたか…」
「……」