「それで、##NAME1##と言ったな」
「はい」
「早速だが##NAME1##、格闘術は？」
「格闘術？」

思わず聞き返してしまった。ジャックから事前に伝えられていた話には格闘のかの字すら登場しなかったのだが、この兎は必須条件の如く質問してきた。

「いえ…」
「じゃあ得意な武器は？」
「ぶ、武器！？」
「銃でもナイフでも、何かあるだろ？」
「あるだろって、何も無いですよ！」
「ええ？」

ジョナサンは困り果てたような顔をして腕を組み、今度は彼女をスカウトした相棒に尋ねる。

「…大丈夫なのか？」
「何が？」
「危険が伴うかもしれないっていうのに、女の子にこんなこと頼んで良いのか？」
「ジョナサン、さっき説明しただろ？今回のミッションは極めて安全だし、力仕事でもない」
「可能性の話だ」

##NAME1##が混乱している内に、彼女を置いてどんどん話が進む。

「あの、ジャックくん、どういうこと？私戦いに来たの…！？」
「そんな訳無いよ！##NAME1##ちゃんもジョナサンの言葉を真に受けないで」

二人に対し呆れ返ったジャックが大きくため息を吐く。

しかし、それをいとも簡単に打ち消す程の音が彼の腹から部屋中へ鳴り響いた。

「なんだ～？ジャック、もう腹ペコか？意地汚いぞ」
「そう、重労働のせいでね。どこかの誰かさんが今日に限って念入りにブラッシングしたりするからさ。放っておいたら折角のお客さんにもこのホテルにも申し訳が立たないよ」

使い切って芯だけになったコロコロクリーナーを手に取り、ジャックは見せつけるようにそれを手で空回りさせ始める。誰かさんは##NAME1##の顔と掃除用具を交互に何度か見た後、自分の胸ポケットから立派な懐中時計を慌てて取り出してその金色の蓋を開けた。

「ややっ、もうこんな時間だ！##NAME1##には後でちゃんと説明するとして、まずは腹ごしらえといこうじゃないか！」
「はいはい」
「だからそんな物は早く仕舞うんだ！」