ステージ2 スチュワートホテル
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「まっ…はか、せ……待って、ください…!」
ジョナサンと##NAME1##はカイエワン遺跡、ではなく、スチュワートホテル内のとある階段を駆け昇っていた。
「頑張れ##NAME1##!」
「エレベーター、はっ、無いんですかっ…?」
アンドレ達と居た最上階までは豪華なエレベーターを使ったが、今二人が居る場所にそんな文明の利器は無い。
「こっち側は階段でしか行けなくなってんだよ。それに、残ってても絶対乗っちゃダメだ」
なんと見つける前から楽を禁止されてしまった。挙げ句、食後の運動の提案者は連れを置いてぴょんぴょん先へ行ってしまう。##NAME1##はエジプトに来たことを今になって後悔しかけていた。
「さあ、もうすぐだぞ!」
「もうすぐって、何が…」
最後の段差をようやく乗り越えると、数分前まで居た部屋から見えるものとはまた違う景色が##NAME1##を出迎えてくれた。
「わあっ、凄い…!」
昼間車で通ってきた街は、この時間帯になると煌びやかな黄金色に染まっている。目線を少し下にやると、一際輝く大きな橋がナイル川の水面を淡く照らし上げ、より幻想的な世界を創り出していた。
「カイロの夜景が一望できるこのとっておきのテラスを、どうしても##NAME1##に教えたかったんだ。ただ、来るまでがちょっと不便だな」
ちょっとどころではない。まだ息は整っていないし、明日は遺跡調査を控えているというのに筋肉痛を覚悟しなければならないだろう。が、目の前に広がる光景はそれら全てを吹き飛ばしてくれたような気がした。
「気分転換になったか?」
ジョナサンは隣に立ち、素がコミカルながらもやや真面目な顔つきで##NAME1##に尋ねる。
「いくらスイートルームでも、一歩も外に出られないのはつまらないだろ?」
「……ええ」
元気の無い返事をした後、彼女は肩を落としフェンスから身を乗り出さなくなった。
念のため、##NAME1##は外出どころか部屋から一切出ないようジャックからきつく言いつけられてた。それを押し切り、ジョナサンは外の空気を吸いにここへ連れ出してくれたのだ。
「……」
「悪かったな。簡単で安全な手伝いの筈が、こんなことになって」
「いえ…」
「…ジャックが言ってたんだ。もし今すぐ俺達が宝を諦めても、例の集団にマークされていることには何ら変わりない。だったら、長期戦になる前に行動を起こして決着をつけた方が良いって」
「決着…」
「こっちの六人に対して奴らは大勢居るからな、長引くとあっちが有利になるんだと」
物騒な話題に、##NAME1##の表情はどんどん沈んでいく。
「ま、まあ、##NAME1##とペアで動くマホーン博士なら何人来ようと楽々返り討ちにしちゃうさ。彼だけじゃなく、じいさんもあれでなかなか強いんだぞ?遺跡の中には俺やアンドレも居る。だからさ、そんなに心配しなくて良い。明日はきっとなんとかなる」
「はい…」
彼なりの精一杯の励ましも虚しく、彼女の顔は依然暗いままだ。これでは反対されながらも連れ出してきた意味が無い。
「そうだ。これ持っててくれ」
そう言って、ジョナサンは自分の首から下げていた何かを外そうとした。
「あ、引っかかってますよ。帽子に…」
「ぐっ…!」
「ああっ、今度は左耳に…」
「なっ…くそっ…!」
渡したい相手本人に手伝わせ、やっとのことで外したそれを彼は改まって差し出した。
「ええと…博士、これは?」
「車掌の笛だよ。昔、アスワンハイダムにある廃駅を調査していた時に……拾った物だ。ずっと持ってたんだけど、##NAME1##にやるよ」
「良いんですか?そんな大事そうな物を」
「ああ。もし遺跡の中ではぐれて困った時は、これを鳴らしてくれ。すぐに駆けつけてやる」
非常にクールなことを言えたと思っているのか、このおっさんは大分満足げな顔をしている。
「あれ?でも##NAME1##はマホーン博士と組んでるんだから、俺よりあいつが先に駆けつけちゃうか…むむ…」
しかしいまいち格好がつかず、兎の表情は二転三転。真剣にしかめる顔も愛らしい小動物そのものだ。自然と笑みがこぼれる。
「フフ、博士だって心強いです」
「本当か!?」
「ええ。頼りにして、ます…よ…」
彼はこれをお守りとして肌身離さず身につけていたのだろうか、手に持っただけで早くも獣臭が鼻を突いてきた。ありがた迷惑であった。
「安心しろ、ちゃんと洗ってある。そうだ!忘れない内に首から下げておけ」
「え!?」
「後ろを向け。今度は俺が手伝ってやるから、ほら」
「いっ、や、後で!後で付けます!」
「そうか?…まあ良い。俺からのささやかなプレゼントだ。夜景には劣るけどな」
ジョナサンは毛でフサフサな鼻の下を、これまたフサフサな指で何度かこすった。
「ありがとうございます。ここまで昇ってきた甲斐がありました」
この笛も夜景も、自分を元気付けるためにわざわざ考えてくれたと思うと、目の前の男性が外見抜きに可愛く思えてきた。
笑顔が戻った##NAME1##に一安心し、ジョナサンはフェンスに手を突き再び外へ目を向ける。
「俺が初めてこのホテルに来た時は、階段すら無かったんだぞ」
「階段すら無い時に、この場所を見つけたんですか?」
「あー、ええと……改装工事していた頃にちょいとお邪魔してな。と、飛んだり、跳ねたりしてた」
「何かお仕事ですか?」
「まあ、宝探しに」
「高級ホテルの中に?」
「そうだ」
詰まりながらも無理矢理言い切ったジョナサンに、##NAME1##は黙って目を細めた。
「……泥棒じゃ」
「ないぞ!決して!」
「冗談ですよ。こんなに素敵な穴場、教えていただけて嬉しいです」
今度は別の意味、本心から目を細めた。決して器用とは言えない、むしろ所々雑な部分が垣間見える男性だが、真っ直ぐで裏表のない性格に安心感のような感情を覚えたから。
そんな彼女を、今度はジョナサン・バンフィールドがじっと見つめ返す。
「……」
「…博士?」
「えっと……あっちの方、もっとよく見えるぞ」
ジョナサンは反対側からの眺めを薦め、彼女が離れていったことを確認すると背を向けて屈み通信機のスイッチを入れた。
「おいジャック!」
極めて小声で、しかしその声はひどく焦っている。
『何だい?##NAME1##ちゃんは無事だろうね?』
「それは問題無いんだが…“夜景も綺麗だけど、君の方がずっと綺麗だよ”って言える流れにしたいんだ、どうすれば良い!?」
『えー?普通に言えば?』
「その普通にってのが分かれば呼び出したりしてない!」
『そんなの自分で考えてよ』
ジャックは困り果てた相棒を至極面倒臭そうにあしらった。
『あんまり遅くならないようにね、じゃ』
「お、おいっ、待て!俺を見捨てるな!」
「博士…?」
何故かなかなか反対側に来ようとしないジョナサン。不審に思い振り向くと、夢中になっていた夜景とはまた別の素晴らしい光景に目をとられる。
こちらに背を向け、何やらこそこそしている兎。彼の傍にあるオブジェから発せられる淡い水色の光と月明かりに照らされ、服に隠されていない耳と後頭部が艶々と輝いているではないか。離れていても見てとれる、つい触りたくなるような質感に、##NAME1##は目を見張り自然と口を開いていた。
「…この夜景も綺麗ですけれど」
「ん?」
「博士の毛並みも、とっても綺麗ですね」
「さ、先に言われただと…!?」
「?」
ジョナサンと##NAME1##はカイエワン遺跡、ではなく、スチュワートホテル内のとある階段を駆け昇っていた。
「頑張れ##NAME1##!」
「エレベーター、はっ、無いんですかっ…?」
アンドレ達と居た最上階までは豪華なエレベーターを使ったが、今二人が居る場所にそんな文明の利器は無い。
「こっち側は階段でしか行けなくなってんだよ。それに、残ってても絶対乗っちゃダメだ」
なんと見つける前から楽を禁止されてしまった。挙げ句、食後の運動の提案者は連れを置いてぴょんぴょん先へ行ってしまう。##NAME1##はエジプトに来たことを今になって後悔しかけていた。
「さあ、もうすぐだぞ!」
「もうすぐって、何が…」
最後の段差をようやく乗り越えると、数分前まで居た部屋から見えるものとはまた違う景色が##NAME1##を出迎えてくれた。
「わあっ、凄い…!」
昼間車で通ってきた街は、この時間帯になると煌びやかな黄金色に染まっている。目線を少し下にやると、一際輝く大きな橋がナイル川の水面を淡く照らし上げ、より幻想的な世界を創り出していた。
「カイロの夜景が一望できるこのとっておきのテラスを、どうしても##NAME1##に教えたかったんだ。ただ、来るまでがちょっと不便だな」
ちょっとどころではない。まだ息は整っていないし、明日は遺跡調査を控えているというのに筋肉痛を覚悟しなければならないだろう。が、目の前に広がる光景はそれら全てを吹き飛ばしてくれたような気がした。
「気分転換になったか?」
ジョナサンは隣に立ち、素がコミカルながらもやや真面目な顔つきで##NAME1##に尋ねる。
「いくらスイートルームでも、一歩も外に出られないのはつまらないだろ?」
「……ええ」
元気の無い返事をした後、彼女は肩を落としフェンスから身を乗り出さなくなった。
念のため、##NAME1##は外出どころか部屋から一切出ないようジャックからきつく言いつけられてた。それを押し切り、ジョナサンは外の空気を吸いにここへ連れ出してくれたのだ。
「……」
「悪かったな。簡単で安全な手伝いの筈が、こんなことになって」
「いえ…」
「…ジャックが言ってたんだ。もし今すぐ俺達が宝を諦めても、例の集団にマークされていることには何ら変わりない。だったら、長期戦になる前に行動を起こして決着をつけた方が良いって」
「決着…」
「こっちの六人に対して奴らは大勢居るからな、長引くとあっちが有利になるんだと」
物騒な話題に、##NAME1##の表情はどんどん沈んでいく。
「ま、まあ、##NAME1##とペアで動くマホーン博士なら何人来ようと楽々返り討ちにしちゃうさ。彼だけじゃなく、じいさんもあれでなかなか強いんだぞ?遺跡の中には俺やアンドレも居る。だからさ、そんなに心配しなくて良い。明日はきっとなんとかなる」
「はい…」
彼なりの精一杯の励ましも虚しく、彼女の顔は依然暗いままだ。これでは反対されながらも連れ出してきた意味が無い。
「そうだ。これ持っててくれ」
そう言って、ジョナサンは自分の首から下げていた何かを外そうとした。
「あ、引っかかってますよ。帽子に…」
「ぐっ…!」
「ああっ、今度は左耳に…」
「なっ…くそっ…!」
渡したい相手本人に手伝わせ、やっとのことで外したそれを彼は改まって差し出した。
「ええと…博士、これは?」
「車掌の笛だよ。昔、アスワンハイダムにある廃駅を調査していた時に……拾った物だ。ずっと持ってたんだけど、##NAME1##にやるよ」
「良いんですか?そんな大事そうな物を」
「ああ。もし遺跡の中ではぐれて困った時は、これを鳴らしてくれ。すぐに駆けつけてやる」
非常にクールなことを言えたと思っているのか、このおっさんは大分満足げな顔をしている。
「あれ?でも##NAME1##はマホーン博士と組んでるんだから、俺よりあいつが先に駆けつけちゃうか…むむ…」
しかしいまいち格好がつかず、兎の表情は二転三転。真剣にしかめる顔も愛らしい小動物そのものだ。自然と笑みがこぼれる。
「フフ、博士だって心強いです」
「本当か!?」
「ええ。頼りにして、ます…よ…」
彼はこれをお守りとして肌身離さず身につけていたのだろうか、手に持っただけで早くも獣臭が鼻を突いてきた。ありがた迷惑であった。
「安心しろ、ちゃんと洗ってある。そうだ!忘れない内に首から下げておけ」
「え!?」
「後ろを向け。今度は俺が手伝ってやるから、ほら」
「いっ、や、後で!後で付けます!」
「そうか?…まあ良い。俺からのささやかなプレゼントだ。夜景には劣るけどな」
ジョナサンは毛でフサフサな鼻の下を、これまたフサフサな指で何度かこすった。
「ありがとうございます。ここまで昇ってきた甲斐がありました」
この笛も夜景も、自分を元気付けるためにわざわざ考えてくれたと思うと、目の前の男性が外見抜きに可愛く思えてきた。
笑顔が戻った##NAME1##に一安心し、ジョナサンはフェンスに手を突き再び外へ目を向ける。
「俺が初めてこのホテルに来た時は、階段すら無かったんだぞ」
「階段すら無い時に、この場所を見つけたんですか?」
「あー、ええと……改装工事していた頃にちょいとお邪魔してな。と、飛んだり、跳ねたりしてた」
「何かお仕事ですか?」
「まあ、宝探しに」
「高級ホテルの中に?」
「そうだ」
詰まりながらも無理矢理言い切ったジョナサンに、##NAME1##は黙って目を細めた。
「……泥棒じゃ」
「ないぞ!決して!」
「冗談ですよ。こんなに素敵な穴場、教えていただけて嬉しいです」
今度は別の意味、本心から目を細めた。決して器用とは言えない、むしろ所々雑な部分が垣間見える男性だが、真っ直ぐで裏表のない性格に安心感のような感情を覚えたから。
そんな彼女を、今度はジョナサン・バンフィールドがじっと見つめ返す。
「……」
「…博士?」
「えっと……あっちの方、もっとよく見えるぞ」
ジョナサンは反対側からの眺めを薦め、彼女が離れていったことを確認すると背を向けて屈み通信機のスイッチを入れた。
「おいジャック!」
極めて小声で、しかしその声はひどく焦っている。
『何だい?##NAME1##ちゃんは無事だろうね?』
「それは問題無いんだが…“夜景も綺麗だけど、君の方がずっと綺麗だよ”って言える流れにしたいんだ、どうすれば良い!?」
『えー?普通に言えば?』
「その普通にってのが分かれば呼び出したりしてない!」
『そんなの自分で考えてよ』
ジャックは困り果てた相棒を至極面倒臭そうにあしらった。
『あんまり遅くならないようにね、じゃ』
「お、おいっ、待て!俺を見捨てるな!」
「博士…?」
何故かなかなか反対側に来ようとしないジョナサン。不審に思い振り向くと、夢中になっていた夜景とはまた別の素晴らしい光景に目をとられる。
こちらに背を向け、何やらこそこそしている兎。彼の傍にあるオブジェから発せられる淡い水色の光と月明かりに照らされ、服に隠されていない耳と後頭部が艶々と輝いているではないか。離れていても見てとれる、つい触りたくなるような質感に、##NAME1##は目を見張り自然と口を開いていた。
「…この夜景も綺麗ですけれど」
「ん?」
「博士の毛並みも、とっても綺麗ですね」
「さ、先に言われただと…!?」
「?」