ステージ2 スチュワートホテル
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「話を戻すが…お主らをこの話に誘わなかったのは、儂ら三人だけで片をつけようと考えていたからじゃ」
「君達を危険なことに巻き込みたくなかったんだ、悪く思わないでくれ」
黒髪の青年が申し訳無さそうに目を伏せ謝罪するが、ジャックはそれを穏やかな態度で否定する。
「僕達の安全を考慮してくれたんですから、謝ることはありませんよ」
「それに水臭いじゃないか。俺は多少スリリングなトレジャーハントでも構わないぞ!」
己の実力に余程自信があるのか、ジョナサンはぺったんこで目立たない鼻をフンッと鳴らしながら言ってのけた。
「ジョナサンは構わなくても、付き合わされる僕の身が持たないよ…今回は##NAME1##ちゃんも居るんだし」
「その点、俺達は大概のことは平気だからな」
「え?」
アンドレ・ベタンクールの隣で黙って突っ立っていた##NAME1##は、彼の一言に当然の疑問を抱きようやく話に混ざる。
「平気って…?」
「こう見えてデントさんは強いし、マホーン博士は不老不死だ」
「こう見えてとはなんじゃ、こう見えてとは。##NAME1##と言ったな、これからよろしく頼むぞい」
「はい、よろしくお願いいたします……ん?」
友人による説明を軽く聞き流してしわしわの手と握手を果たしたが、どうも引っかかる。
「不老不死?」
彼の口から、昔話や架空の物語でしか聞いたことのない単語が飛び出したからだ。一風変わった他己紹介に気付いた##NAME1##に、ジャックはすぐさまマホーンの方へ振り向いた。
「あ…すみません、言わない方が良かったですか?」
「いや。これから私達は協力し合うのだから、情報共有は必要なことだ」
そう言うと何の変哲も無い美青年は##NAME1##の正面まで来て、澄んだエメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐ向けてきた。
「挨拶がまだでしたね。初めまして、私の本名はラニア・ガディシュ。紀元前十五世紀にエジプトを治めていました」
「へえー、紀元前…って……はい?」
促されるままに片手を差し出したが、名前以外の内容が全く理解できない。
「治めてって…でも、フフッ、貴男……え?」
目の前にある真顔も相まって、思わず乾いた笑いが漏れ出してしまう。
しかしこれまでの雰囲気からして、マホーンもといラニア・ガディシュは気軽に冗談をかます男性ではなさそうだ。ジョークではないことを証拠付けるように、ご老人や昨日の恩人だけでなくジャックやジョナサンも彼の頓珍漢な発言を聞いても平然としている。むしろ##NAME1##の反応の方をうかがっている。
「あ、あの、もう離していただけませんか…」
信じられない。どう握っても、彼の手はピチピチでスベスベなのだ。百年を優に超え使われてきたものとは思えない。思えないが、この場で驚いているのは##NAME1##独りだけである。
「ほっ、本当なんですか?今の…」
「はい。事実です」
「じゃあ……不老不死で、王様っ…!?」
「##NAME1##、いい加減手を離してやれ」
とんでもない人物と握手してしまったと混乱する彼女に、ジョナサンに続きアンドレが助言する。
「自己紹介がストレートすぎやしないか?刺激が強すぎるというか…」
「回りくどく言ったところで同じことじゃよ。うさ公やかめ公の存在を受け入れてくれた者なら、これくらいのことで動揺せんじゃろうて。のう?」
「え、ええ、勿論…」
動揺しかしていない。
確かにジョナサンやアンドレとも普通の人間ではない点は共通しているが、最近姿を動物に変えられた者と途方も無い年月を生きてきた偉人とでは、受ける衝撃の種類及び大きさが違う。
話を進めるべく、ジョナサンは生ける伝説を解説し始めた。
「育ての親のセフル一世に死ねない呪いをかけられて、今三千…何歳だっけ?」
「たしか三千六百九…まあ、その位です」
「そ、そうなんですか…」
紀元前から生き続けているのだから妥当な年齢だが、##NAME1##にしてみればそれはとんでもない数字である。
「博士が凄いのは寿命だけじゃない。その昔、圧政者だったファラオを倒した英雄でもあるんだぞ」
彼を知れば知る程混乱してきた。気安く握手をして良い相手ではなかったのでは、頭の高さを揃えて良い相手ではなかったのではと、##NAME1##は要らぬ心配をし始める。
「あの、何とお呼びすれば…?」
「マホーンで宜しいですよ。あとひざまずかなくて結構です。最近使い始めた偽名ですが、皆さんにこう呼ばれている内に気に入ってしまったので」
「極々、最近な」
ジョナサンの茶々すら、今の##NAME1##には全く聞こえない。
「で、では、よろしくお願いいたします…マホーン博士…」
自己紹介前と同じ態度は最早取れない。##NAME1##はまだ手に汗を握っていた。
「済みません、いきなり非現実的な話題で混乱させてしまいましたね」
「いえ、あの、上手く言えないんですけれど……すごいですね…」
「……失礼。もう一度、逃げたスナイパーを捜してきます。一時間程で戻りますね」
ラニア・ガディシュは口ごもる一般人の態度から何かを察し、わざわざ時間の目安まで告げて席を外した。
##NAME1##は彼が出て行った扉をただ見つめるばかり。
「マホーン博士はあのまま…ずっとお若いままなんですか?」
「ああ。不老不死だからな」
「そうですか…」
「どうした?永遠の若さなんて、特に女性からしたら羨ましいことこの上無いんじゃないか?」
彼女の曇っていく表情を見て、ジョナサンは不思議そうに首をかしげた。
「うーん……でもきっと、寂しいですよね」
周りが歳を取っていくのに対し、自分だけは若いまま。自分より後から生まれる者も皆、自分より先に死んでいく。
「何と言いますか、世界から切り離された感じでしょうか…」
たった百年弱で寿命を迎える##NAME1##に出来る想像は、そこまで。老いることも死ぬことも無いその苦労の程は、苦痛の程は、自分のような普通の人間には計り知れない。
「君達を危険なことに巻き込みたくなかったんだ、悪く思わないでくれ」
黒髪の青年が申し訳無さそうに目を伏せ謝罪するが、ジャックはそれを穏やかな態度で否定する。
「僕達の安全を考慮してくれたんですから、謝ることはありませんよ」
「それに水臭いじゃないか。俺は多少スリリングなトレジャーハントでも構わないぞ!」
己の実力に余程自信があるのか、ジョナサンはぺったんこで目立たない鼻をフンッと鳴らしながら言ってのけた。
「ジョナサンは構わなくても、付き合わされる僕の身が持たないよ…今回は##NAME1##ちゃんも居るんだし」
「その点、俺達は大概のことは平気だからな」
「え?」
アンドレ・ベタンクールの隣で黙って突っ立っていた##NAME1##は、彼の一言に当然の疑問を抱きようやく話に混ざる。
「平気って…?」
「こう見えてデントさんは強いし、マホーン博士は不老不死だ」
「こう見えてとはなんじゃ、こう見えてとは。##NAME1##と言ったな、これからよろしく頼むぞい」
「はい、よろしくお願いいたします……ん?」
友人による説明を軽く聞き流してしわしわの手と握手を果たしたが、どうも引っかかる。
「不老不死?」
彼の口から、昔話や架空の物語でしか聞いたことのない単語が飛び出したからだ。一風変わった他己紹介に気付いた##NAME1##に、ジャックはすぐさまマホーンの方へ振り向いた。
「あ…すみません、言わない方が良かったですか?」
「いや。これから私達は協力し合うのだから、情報共有は必要なことだ」
そう言うと何の変哲も無い美青年は##NAME1##の正面まで来て、澄んだエメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐ向けてきた。
「挨拶がまだでしたね。初めまして、私の本名はラニア・ガディシュ。紀元前十五世紀にエジプトを治めていました」
「へえー、紀元前…って……はい?」
促されるままに片手を差し出したが、名前以外の内容が全く理解できない。
「治めてって…でも、フフッ、貴男……え?」
目の前にある真顔も相まって、思わず乾いた笑いが漏れ出してしまう。
しかしこれまでの雰囲気からして、マホーンもといラニア・ガディシュは気軽に冗談をかます男性ではなさそうだ。ジョークではないことを証拠付けるように、ご老人や昨日の恩人だけでなくジャックやジョナサンも彼の頓珍漢な発言を聞いても平然としている。むしろ##NAME1##の反応の方をうかがっている。
「あ、あの、もう離していただけませんか…」
信じられない。どう握っても、彼の手はピチピチでスベスベなのだ。百年を優に超え使われてきたものとは思えない。思えないが、この場で驚いているのは##NAME1##独りだけである。
「ほっ、本当なんですか?今の…」
「はい。事実です」
「じゃあ……不老不死で、王様っ…!?」
「##NAME1##、いい加減手を離してやれ」
とんでもない人物と握手してしまったと混乱する彼女に、ジョナサンに続きアンドレが助言する。
「自己紹介がストレートすぎやしないか?刺激が強すぎるというか…」
「回りくどく言ったところで同じことじゃよ。うさ公やかめ公の存在を受け入れてくれた者なら、これくらいのことで動揺せんじゃろうて。のう?」
「え、ええ、勿論…」
動揺しかしていない。
確かにジョナサンやアンドレとも普通の人間ではない点は共通しているが、最近姿を動物に変えられた者と途方も無い年月を生きてきた偉人とでは、受ける衝撃の種類及び大きさが違う。
話を進めるべく、ジョナサンは生ける伝説を解説し始めた。
「育ての親のセフル一世に死ねない呪いをかけられて、今三千…何歳だっけ?」
「たしか三千六百九…まあ、その位です」
「そ、そうなんですか…」
紀元前から生き続けているのだから妥当な年齢だが、##NAME1##にしてみればそれはとんでもない数字である。
「博士が凄いのは寿命だけじゃない。その昔、圧政者だったファラオを倒した英雄でもあるんだぞ」
彼を知れば知る程混乱してきた。気安く握手をして良い相手ではなかったのでは、頭の高さを揃えて良い相手ではなかったのではと、##NAME1##は要らぬ心配をし始める。
「あの、何とお呼びすれば…?」
「マホーンで宜しいですよ。あとひざまずかなくて結構です。最近使い始めた偽名ですが、皆さんにこう呼ばれている内に気に入ってしまったので」
「極々、最近な」
ジョナサンの茶々すら、今の##NAME1##には全く聞こえない。
「で、では、よろしくお願いいたします…マホーン博士…」
自己紹介前と同じ態度は最早取れない。##NAME1##はまだ手に汗を握っていた。
「済みません、いきなり非現実的な話題で混乱させてしまいましたね」
「いえ、あの、上手く言えないんですけれど……すごいですね…」
「……失礼。もう一度、逃げたスナイパーを捜してきます。一時間程で戻りますね」
ラニア・ガディシュは口ごもる一般人の態度から何かを察し、わざわざ時間の目安まで告げて席を外した。
##NAME1##は彼が出て行った扉をただ見つめるばかり。
「マホーン博士はあのまま…ずっとお若いままなんですか?」
「ああ。不老不死だからな」
「そうですか…」
「どうした?永遠の若さなんて、特に女性からしたら羨ましいことこの上無いんじゃないか?」
彼女の曇っていく表情を見て、ジョナサンは不思議そうに首をかしげた。
「うーん……でもきっと、寂しいですよね」
周りが歳を取っていくのに対し、自分だけは若いまま。自分より後から生まれる者も皆、自分より先に死んでいく。
「何と言いますか、世界から切り離された感じでしょうか…」
たった百年弱で寿命を迎える##NAME1##に出来る想像は、そこまで。老いることも死ぬことも無いその苦労の程は、苦痛の程は、自分のような普通の人間には計り知れない。