亀人間との挨拶を終えたところで、昨日会った男性達がＶＩＰルームに帰って来た。

「どうだった？」
「いいや、どこを捜しても見つからんかった。逃げ足の速い奴じゃ」

アンドレによる極めて簡潔な問いにはタンクトップ姿の老人が答えた。若い方の男性はというと三人を、特に##NAME1##の存在を確認するとやや慌てて口を開く。

「もういらしてたんですね。こちらからお呼びしたにも関わらず、お待たせしてしまい申し訳ございません」
「そんなことより。どうして俺達に、呪いを解く宝や儀式のことを黙ってたんだよ？それと、昨日##NAME1##を狙った奴は結局何だったんだ？」
「ジョナサン落ち着いて、一度に沢山聞き過ぎだよ」

食い込み気味のジョナサンをジャックがなだめる一方で、二人とアンドレは互いに顔を見合わせ小さく頷いた。

「……あの儀式自体は安全そのものだが、実は厄介な輩が例の宝に関わっていてな」
「厄介な輩？」
「それってまさか、宝を守る…」
「いや、歴とした人間だ。俺達と違ってな」

亀人間はため息交じりに言い捨てた。後から来た青年がアンドレに代わって説明を続ける。

「表向きには有志で始めたピラミッド保全団体と名乗っているが、実際はただ暴れたいだけの武装集団だ。今も平穏な地を次々と紛争に巻き込んでいる。昨日そこの彼女を襲った人物は、そのメンバーの一人だった」
「全く、迷惑な話じゃろ？」
「で、そいつは今どこに？」
「それがのぅ、このホテルに着く前に逃げられてしまったんじゃ。まだまだ聞き出したいことがあったんじゃが、一瞬目を離した隙に忽然と姿を消したんじゃ」

老人のその言葉を聞いて、白い毛で覆われた二本の垂れ耳がぴくっと跳ねる。

「アンドレはともかく、じいさんとマホーン博士の目を盗んで脱走なんてなかなかやる奴だな」
「おい」

しょうも無い喧嘩が始まる前に、デントはわざと大きな咳払いをして二匹を止めた。