Case13 仕方ないの
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「うわーっ、めっちゃキレイ!」
「ホントねぇ~」
「お嫁さん綺麗!」
あれから短時間で小雨は止み、2388年の空は新郎新婦の門出を祝うために晴れ渡ってくれたようだ。
真っ白なウェディングドレスが青い空によく映える。
「いいなぁ~」
「なんかさ、不謹慎かもだけどこーいうの運命感じちゃわない?」
「こんな時だからこそ逆に?」
「そうそう!なんか余計尊い感じ!」
先程まで暗い表情だったカップルの目線の先、カメラマンの背後には、結構な人だかりが出来上がっていた。特に女性からの羨望の眼差しに囲まれながら、記念撮影は和やかに進む。
「あ、やっぱ居た顔本さん」
S.D.S.女子組が人混みをかき分け近付いてきた。彼女等も沸き立つ野次馬に混ざって見物していたらしい。
「やっぱって何だよ」
「顔本さんのことだから、何かしら協力してるんじゃないかなーって。ね?マリマリ」
「うんっ!この撮影会、もしかして顔本さんが考えたんですか?」
「まあ、半分はね」
絶対そうでしょと言いたげな2人分の視線がこそばゆく、つい先日相談窓口係に復帰した顔本は鼻の下をこすりつつ若干ぶっきらぼうに答える。
「写真館で白背景だけの予定がさ、主役もカメラマンもノッてきちゃって。んでこの有り様よ」
やれやれと呆れる素振りを見せるが、大所帯を眺める顔本の優しい横顔に、ルウと愛鈴もつられて笑みを溢す。
「ウェディングケーキもご馳走も空き缶ガラガラも厳しいけど、これくらいはね」
「空き缶ガラガラ?」
「結婚式にゴミを使うんですか…?」
「ちぇっ、ジェネレーションギャップってやつがここにもか。2017年帰ったら検索しとけっ」
「ヘソ曲げないの顔本さん。今日はお目出度い日でしょう?笑顔笑顔」
やさぐれる顔本の口角を泉海は後ろから無理矢理つまみ上げる。
「いひゃいいひゃい、わーりまひたよ!ったく……あ、ガラガラは知らなくてもブーケトスならJKもわかるよね?」
「えっと…おもしろ動画で見たことありますっ」
「結構激しいよね。女の戦い!って感じ。あ、今から生で見られるみたい!」
ギャラリーが口をつぐんで数歩ずつ下がり、何かが始まる気配。
だが花嫁はブーケを放ることなく、こちらへゆっくり歩いてくる。新郎も、特に驚いた様子も無しについて来た。投げるポジションに都合でもあるのかと、顔本は深く考えずに道を開けようとした。
「はい」
「はい?」
何の気なしに受け取った顔本は造花の花束をバサバサくるくると傾け観察する。
「よく出来てら……え、まさか私が代理投手?部外者が投げても縁起良い?コレ」
「いえ、私が貴女にブーケを渡したいんです。貴女のご提案のお陰で、今日は素敵な一日になりました。本当にありがとうございます!」
「僕からもありがとうございます!」
満面の笑みの新郎新婦が頭を下げると、周りから自然と拍手が沸き起こった。
「良かったじゃない顔本さん!」
呆気に取られていた顔本は泉海の呼び掛けと肩に置かれた手で我に返る。
「直で貰っちゃった。そんなんアリ?」
「今時はトスしないスタイルもあるんですよ」
「ほえ~、見てない内に色々進化してんねぇ~」
顔本は結婚式に対し感嘆する一方で、その重要アイテムである花束を肩へ雑に担ぐ。
「まあ、嬉しいけど私にはそもそも相手が居ねぇからなぁ~、果たして見つかるかなぁ~」
「そ、そうですよね!拐われてしまったばかりで、今どこにいらっしゃるのか……ご無事なのか……すみません」
「いやいやここは笑い飛ばすとこ……さらわれ?」
「僕達も堂嶋先生にはお世話になっていたので、本当に心配です…」
根が良い新婚さん達は揃って顔本に気を遣う。
「堂嶋…?ま、待て待て」
しんみりとした空気に顔本だけがついていけていない。
「一番心苦しいのは貴女ですよね、大切な人と離れ離れだなんて…」
「飛躍しすぎ!いや、先生のこと心配じゃないっつったら嘘になるけどさ、渋谷民のこと全員等しく心配だから!」
「この非常時に照れてる暇なんて無いですよ、幸せを掴むには貴女も素直にならないと!」
「彼を助けに行くなんてこと僕達には到底無理だけど、だからこそ!僕達は自分に出来ることをこれからも頑張りましょうね!」
廃れた未来へ飛ばされたこの絶望的な状況下でも、人々は幸せを見出だし眩しい笑顔を作り出すことができる。現に、一組のカップルはすっかり元気を取り戻してみせた。眩しすぎて顔本は目を瞑う。
「あーもー良いよそれで。前向きになってくれりゃあそれで満足だわ」
堂嶋幹夫含め、リヴィジョンズに拐われた人々の安否は本当に気掛かりだ。しかし、今渋谷に彼が居なくて助かったと顔本だけは心の底から安堵している。
「ホントねぇ~」
「お嫁さん綺麗!」
あれから短時間で小雨は止み、2388年の空は新郎新婦の門出を祝うために晴れ渡ってくれたようだ。
真っ白なウェディングドレスが青い空によく映える。
「いいなぁ~」
「なんかさ、不謹慎かもだけどこーいうの運命感じちゃわない?」
「こんな時だからこそ逆に?」
「そうそう!なんか余計尊い感じ!」
先程まで暗い表情だったカップルの目線の先、カメラマンの背後には、結構な人だかりが出来上がっていた。特に女性からの羨望の眼差しに囲まれながら、記念撮影は和やかに進む。
「あ、やっぱ居た顔本さん」
S.D.S.女子組が人混みをかき分け近付いてきた。彼女等も沸き立つ野次馬に混ざって見物していたらしい。
「やっぱって何だよ」
「顔本さんのことだから、何かしら協力してるんじゃないかなーって。ね?マリマリ」
「うんっ!この撮影会、もしかして顔本さんが考えたんですか?」
「まあ、半分はね」
絶対そうでしょと言いたげな2人分の視線がこそばゆく、つい先日相談窓口係に復帰した顔本は鼻の下をこすりつつ若干ぶっきらぼうに答える。
「写真館で白背景だけの予定がさ、主役もカメラマンもノッてきちゃって。んでこの有り様よ」
やれやれと呆れる素振りを見せるが、大所帯を眺める顔本の優しい横顔に、ルウと愛鈴もつられて笑みを溢す。
「ウェディングケーキもご馳走も空き缶ガラガラも厳しいけど、これくらいはね」
「空き缶ガラガラ?」
「結婚式にゴミを使うんですか…?」
「ちぇっ、ジェネレーションギャップってやつがここにもか。2017年帰ったら検索しとけっ」
「ヘソ曲げないの顔本さん。今日はお目出度い日でしょう?笑顔笑顔」
やさぐれる顔本の口角を泉海は後ろから無理矢理つまみ上げる。
「いひゃいいひゃい、わーりまひたよ!ったく……あ、ガラガラは知らなくてもブーケトスならJKもわかるよね?」
「えっと…おもしろ動画で見たことありますっ」
「結構激しいよね。女の戦い!って感じ。あ、今から生で見られるみたい!」
ギャラリーが口をつぐんで数歩ずつ下がり、何かが始まる気配。
だが花嫁はブーケを放ることなく、こちらへゆっくり歩いてくる。新郎も、特に驚いた様子も無しについて来た。投げるポジションに都合でもあるのかと、顔本は深く考えずに道を開けようとした。
「はい」
「はい?」
何の気なしに受け取った顔本は造花の花束をバサバサくるくると傾け観察する。
「よく出来てら……え、まさか私が代理投手?部外者が投げても縁起良い?コレ」
「いえ、私が貴女にブーケを渡したいんです。貴女のご提案のお陰で、今日は素敵な一日になりました。本当にありがとうございます!」
「僕からもありがとうございます!」
満面の笑みの新郎新婦が頭を下げると、周りから自然と拍手が沸き起こった。
「良かったじゃない顔本さん!」
呆気に取られていた顔本は泉海の呼び掛けと肩に置かれた手で我に返る。
「直で貰っちゃった。そんなんアリ?」
「今時はトスしないスタイルもあるんですよ」
「ほえ~、見てない内に色々進化してんねぇ~」
顔本は結婚式に対し感嘆する一方で、その重要アイテムである花束を肩へ雑に担ぐ。
「まあ、嬉しいけど私にはそもそも相手が居ねぇからなぁ~、果たして見つかるかなぁ~」
「そ、そうですよね!拐われてしまったばかりで、今どこにいらっしゃるのか……ご無事なのか……すみません」
「いやいやここは笑い飛ばすとこ……さらわれ?」
「僕達も堂嶋先生にはお世話になっていたので、本当に心配です…」
根が良い新婚さん達は揃って顔本に気を遣う。
「堂嶋…?ま、待て待て」
しんみりとした空気に顔本だけがついていけていない。
「一番心苦しいのは貴女ですよね、大切な人と離れ離れだなんて…」
「飛躍しすぎ!いや、先生のこと心配じゃないっつったら嘘になるけどさ、渋谷民のこと全員等しく心配だから!」
「この非常時に照れてる暇なんて無いですよ、幸せを掴むには貴女も素直にならないと!」
「彼を助けに行くなんてこと僕達には到底無理だけど、だからこそ!僕達は自分に出来ることをこれからも頑張りましょうね!」
廃れた未来へ飛ばされたこの絶望的な状況下でも、人々は幸せを見出だし眩しい笑顔を作り出すことができる。現に、一組のカップルはすっかり元気を取り戻してみせた。眩しすぎて顔本は目を瞑う。
「あーもー良いよそれで。前向きになってくれりゃあそれで満足だわ」
堂嶋幹夫含め、リヴィジョンズに拐われた人々の安否は本当に気掛かりだ。しかし、今渋谷に彼が居なくて助かったと顔本だけは心の底から安堵している。