Case11 大切な人が
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区民の安否確認のためバス車内を確認しに来た泉海巡査長は、運転席の隣で思わず立ち止まった。意外な人物が奥の補助席でうなだれている。
「顔本さん!?」
車外の警官数人が彼女の大声に反応した。名前を呼ばれた本人だけは顔を上げずにいる。
「どうしてここに!?帰還しないってあれだけ…」
「顔本がそこに居るのか!?」
黒岩署長が後から駆け付けた。彼の声がしてからは、ほんの少しだけ体を揺らしたように見える。だが返事は無い。
「顔本さん…?」
泉海は相手の目の前で膝を揃えてしゃがみ、下から顔を覗き込む。
「当然だけど、さ」
「……」
「私、何も出来なかった……何も……」
「……」
「何も、じゃない……マイナスだ…最悪だっ…!私が居なかったら、大介くん先生追っかけられたのに…!」
両手で頭を抱え、自身の髪の根元を思い切り掴み地肌を引っ張る。
「私が、あの時私が余計なこと言わなきゃ、浅野さんも、先生も…!」
「それはっ……そもそもこうなったのは顔本さんのせいじゃ…!」
「顔本、外に出ろ」
「ヤです」
顔本は黒岩の指令を即却下した。
泉海は2人の間を遮らないよう立ち上がって通路脇に寄る。
「顔本さん…」
「外の空気を吸え」
「私はいい。どうせコレで帰るんでしょ。ここに居る……ほっといて……」
黒岩は部下を案じる泉海をそっと押し退け、顔本の肩へ手を伸ばす。
「顔本。泉海の言った通り、この現状はお前だけの責任では」
「っ!」
顔本は異性の手が近付く気配から反射的に身を引き、顔を上げて相手を凝視する。
「……」
命の危機や怪物に連れ去られる恐怖とはまた異なる、どこか反抗的な意思も混じった目。
自分に対して初めて見せる種類の反応に、ひとまず黒岩は彼女から離れた。
「済まない」
顔本は縮こまった肩から努めて力を抜く。
「いや、ごめん…なんでもないっす」
堂嶋医師の時は、震えなかったのに。
「顔本さん、もう大丈夫よ。大丈夫だから」
頭を撫でてくる泉海巡査長の手も平気だ。
彼女に促され渋々バスを降りると、人々から感謝の言葉を送られる若きヒーローの姿が目に飛び込む。
「あ…」
自分があの時、もっと上手く立ち回れていれば、あの子の叔父は拐われずに済んだのでは。
「あ、顔本さーん!」
得意気な堂嶋大介と目が合い、居心地は最悪だが手を振り返す。
勇敢に戦い抜いてくれた彼に対する感謝の気持ちと多大なる罪悪感が、顔本の胸中でひしめき合っていた。
「無事で良かった!どこも怪我してない?顔本さんの場合、怪我増えてない?のが正しいよな」
だがこの清々しい、否、清々しい顔を努めている彼を見れば、自分のモヤついた気持ちなど吹き飛ばさねばと改める。
「ん、大丈夫!守ってくれてありがと。あと、おじさんのことごめんね、私すぐ側に居たのにさ」
「なんで顔本さんが謝るんだよ。みんなを助けるヒーローは俺の役目。だから、これからもサポート頼んだ!」
そう言うと、男友達は利き手を顔の前に軽く構えて待つ。
「おうっ、任せな!」
明るい言葉にもハイタッチにも顔本は元気に応えてみせた。
「顔本さん!?」
車外の警官数人が彼女の大声に反応した。名前を呼ばれた本人だけは顔を上げずにいる。
「どうしてここに!?帰還しないってあれだけ…」
「顔本がそこに居るのか!?」
黒岩署長が後から駆け付けた。彼の声がしてからは、ほんの少しだけ体を揺らしたように見える。だが返事は無い。
「顔本さん…?」
泉海は相手の目の前で膝を揃えてしゃがみ、下から顔を覗き込む。
「当然だけど、さ」
「……」
「私、何も出来なかった……何も……」
「……」
「何も、じゃない……マイナスだ…最悪だっ…!私が居なかったら、大介くん先生追っかけられたのに…!」
両手で頭を抱え、自身の髪の根元を思い切り掴み地肌を引っ張る。
「私が、あの時私が余計なこと言わなきゃ、浅野さんも、先生も…!」
「それはっ……そもそもこうなったのは顔本さんのせいじゃ…!」
「顔本、外に出ろ」
「ヤです」
顔本は黒岩の指令を即却下した。
泉海は2人の間を遮らないよう立ち上がって通路脇に寄る。
「顔本さん…」
「外の空気を吸え」
「私はいい。どうせコレで帰るんでしょ。ここに居る……ほっといて……」
黒岩は部下を案じる泉海をそっと押し退け、顔本の肩へ手を伸ばす。
「顔本。泉海の言った通り、この現状はお前だけの責任では」
「っ!」
顔本は異性の手が近付く気配から反射的に身を引き、顔を上げて相手を凝視する。
「……」
命の危機や怪物に連れ去られる恐怖とはまた異なる、どこか反抗的な意思も混じった目。
自分に対して初めて見せる種類の反応に、ひとまず黒岩は彼女から離れた。
「済まない」
顔本は縮こまった肩から努めて力を抜く。
「いや、ごめん…なんでもないっす」
堂嶋医師の時は、震えなかったのに。
「顔本さん、もう大丈夫よ。大丈夫だから」
頭を撫でてくる泉海巡査長の手も平気だ。
彼女に促され渋々バスを降りると、人々から感謝の言葉を送られる若きヒーローの姿が目に飛び込む。
「あ…」
自分があの時、もっと上手く立ち回れていれば、あの子の叔父は拐われずに済んだのでは。
「あ、顔本さーん!」
得意気な堂嶋大介と目が合い、居心地は最悪だが手を振り返す。
勇敢に戦い抜いてくれた彼に対する感謝の気持ちと多大なる罪悪感が、顔本の胸中でひしめき合っていた。
「無事で良かった!どこも怪我してない?顔本さんの場合、怪我増えてない?のが正しいよな」
だがこの清々しい、否、清々しい顔を努めている彼を見れば、自分のモヤついた気持ちなど吹き飛ばさねばと改める。
「ん、大丈夫!守ってくれてありがと。あと、おじさんのことごめんね、私すぐ側に居たのにさ」
「なんで顔本さんが謝るんだよ。みんなを助けるヒーローは俺の役目。だから、これからもサポート頼んだ!」
そう言うと、男友達は利き手を顔の前に軽く構えて待つ。
「おうっ、任せな!」
明るい言葉にもハイタッチにも顔本は元気に応えてみせた。