Case11 大切な人が
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顔本はまだまだ訴えを叫び続けるつもりでいた。だが、遥か遠く牟田の側で停車していたトラックから3体のロボットが鉛色の空向けて飛び出し、呆気にとられる。
「なっ…戦ってる!?やっぱあいつらって敵なの!?帰還嘘だった!?」
同じバスに乗り合わせている人々が一斉にどよめく。顔本の当てずっぽうな実況解説のお陰だ。
「顔本さん、皆の不安を煽るような発言は…!」
「でもあそこバトってますって!銃声聞こえないんすか!?」
「銃声?…ほんとだ、遠いけど聞こえるわ!」
「あの高校生達が戦ってるってこと!?帰還できるんじゃなかったの!?」
「ここに居たら俺達も危なくねえか…?」
S.D.S.による奇襲は目的通りリヴィジョンズ側の混乱も引き起こしていた。
「お前達は徹底抗戦を選んだ!」
チハルはすがってくる交渉相手から距離を取り、古代人を乗せたバスを睨み付ける。
「バスを狙え!我らの祖先とあの女を捕らえろ!」
指差す先で当のターゲットは呑気に現場の様子を眺めていた。
「てかバトル生で見るの地味に初めてかも!あのセクシーなんか指示出した?……って、うえええ!?」
レンズ越しでも双眼鏡を退けても、シビリアン数体が四つん這いでべたんべたんと駆けてくる。渋谷民の連れ去りを阻止すべくストリング・パペットが後から追ってくるが、到着は敵の先陣の方が早い。
顔本は力の限り窓を閉め切った。
「みんなどっか掴まるか伏せて!!」
奴等の目的はバスの中身。知能指数の低い怪物は持ち上げられないおみくじ筒を乱暴に揺さぶり、中の当たり達を取り出そうと躍起になる。
「早く来てS.D.S.ー!こっちピンチー!!」
バスにかじりついていたシビリアンは桃色のパペットによって急所を狙撃される。窓ガラスが大きく鋭い指で突き破られる寸前のことだった。
「助かったぁ~」
「顔本さん伏せて!まだ危ないですよ!」
「ちょっと見るだけ!」
顔本はそっと頭を上げる。他の渋谷民がどうなっているか、確認するために。
「外は……すぐ捕まる。ここのがまだ安全だよ」
恐怖に囚われ車外へ飛び出した区民をシビリアンはいとも簡単につまみ上げ、己の背中部分、青緑色の液体入りタンクへ黙々と回収していく。
「やば……ガチでやばい…!」
人間からしたら地獄。リヴィジョンズからしたら作業。ガラス戸1枚向こう側にて2017年では有り得ない光景が広がっていた。
幸か不幸か、このバスにおいては出入口で喚き散らしていた顔本が邪魔で、無闇に降車した者はまだ居なかった。
「S.D.S.!S.D.S.は!?パペットもっとこっちでフォローしてくんないと!ええと今は……ガイくん、ルウちゃん、マリマリちゃんか」
「え?慶作は?…どうして慶作は居ないのっ!?」
浅野良枝は顔本に向かって初めて声を張り上げた。
「あの子帰還しないなんて言ってたから、だったらあれに乗って戦っているんじゃないの!?」
「さ、さあ……」
我が子を案じる母の剣幕に顔本は思わず双眼鏡を取り落とす。
「やっぱり他のバスに!?まさか、もう…!?」
「いやでも、パペットに乗っていないならいつもは泉海さんの」
「慶作ー!!」
顔面蒼白な良枝は顔本の話を最後まで聞かず、地獄絵図へ飛び込んでいった。
「ちょっ、浅野さん!今出ちゃ危ないって!」
「連れ戻してきます!顔本さんはここに!」
「先生まで!どわあぁぁ!?」
顔本の真横にシビリアンの顔面が現れる。閉め切った窓ガラスを指先で軽く割られてしまった。
「ひいいい!来んな来んなぁ!」
松葉杖をでたらめに振り回し、狭いバス内を探りにくそうにしている爪を弾いた。自分も捕まるのは時間の問題。
「させるかー!!」
聞き慣れた男の子の声。
バスの中の人々を狙っていたシビリアンは白いパペットから背後を狙われ、次々と機能を停止していく。
巨大な壁達がその場で崩れ落ちることで車窓の視界が開けた。
「大介くん!」
「顔本さん、そこでじっとしてて!」
「マリマリちゃんと交代したのか。よぉーし、いっけー!取り戻せー!」
「言われなくても!」
2017年の人類でタンクがいっぱいになった者から敵は順次引き上げていく。それを堂嶋大介とシュタイナー双子のたった3機が阻止しにかかる。
多勢に無勢。実際取り逃がしてしまった数の方が多い。
「おわーっ!また来たぁ!!」
更には、S.D.S.の目を盗み顔本の居るバスへ何匹も這い寄ってくる。
「クソッ、キリが無い!」
「そうだ大介くんっ、さっき浅野さんと先生が」
顔本は言葉を失った。
先程まで隣に座っていた男性が、遠くで鷲掴みにされている。
「せ」
叫ぶ間もくれずに新たな敵が窓に張り付く。そしてまた味方がなぎ倒す。顔本の目の前でイタチごっこがなかなか終わらない。
「大介くん!あっち!先生が!!」
大介は救出に行こうとしたが、顔本の乗っているバスが執拗に狙われていてこの場を離れることが出来なかった。
「なっ…戦ってる!?やっぱあいつらって敵なの!?帰還嘘だった!?」
同じバスに乗り合わせている人々が一斉にどよめく。顔本の当てずっぽうな実況解説のお陰だ。
「顔本さん、皆の不安を煽るような発言は…!」
「でもあそこバトってますって!銃声聞こえないんすか!?」
「銃声?…ほんとだ、遠いけど聞こえるわ!」
「あの高校生達が戦ってるってこと!?帰還できるんじゃなかったの!?」
「ここに居たら俺達も危なくねえか…?」
S.D.S.による奇襲は目的通りリヴィジョンズ側の混乱も引き起こしていた。
「お前達は徹底抗戦を選んだ!」
チハルはすがってくる交渉相手から距離を取り、古代人を乗せたバスを睨み付ける。
「バスを狙え!我らの祖先とあの女を捕らえろ!」
指差す先で当のターゲットは呑気に現場の様子を眺めていた。
「てかバトル生で見るの地味に初めてかも!あのセクシーなんか指示出した?……って、うえええ!?」
レンズ越しでも双眼鏡を退けても、シビリアン数体が四つん這いでべたんべたんと駆けてくる。渋谷民の連れ去りを阻止すべくストリング・パペットが後から追ってくるが、到着は敵の先陣の方が早い。
顔本は力の限り窓を閉め切った。
「みんなどっか掴まるか伏せて!!」
奴等の目的はバスの中身。知能指数の低い怪物は持ち上げられないおみくじ筒を乱暴に揺さぶり、中の当たり達を取り出そうと躍起になる。
「早く来てS.D.S.ー!こっちピンチー!!」
バスにかじりついていたシビリアンは桃色のパペットによって急所を狙撃される。窓ガラスが大きく鋭い指で突き破られる寸前のことだった。
「助かったぁ~」
「顔本さん伏せて!まだ危ないですよ!」
「ちょっと見るだけ!」
顔本はそっと頭を上げる。他の渋谷民がどうなっているか、確認するために。
「外は……すぐ捕まる。ここのがまだ安全だよ」
恐怖に囚われ車外へ飛び出した区民をシビリアンはいとも簡単につまみ上げ、己の背中部分、青緑色の液体入りタンクへ黙々と回収していく。
「やば……ガチでやばい…!」
人間からしたら地獄。リヴィジョンズからしたら作業。ガラス戸1枚向こう側にて2017年では有り得ない光景が広がっていた。
幸か不幸か、このバスにおいては出入口で喚き散らしていた顔本が邪魔で、無闇に降車した者はまだ居なかった。
「S.D.S.!S.D.S.は!?パペットもっとこっちでフォローしてくんないと!ええと今は……ガイくん、ルウちゃん、マリマリちゃんか」
「え?慶作は?…どうして慶作は居ないのっ!?」
浅野良枝は顔本に向かって初めて声を張り上げた。
「あの子帰還しないなんて言ってたから、だったらあれに乗って戦っているんじゃないの!?」
「さ、さあ……」
我が子を案じる母の剣幕に顔本は思わず双眼鏡を取り落とす。
「やっぱり他のバスに!?まさか、もう…!?」
「いやでも、パペットに乗っていないならいつもは泉海さんの」
「慶作ー!!」
顔面蒼白な良枝は顔本の話を最後まで聞かず、地獄絵図へ飛び込んでいった。
「ちょっ、浅野さん!今出ちゃ危ないって!」
「連れ戻してきます!顔本さんはここに!」
「先生まで!どわあぁぁ!?」
顔本の真横にシビリアンの顔面が現れる。閉め切った窓ガラスを指先で軽く割られてしまった。
「ひいいい!来んな来んなぁ!」
松葉杖をでたらめに振り回し、狭いバス内を探りにくそうにしている爪を弾いた。自分も捕まるのは時間の問題。
「させるかー!!」
聞き慣れた男の子の声。
バスの中の人々を狙っていたシビリアンは白いパペットから背後を狙われ、次々と機能を停止していく。
巨大な壁達がその場で崩れ落ちることで車窓の視界が開けた。
「大介くん!」
「顔本さん、そこでじっとしてて!」
「マリマリちゃんと交代したのか。よぉーし、いっけー!取り戻せー!」
「言われなくても!」
2017年の人類でタンクがいっぱいになった者から敵は順次引き上げていく。それを堂嶋大介とシュタイナー双子のたった3機が阻止しにかかる。
多勢に無勢。実際取り逃がしてしまった数の方が多い。
「おわーっ!また来たぁ!!」
更には、S.D.S.の目を盗み顔本の居るバスへ何匹も這い寄ってくる。
「クソッ、キリが無い!」
「そうだ大介くんっ、さっき浅野さんと先生が」
顔本は言葉を失った。
先程まで隣に座っていた男性が、遠くで鷲掴みにされている。
「せ」
叫ぶ間もくれずに新たな敵が窓に張り付く。そしてまた味方がなぎ倒す。顔本の目の前でイタチごっこがなかなか終わらない。
「大介くん!あっち!先生が!!」
大介は救出に行こうとしたが、顔本の乗っているバスが執拗に狙われていてこの場を離れることが出来なかった。