Case11 大切な人が
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選ばれた渋谷民を乗せた何台ものバスは、荒野の中ゆっくりと停車した。前方には巨大なシビリアンの群れ。といっても、その無機質な顔は肉眼では判別し辛いほど離れた位置に居る。
牟田の他に区役所員数名を乗せた乗用車と1台の大型トラックだけが走り続け、顔本達を置いていく。
「あのトラック何?貢ぎ物の食糧でも入ってんの?」
「パペットらしいですよ」
「へー……は!?」
皆の胸中では不安と期待が渦巻く。小声で話したり窓を開けずに外の様子を確認する程度。ただし顔本が乗っているバス内は違った。
「なんでパペットが運ばれてんの!?」
「我々が2017年に帰還する交換条件として、こちらのストリング・パペットをリヴィジョンズへ引き渡すそうです。ご存知なかったんですか?」
「当ったり前でしょ!?え!?いくつ!?何体!?あの荷台の大きさ…まさか3体全部入ってんじゃないだろうな!?」
「顔本さん、もう少し声のボリューム下げて…」
「主戦力差し出すとか頭涌いてんのか牟田ちゃん、いや牟田ぁ!!渋谷にはまだ人居るんだぞ!!」
顔本は感情のままに大股でバス前方の出入口へ向かう。
「待ってください顔本さんっ」
「やだねっ」
「大声出したって生身で乗り込んだって現状は変わりません。悔しい時ほど冷静になって、ご自身に出来ることを探しましょう」
「私に、出来ること…?」
「そうです。まずは落ち着いて考えましょう」
彼の意見には一理ある。むしろ、自分の言動にはこれっぽっちも理が無い。
「そ、それもそうか……ごめんみんな、騒いじゃって」
話が通じる状態に戻った顔本は外の様子を観察する。車内の平穏をひとまず取り戻した幹夫医師へ、座席に着いたままの渋谷民は心の内で拍手を送った。
「うげ、やっぱシビリアン大量に居んじゃん……あれ?人間も居る?」
顔本は重いガラス窓を大きく開けて顔を出した。裸眼ではやはりよく見えないが、巨大な怪物1匹が人間を大事そうに手の平に乗せている。
「誰か双眼鏡もってませーん?あ、ラッキー!次貸して!」
「あ、今どうぞ…」
「さんきゅ!」
顔本は双眼鏡のピントを合わせながら考え続ける。
「なんだ~?あいつらってあんな小さい…人間タイプも居るの?チビだけど逆にリーダー的な?サークルの姫的な?そーいや牟田ちゃんリヴィジョンズと交渉してたんだよな…」
顔本の目には、褐色肌に白く大胆なコスプレ衣装がよく映える美女が映った。
「わおダイナマイツ。じゃなくて!」
双眼鏡を持ち主へ雑に返してから窓枠に片足をついて乗り出した。
「きっと日本語通じるヤツだ!おーい!!言う通りに帰還してやるから、そのデカブツ達今すぐ全員引っ込めろ!怖過ぎるっつーの!」
「顔本さんっ!?」
「あとパペットあげるの納得してないからー!極一部の代表者気取りが決めたことだからー!いつか絶対取り返っ、うわわっ!」
バスの外へ落ちそうになったところを幹夫や側に居た数人がなんとか車内へ引き戻す。
さして重大でもない異変にチハル・イスルギは気付いていた。
「なんだあの威勢の良い古代人は」
「も、申し訳ございません!お気になさらず!もう顔本さんったら…!」
「顔本……そうだ、奴が顔本だったな」
「はいっ、ご要望通り連れて参りました」
今しがたの考えをチハルは胸中で取り消した。いずれ消すにせよ、まだあの古代人は必要だ。自分がどんな運命を辿るのかすら知らずに、こちらに向かってまた何か叫び出した。
「ムキューの言う通り、やかましい女だな」
「相も変わらずアグレッシブ、アーンド、プアなレディだ。弱い犬程よく吠える」
別のシビリアンの上には、茶色い喋る人形がちょこんと乗っかっている。
「あのぴょんぴょんしてんのって……ちょ、もっかい双眼鏡貸して!……やっぱあん時のニコラ、いやモフラス!あとで触らせろやー!」
顔本の声は届かずとも、ニコラスは彼女の喚いている内容が大体予想できた。
牟田の他に区役所員数名を乗せた乗用車と1台の大型トラックだけが走り続け、顔本達を置いていく。
「あのトラック何?貢ぎ物の食糧でも入ってんの?」
「パペットらしいですよ」
「へー……は!?」
皆の胸中では不安と期待が渦巻く。小声で話したり窓を開けずに外の様子を確認する程度。ただし顔本が乗っているバス内は違った。
「なんでパペットが運ばれてんの!?」
「我々が2017年に帰還する交換条件として、こちらのストリング・パペットをリヴィジョンズへ引き渡すそうです。ご存知なかったんですか?」
「当ったり前でしょ!?え!?いくつ!?何体!?あの荷台の大きさ…まさか3体全部入ってんじゃないだろうな!?」
「顔本さん、もう少し声のボリューム下げて…」
「主戦力差し出すとか頭涌いてんのか牟田ちゃん、いや牟田ぁ!!渋谷にはまだ人居るんだぞ!!」
顔本は感情のままに大股でバス前方の出入口へ向かう。
「待ってください顔本さんっ」
「やだねっ」
「大声出したって生身で乗り込んだって現状は変わりません。悔しい時ほど冷静になって、ご自身に出来ることを探しましょう」
「私に、出来ること…?」
「そうです。まずは落ち着いて考えましょう」
彼の意見には一理ある。むしろ、自分の言動にはこれっぽっちも理が無い。
「そ、それもそうか……ごめんみんな、騒いじゃって」
話が通じる状態に戻った顔本は外の様子を観察する。車内の平穏をひとまず取り戻した幹夫医師へ、座席に着いたままの渋谷民は心の内で拍手を送った。
「うげ、やっぱシビリアン大量に居んじゃん……あれ?人間も居る?」
顔本は重いガラス窓を大きく開けて顔を出した。裸眼ではやはりよく見えないが、巨大な怪物1匹が人間を大事そうに手の平に乗せている。
「誰か双眼鏡もってませーん?あ、ラッキー!次貸して!」
「あ、今どうぞ…」
「さんきゅ!」
顔本は双眼鏡のピントを合わせながら考え続ける。
「なんだ~?あいつらってあんな小さい…人間タイプも居るの?チビだけど逆にリーダー的な?サークルの姫的な?そーいや牟田ちゃんリヴィジョンズと交渉してたんだよな…」
顔本の目には、褐色肌に白く大胆なコスプレ衣装がよく映える美女が映った。
「わおダイナマイツ。じゃなくて!」
双眼鏡を持ち主へ雑に返してから窓枠に片足をついて乗り出した。
「きっと日本語通じるヤツだ!おーい!!言う通りに帰還してやるから、そのデカブツ達今すぐ全員引っ込めろ!怖過ぎるっつーの!」
「顔本さんっ!?」
「あとパペットあげるの納得してないからー!極一部の代表者気取りが決めたことだからー!いつか絶対取り返っ、うわわっ!」
バスの外へ落ちそうになったところを幹夫や側に居た数人がなんとか車内へ引き戻す。
さして重大でもない異変にチハル・イスルギは気付いていた。
「なんだあの威勢の良い古代人は」
「も、申し訳ございません!お気になさらず!もう顔本さんったら…!」
「顔本……そうだ、奴が顔本だったな」
「はいっ、ご要望通り連れて参りました」
今しがたの考えをチハルは胸中で取り消した。いずれ消すにせよ、まだあの古代人は必要だ。自分がどんな運命を辿るのかすら知らずに、こちらに向かってまた何か叫び出した。
「ムキューの言う通り、やかましい女だな」
「相も変わらずアグレッシブ、アーンド、プアなレディだ。弱い犬程よく吠える」
別のシビリアンの上には、茶色い喋る人形がちょこんと乗っかっている。
「あのぴょんぴょんしてんのって……ちょ、もっかい双眼鏡貸して!……やっぱあん時のニコラ、いやモフラス!あとで触らせろやー!」
顔本の声は届かずとも、ニコラスは彼女の喚いている内容が大体予想できた。