Case11 大切な人が
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リヴィジョンズ代表者のひとりが露出度の高いコミュニケーションボディを使用し、渋谷臨時政府のトップ牟田区長に接触した翌日のこと。
「どうだムキュー」
スペースの有り余る無機質な広間にて、小柄な姉は複雑に絡み合った無数の光曲線を見上げていた。背後から声を掛けられ、顎を上げて振り向く。
「ダメみたいだよチハル。どうやってもノイズは取り除けない」
「渋谷の街内部までは、やはり自在に映し出せないか」
メイド服姿の少女が宙へ手を掲げるとホログラムの画面が現れた。そこには荒野とビル群がうっすら入り交じった景色が表示される。
「今の渋谷は2388年であると同時に、2017年でもある。完全に確定できるまでは、外から覗ける範囲で我慢だね」
「私とニコラスが出向いた際は、これといった危険因子は見受けられなかった。だが、姑息な手を練られれば厄介であることに変わりはない。念のため監視を強化しておきたいところだが…」
チハル・イスルギは顎に指の背を当て、片方の足へ重心を掛ける。対してムキュー・イスルギは妹の気掛かりを意に介さず、引き続き渋谷周辺のチェックを試みる。
「大丈夫でしょ。古代人は今のテクノロジーについて来れやしないよ。あの女の浅知恵だってそう。どうせアーヴのエージェントやパペットに頼りきりなんだから」
「そのパペットも、もうじき我々が手に入れる」
「ボク達の祖先もね!」
画面の内容が鮮明なものに切り替わったところで、ムキューはそれを複数出現させた。先程よりも距離が開けば、どの画面も過去から転送させた建造物をはっきり映し出すことができる。
「居た居た、パペットマスターのガキ共」
地層の断面が剥き出しとなったとあるポイントにて、戦闘用ロボットのパイロット達は仲睦まじく実地訓練中。ムキューとチハルの命令を理解できず勝手に出撃しているシビリアン達を、火力の高い遠距離用武器で撃破しては達成感を得ている。
「っ!」
チハルは歯を食い縛った。
知能指数は低けれど、体はいびつに膨れ上がってしまっても、彼等は人間。自分と同じ病に犯された同志達がただただ散っていく姿を今は画面越しに見届けるしかない。
「気を抜いていられるのも今の内だ…!」
「あんなアホ面なんかにボク達が引けを取る訳無いよ」
「そうだ。我々はなんとしてもやり遂げてみせる。同胞のために、人類の未来のために」
「おんや~?あのアグレッシブレディは、顔本ではないか」
いつの間にか現れた3人目がしれっと会話に混じる。外見も身長も人形の彼は、彼女達が目にもくれていない画面に注目していた。
「松葉杖に…頭の包帯?からかいに行った時よりケガが増えているな。自由奔放な彼女のことだ、上を押しきってヤンチャでもしたのだろう」
「ニコラス。貴様が実際に接触した古代人は堂嶋大介のみの筈。先日の報告は虚偽だったと?」
「勝手なことしてんじゃないよこのイヌモドキ!」
ふかふかのヌイグルミは2人から見下ろされようが少女の足に踏みつけられようが構わず、マイペースにことを進める。
「まあまあ、ここはこの私の功績に免じてお許しいただきたいところだが?」
「はあー?」
「一体何の話をしている?」
「おやおや!人類の救済者であられるお2人が、まさかまだ気付いていないとは」
高いヒールもニコラス潰しに参加する。
「映像の包帯女を見たまえ~、我々にとって一番の障壁であるボーイズアンドガールズの、血縁者以外の親密な人間だ」
彼は可動域の小さな手をピコっと動かし、同年代の婦警により戦闘ロボットから引き剥がされ中の顔本を指し示した。
「言わば重要人物。それは我々にとっても同じこと」
そう言い切るとニコラスは目を細め、冷たい床に顔を押し付けたままでほくそ笑んだ。
「なんだ、貴様はそんな単純な事実を言うために勿体振っていたのか」
「顔本でしょ?あの女の情報くらいとっくのとうに掴んでるってば。ニブチンはニコラスの方だったねー」
「シィーット、バーット、グーッド!」
取るに足らない報告を突っぱね、ムキューとチハルはされるがままのお人形を解放してやった。
「では、ミスター牟田に渡してきた一次帰還者リストに顔本も掲載済みということで宜しいかな~?」
「当然だ。実際には生かしておく必要は無いがな」
「あの女はボク達リヴィジョンズの誰の祖先でもないからね。とってもやかましそうだし、適当に尋問したらさっさと溶かしちゃおうよ」
「おおーっと!それはまた無体な」
「だがムキュー、顔本の死は渋谷やアーヴには黙っておこう。架空の人質として大いに機能してもらう予定だからな」
「さっすがチハル、名案だね!」
「いち早くあの女に目を着けたムキュー程ではないさ」
見つめ合っていた姉妹のコミュニケーションボディは、何も知らない顔本の映像を前に高笑い。
「おお怖い怖い」
蚊帳の外に出されても余裕なニコラスは画面越しにターゲットの古代人を眺める。
「悲劇のプアレディよ、年貢の納め時だな」
「どうだムキュー」
スペースの有り余る無機質な広間にて、小柄な姉は複雑に絡み合った無数の光曲線を見上げていた。背後から声を掛けられ、顎を上げて振り向く。
「ダメみたいだよチハル。どうやってもノイズは取り除けない」
「渋谷の街内部までは、やはり自在に映し出せないか」
メイド服姿の少女が宙へ手を掲げるとホログラムの画面が現れた。そこには荒野とビル群がうっすら入り交じった景色が表示される。
「今の渋谷は2388年であると同時に、2017年でもある。完全に確定できるまでは、外から覗ける範囲で我慢だね」
「私とニコラスが出向いた際は、これといった危険因子は見受けられなかった。だが、姑息な手を練られれば厄介であることに変わりはない。念のため監視を強化しておきたいところだが…」
チハル・イスルギは顎に指の背を当て、片方の足へ重心を掛ける。対してムキュー・イスルギは妹の気掛かりを意に介さず、引き続き渋谷周辺のチェックを試みる。
「大丈夫でしょ。古代人は今のテクノロジーについて来れやしないよ。あの女の浅知恵だってそう。どうせアーヴのエージェントやパペットに頼りきりなんだから」
「そのパペットも、もうじき我々が手に入れる」
「ボク達の祖先もね!」
画面の内容が鮮明なものに切り替わったところで、ムキューはそれを複数出現させた。先程よりも距離が開けば、どの画面も過去から転送させた建造物をはっきり映し出すことができる。
「居た居た、パペットマスターのガキ共」
地層の断面が剥き出しとなったとあるポイントにて、戦闘用ロボットのパイロット達は仲睦まじく実地訓練中。ムキューとチハルの命令を理解できず勝手に出撃しているシビリアン達を、火力の高い遠距離用武器で撃破しては達成感を得ている。
「っ!」
チハルは歯を食い縛った。
知能指数は低けれど、体はいびつに膨れ上がってしまっても、彼等は人間。自分と同じ病に犯された同志達がただただ散っていく姿を今は画面越しに見届けるしかない。
「気を抜いていられるのも今の内だ…!」
「あんなアホ面なんかにボク達が引けを取る訳無いよ」
「そうだ。我々はなんとしてもやり遂げてみせる。同胞のために、人類の未来のために」
「おんや~?あのアグレッシブレディは、顔本ではないか」
いつの間にか現れた3人目がしれっと会話に混じる。外見も身長も人形の彼は、彼女達が目にもくれていない画面に注目していた。
「松葉杖に…頭の包帯?からかいに行った時よりケガが増えているな。自由奔放な彼女のことだ、上を押しきってヤンチャでもしたのだろう」
「ニコラス。貴様が実際に接触した古代人は堂嶋大介のみの筈。先日の報告は虚偽だったと?」
「勝手なことしてんじゃないよこのイヌモドキ!」
ふかふかのヌイグルミは2人から見下ろされようが少女の足に踏みつけられようが構わず、マイペースにことを進める。
「まあまあ、ここはこの私の功績に免じてお許しいただきたいところだが?」
「はあー?」
「一体何の話をしている?」
「おやおや!人類の救済者であられるお2人が、まさかまだ気付いていないとは」
高いヒールもニコラス潰しに参加する。
「映像の包帯女を見たまえ~、我々にとって一番の障壁であるボーイズアンドガールズの、血縁者以外の親密な人間だ」
彼は可動域の小さな手をピコっと動かし、同年代の婦警により戦闘ロボットから引き剥がされ中の顔本を指し示した。
「言わば重要人物。それは我々にとっても同じこと」
そう言い切るとニコラスは目を細め、冷たい床に顔を押し付けたままでほくそ笑んだ。
「なんだ、貴様はそんな単純な事実を言うために勿体振っていたのか」
「顔本でしょ?あの女の情報くらいとっくのとうに掴んでるってば。ニブチンはニコラスの方だったねー」
「シィーット、バーット、グーッド!」
取るに足らない報告を突っぱね、ムキューとチハルはされるがままのお人形を解放してやった。
「では、ミスター牟田に渡してきた一次帰還者リストに顔本も掲載済みということで宜しいかな~?」
「当然だ。実際には生かしておく必要は無いがな」
「あの女はボク達リヴィジョンズの誰の祖先でもないからね。とってもやかましそうだし、適当に尋問したらさっさと溶かしちゃおうよ」
「おおーっと!それはまた無体な」
「だがムキュー、顔本の死は渋谷やアーヴには黙っておこう。架空の人質として大いに機能してもらう予定だからな」
「さっすがチハル、名案だね!」
「いち早くあの女に目を着けたムキュー程ではないさ」
見つめ合っていた姉妹のコミュニケーションボディは、何も知らない顔本の映像を前に高笑い。
「おお怖い怖い」
蚊帳の外に出されても余裕なニコラスは画面越しにターゲットの古代人を眺める。
「悲劇のプアレディよ、年貢の納め時だな」