Case☆ 憂・遠・恥
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
すっかりひるんだ犯人は落ちたナイフを拾い走り去ったが、逃げた先で何に遭遇したかはスマートフォンが教えてくれた。
『こいつっ!』
『ぐはっ』
『マリマリ、ナイフ拾って!』
『う、うんっ!』
『黒岩さん!犯人捕まえました!観覧車前です!』
「やるぅ大介くん!」
自称ヒーローの咄嗟な行動により遊園地の平和は守られたが、身勝手な行動を禁じていた黒岩から後に雷が落とされるだろう。おそらく、顔本にも。
「まあ、ウチらのジャブがあってこそのお手柄だがな!改めて、ナイス連携プレー!」
ガイはハイタッチに応えない。顔本は微動だにしないバディからそっぽを向いて話し続ける。
「ガイくんってゲームやらない?敵を横から襲うのってめっちゃ有効打なんだよ。まず避けられないし、正面からやりあうとこっちも怪我」
彼は話を聞いていなかった。聞く気も無かった。
顔本の頬を叩いてきた利き手が、痛みとは違う理由で小さく震えている。
「……」
どうしてあんな危険なことをしたんですか。声に出されずとも、男の子の形相にそう深く刻み込まれている。
「あー……ほら言った通りっしょ?避けらんない。まあこの距離じゃ正面でも横でも当た」
まだ冗談で場を和ませている途中なのに、抱き寄せられて中断せざるを得なくなった。
「良かった……っ、良かった、貴女が無事で…!」
顔本は栗毛色の頭頂部に恐る恐る触れる。指通りの良い艶髪は撫で付ける手に素直に従った。
「ね。さっきなんて言おうとしてたの?」
「さっき…ですか?」
「さっきだよ。ほら、ガイくんは運動も勉強も出来るじゃんっつって、でもそうじゃなくてって…」
「ああ…」
ガイは数分前の盛り上がっていた自分の言動を思い出して耳を赤らめ、次いで己の不甲斐無さにたまらず顔をしかめた。
俺、貴女を守りたいです。そう言おうとしていた。
なのに、結局庇われて、結局危険な目に遭わせて、なんてザマだ。
「演技って分かっちゃいるけどさ、続き気になって」
「演技…?」
「犯人の気配に気付いたから、わざと雰囲気作って煽ったんでしょ?」
「……」
「役者だねぇ~、私最初わかんなかったよ」
「……」
本日、張・ガイ・シュタイナーはいろんな意味で打ちのめされてしまった。
「顔本さーん!」
「やべっ泉海さんの声だ、ガイくん離して」
「……」
何か、何かしら仕返しをしたい気分。
この人はちょっとくらい、俺のことで困れば良いんだ。
「ちょ、おい!?」
「……」
「私警察目指してんだよ?こんなとこ見られたらマズイ!ベタベタすんな未成年!」
ガイはさすがに腕を解いたが、顔本の懸念はまだ残っている。
「顔っ、顔!早く泣き止め!」
「な、泣いてません!」
「でも事後みたいになってるってば!」
「じっ!?」
「キス待ち初恋乙女さながら!ガイ様が一番しちゃいけないやつ!ブロマイド売れちゃうやつ!」
顔本の立て続けの失言により事態は急速に悪化した。
「お手柄ね顔本さん」
「い、泉海さ…いつの間に…!」
顔色のすこぶる悪い泉海の背後で、大方把握してくれている幹夫が苦笑いだけを向けてくる。
「指名手配犯だけじゃなく、未成年男子まで捕まえちゃうなんて。本っ、当、お手柄ね」
「スマホで全部聞いてたでしょ!?誤解の余地無くね!?」
「ええ、一部始終をね。"こんなところ見られたら"、一体何がマズイのかしら…!?」
『顔本。後で話がある…』
「署長まで!」
事件が解決し通話を切っているのか、国家権力の気迫に気圧されたのか、他のメンバーが発言する気配は全く感じられない。
「顔本さん。私達なにも、誤解なんてしていないわ。ただ話を聞かせてほしいだけなの…」
『こいつっ!』
『ぐはっ』
『マリマリ、ナイフ拾って!』
『う、うんっ!』
『黒岩さん!犯人捕まえました!観覧車前です!』
「やるぅ大介くん!」
自称ヒーローの咄嗟な行動により遊園地の平和は守られたが、身勝手な行動を禁じていた黒岩から後に雷が落とされるだろう。おそらく、顔本にも。
「まあ、ウチらのジャブがあってこそのお手柄だがな!改めて、ナイス連携プレー!」
ガイはハイタッチに応えない。顔本は微動だにしないバディからそっぽを向いて話し続ける。
「ガイくんってゲームやらない?敵を横から襲うのってめっちゃ有効打なんだよ。まず避けられないし、正面からやりあうとこっちも怪我」
彼は話を聞いていなかった。聞く気も無かった。
顔本の頬を叩いてきた利き手が、痛みとは違う理由で小さく震えている。
「……」
どうしてあんな危険なことをしたんですか。声に出されずとも、男の子の形相にそう深く刻み込まれている。
「あー……ほら言った通りっしょ?避けらんない。まあこの距離じゃ正面でも横でも当た」
まだ冗談で場を和ませている途中なのに、抱き寄せられて中断せざるを得なくなった。
「良かった……っ、良かった、貴女が無事で…!」
顔本は栗毛色の頭頂部に恐る恐る触れる。指通りの良い艶髪は撫で付ける手に素直に従った。
「ね。さっきなんて言おうとしてたの?」
「さっき…ですか?」
「さっきだよ。ほら、ガイくんは運動も勉強も出来るじゃんっつって、でもそうじゃなくてって…」
「ああ…」
ガイは数分前の盛り上がっていた自分の言動を思い出して耳を赤らめ、次いで己の不甲斐無さにたまらず顔をしかめた。
俺、貴女を守りたいです。そう言おうとしていた。
なのに、結局庇われて、結局危険な目に遭わせて、なんてザマだ。
「演技って分かっちゃいるけどさ、続き気になって」
「演技…?」
「犯人の気配に気付いたから、わざと雰囲気作って煽ったんでしょ?」
「……」
「役者だねぇ~、私最初わかんなかったよ」
「……」
本日、張・ガイ・シュタイナーはいろんな意味で打ちのめされてしまった。
「顔本さーん!」
「やべっ泉海さんの声だ、ガイくん離して」
「……」
何か、何かしら仕返しをしたい気分。
この人はちょっとくらい、俺のことで困れば良いんだ。
「ちょ、おい!?」
「……」
「私警察目指してんだよ?こんなとこ見られたらマズイ!ベタベタすんな未成年!」
ガイはさすがに腕を解いたが、顔本の懸念はまだ残っている。
「顔っ、顔!早く泣き止め!」
「な、泣いてません!」
「でも事後みたいになってるってば!」
「じっ!?」
「キス待ち初恋乙女さながら!ガイ様が一番しちゃいけないやつ!ブロマイド売れちゃうやつ!」
顔本の立て続けの失言により事態は急速に悪化した。
「お手柄ね顔本さん」
「い、泉海さ…いつの間に…!」
顔色のすこぶる悪い泉海の背後で、大方把握してくれている幹夫が苦笑いだけを向けてくる。
「指名手配犯だけじゃなく、未成年男子まで捕まえちゃうなんて。本っ、当、お手柄ね」
「スマホで全部聞いてたでしょ!?誤解の余地無くね!?」
「ええ、一部始終をね。"こんなところ見られたら"、一体何がマズイのかしら…!?」
『顔本。後で話がある…』
「署長まで!」
事件が解決し通話を切っているのか、国家権力の気迫に気圧されたのか、他のメンバーが発言する気配は全く感じられない。
「顔本さん。私達なにも、誤解なんてしていないわ。ただ話を聞かせてほしいだけなの…」