Case☆ 憂・遠・恥
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「こちらリトル黒岩&相談窓口係班。ジェットコースターエリア異常ナシ。ドーゾォ」
『顔本さん、やっぱり楽しんでるでしょ』
「バレた?」
グループ通話で頻繁に発言しているのは顔本と大介。次いで、彼等に受け答えする形で泉海と慶作。
『マリマリ、観覧車乗ろうぜ』
『えっ!?』
『高い所からなら不審者見つけやすいだろ』
『あ、そう、そうだよねっ…』
各組の動向が互いに丸聞こえである。
『ふ、2人きりで乗るのって、初めてかも…』
『そうだな。マリマリは西側を頼んだ!』
『あ、はい…』
情報が音声だけでも、愛鈴の意気消沈ぶりが全員の目に浮かぶ。
「おうおう微笑ましいこった。おんや~?慶作くーん?息してるー?へっへっへ~」
「あの、顔本さん」
いつにも増して憂いを帯びたガイの声が、顔本をトランシーバー代わりのスマートフォンから引き離す。
「何?」
「堂嶋さんじゃなくて良かったんですか?」
「はい?」
「ペアの相手ですよ。ほら、その……先生の方が、親密だから…」
「……」
顔本は高身長な男の子へ無言でずいっと近寄り、下から覗き込んだ。
「なっ!?」
「意外と恋愛脳?」
「は!?だっ、誰が!?」
目一杯に戸惑うガイを無視し、顔本は2~3歩だけ歩を進めた。
「囮捜査なんだから何かあった時のため、ペアのどっちかは強くなきゃ。泉海さんは現役警官。非戦闘員の堂嶋先生を安心して任せられる」
「……顔本さんも、警官ですよね」
「ゆくゆくはね。まだ見習い中だから、ここは冷静沈着運動神経抜群なガイ様を頼りにしてるよ」
「……」
口先ではこう言っているが、この人はいざという時自分を頼りにしてくれなさそうな気がする。正義感やら義理やらの下、独りで突っ走って、独りで怪我をして。
「顔本さんは…」
大介から聞いた話だが、渋谷時空災害初日、彼女が重傷を負ったのはその身ひとつで人々からシビリアンを遠ざける為だったとか。
「なんかゴメンねー。流れとはいえ、5人水入らずのお出掛けが私とのパトロールになっちゃってさー」
放っておけば、また自己犠牲に走るのではないか?
「あ、むしろ泉海さんとペアのが良かった?」
「顔本さん。顔本さんは、おいくつなんですか」
アトラクション間の、人気の無いカラフルな道。遥か頭上より、ジェットコースターがレーンを揺らす轟音とそれに掻き消され気味の悲鳴が届く。
「どストレートに聞くねえ。しかも唐突」
「俺は今、17です」
彼は、S.D.S.の中でも精神年齢が断トツ低い堂嶋大介とは違い、また、浅野慶作のように冗談を容易に挟む子でもない。
顔本は真剣な態度を正面から受け止めることにする。
「どうすれば、貴女に追い付けますか」
『泉海さんっ、そんなに走ったら危ないですよ!』
手元の通話アプリから外野達の騒ぎ声が発せられているが、2人の耳には入っていない。
「別に…焦らなくても、ガイくんは私くらいの人間、とっくのとうに追い越してると思うよ。運動も頭脳も考え方も」
「そうじゃなくて」
ガイは熱い眼差しと共に一歩踏み出した。
「そうじゃ、なくて…」
また一歩、顔本へ近付く。
「俺……あな」
「もう止めろ!」
意を決しての発言は、第三者の登場により遮られてしまった。
「どいつもこいつも見せつけやがって…!」
上下共に暗い色味に抑えた装いの、中肉中背な青年。黒いニット帽と大きめのマスクとの組み合わせは、たまに有名人がする下手な変装を彷彿とさせる。
「えっと、はじめまして。どなたー?」
「顔本さんっ、この男…!」
「わかってる」
ガイは敵意を剥き出しに同年代の男を睨み付ける。顔本は緩い表情を崩さず、相手から目を離さない。
「アレだろ?そうなんだろ?お前等も俺のことバカにしてんだろ?畜生共が、その気にさせといて…からかって……クソッ、クソが!結局はクソなんだよ!!」
涙目の男子はナイフを構えた。ガイは盾になるようにして顔本の前に立つ。
「おうおう、そうやって守るモンがあるヤツは真っ当だよヒーローだよ。そういうヤツは……死んだって格好いいよなぁ!?」
「間違えてんじゃないよ!!」
犯人が走り出す前に顔本は大声で彼の足を停止させる。
「何があったか知らないけど、アンタを実際バカにしたのは誰!?」
「は…はあ?」
「顔本さん、余計な刺激を与えては…!」
現に襲いかかろうとしてきた指名手配犯に対して、今更刺激の追加も何もないが、ガイは小声で懸命に顔本を止めようとする。無論、彼女は止まらない。
「その気にさせたのは誰?盛り上げたのは誰?すり寄ってきたのは?男?女?アンタをハメた黒幕とか嘲笑ってくる通りすがりとかどーでも良いね!アンタに直接近付いてきたのは!?発端は!?女だろうが!!」
そう言い切るとガイを横へ強く退け、顔本は仁王立ちで相手を見据える。
「う…うるさい!うるさいうるさいっ!うわあぁぁああ!」
正面の女目掛けて、犯人は腰が引けたままナイフを構え突進してきた。
しかし、彼の武器は煽ってきた初対面の女へ届かず終い。ガイが横から蹴り飛ばし、男は地べたへ倒れこんだ。
「おおっ、ナイスプレー!」
『顔本さん、やっぱり楽しんでるでしょ』
「バレた?」
グループ通話で頻繁に発言しているのは顔本と大介。次いで、彼等に受け答えする形で泉海と慶作。
『マリマリ、観覧車乗ろうぜ』
『えっ!?』
『高い所からなら不審者見つけやすいだろ』
『あ、そう、そうだよねっ…』
各組の動向が互いに丸聞こえである。
『ふ、2人きりで乗るのって、初めてかも…』
『そうだな。マリマリは西側を頼んだ!』
『あ、はい…』
情報が音声だけでも、愛鈴の意気消沈ぶりが全員の目に浮かぶ。
「おうおう微笑ましいこった。おんや~?慶作くーん?息してるー?へっへっへ~」
「あの、顔本さん」
いつにも増して憂いを帯びたガイの声が、顔本をトランシーバー代わりのスマートフォンから引き離す。
「何?」
「堂嶋さんじゃなくて良かったんですか?」
「はい?」
「ペアの相手ですよ。ほら、その……先生の方が、親密だから…」
「……」
顔本は高身長な男の子へ無言でずいっと近寄り、下から覗き込んだ。
「なっ!?」
「意外と恋愛脳?」
「は!?だっ、誰が!?」
目一杯に戸惑うガイを無視し、顔本は2~3歩だけ歩を進めた。
「囮捜査なんだから何かあった時のため、ペアのどっちかは強くなきゃ。泉海さんは現役警官。非戦闘員の堂嶋先生を安心して任せられる」
「……顔本さんも、警官ですよね」
「ゆくゆくはね。まだ見習い中だから、ここは冷静沈着運動神経抜群なガイ様を頼りにしてるよ」
「……」
口先ではこう言っているが、この人はいざという時自分を頼りにしてくれなさそうな気がする。正義感やら義理やらの下、独りで突っ走って、独りで怪我をして。
「顔本さんは…」
大介から聞いた話だが、渋谷時空災害初日、彼女が重傷を負ったのはその身ひとつで人々からシビリアンを遠ざける為だったとか。
「なんかゴメンねー。流れとはいえ、5人水入らずのお出掛けが私とのパトロールになっちゃってさー」
放っておけば、また自己犠牲に走るのではないか?
「あ、むしろ泉海さんとペアのが良かった?」
「顔本さん。顔本さんは、おいくつなんですか」
アトラクション間の、人気の無いカラフルな道。遥か頭上より、ジェットコースターがレーンを揺らす轟音とそれに掻き消され気味の悲鳴が届く。
「どストレートに聞くねえ。しかも唐突」
「俺は今、17です」
彼は、S.D.S.の中でも精神年齢が断トツ低い堂嶋大介とは違い、また、浅野慶作のように冗談を容易に挟む子でもない。
顔本は真剣な態度を正面から受け止めることにする。
「どうすれば、貴女に追い付けますか」
『泉海さんっ、そんなに走ったら危ないですよ!』
手元の通話アプリから外野達の騒ぎ声が発せられているが、2人の耳には入っていない。
「別に…焦らなくても、ガイくんは私くらいの人間、とっくのとうに追い越してると思うよ。運動も頭脳も考え方も」
「そうじゃなくて」
ガイは熱い眼差しと共に一歩踏み出した。
「そうじゃ、なくて…」
また一歩、顔本へ近付く。
「俺……あな」
「もう止めろ!」
意を決しての発言は、第三者の登場により遮られてしまった。
「どいつもこいつも見せつけやがって…!」
上下共に暗い色味に抑えた装いの、中肉中背な青年。黒いニット帽と大きめのマスクとの組み合わせは、たまに有名人がする下手な変装を彷彿とさせる。
「えっと、はじめまして。どなたー?」
「顔本さんっ、この男…!」
「わかってる」
ガイは敵意を剥き出しに同年代の男を睨み付ける。顔本は緩い表情を崩さず、相手から目を離さない。
「アレだろ?そうなんだろ?お前等も俺のことバカにしてんだろ?畜生共が、その気にさせといて…からかって……クソッ、クソが!結局はクソなんだよ!!」
涙目の男子はナイフを構えた。ガイは盾になるようにして顔本の前に立つ。
「おうおう、そうやって守るモンがあるヤツは真っ当だよヒーローだよ。そういうヤツは……死んだって格好いいよなぁ!?」
「間違えてんじゃないよ!!」
犯人が走り出す前に顔本は大声で彼の足を停止させる。
「何があったか知らないけど、アンタを実際バカにしたのは誰!?」
「は…はあ?」
「顔本さん、余計な刺激を与えては…!」
現に襲いかかろうとしてきた指名手配犯に対して、今更刺激の追加も何もないが、ガイは小声で懸命に顔本を止めようとする。無論、彼女は止まらない。
「その気にさせたのは誰?盛り上げたのは誰?すり寄ってきたのは?男?女?アンタをハメた黒幕とか嘲笑ってくる通りすがりとかどーでも良いね!アンタに直接近付いてきたのは!?発端は!?女だろうが!!」
そう言い切るとガイを横へ強く退け、顔本は仁王立ちで相手を見据える。
「う…うるさい!うるさいうるさいっ!うわあぁぁああ!」
正面の女目掛けて、犯人は腰が引けたままナイフを構え突進してきた。
しかし、彼の武器は煽ってきた初対面の女へ届かず終い。ガイが横から蹴り飛ばし、男は地べたへ倒れこんだ。
「おおっ、ナイスプレー!」