Case☆ 憂・遠・恥
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
水色の絵の具でそのまま染めたような快晴。気温・湿度共に良好。絶好のレジャー日和だ。
「……どうしてこうなるの」
目の前の光景に脱力した泉海の肩から彼女の鞄がずり落ちた。
「アレじゃん?運命ってヤツじゃん?」
「!顔本さんもそう思いますか!」
目を輝かせた大介以外は落胆する泉海に気を遣い、この偶然を素直に喜べないでいた。今、遊園地のゲートを通過してすぐの出店が立ち並ぶ休憩スペースにて、計10名の顔見知りが鉢合わせている。
「おじさんはなんで来てるの?」
「いやぁ、ある人から誘われて一緒に入場したところまでは良かったんだけど…」
「デートだっ」
「やっぱり大介のおじさんモテるんだ…!」
大介の次はルウと愛鈴がはしゃぎだした。
「出たよタラシが。んで、その医者キラーは?今トイレ?」
「それが、その……彼女の中でだいぶ盛り上がっていたみたいで……」
堂嶋幹夫は柔らかな笑顔を崩さず、自分からは言いにくい内容を口ごもる。
「?アトラクション行っちゃったの?先生置いてかれたかぁ~ドンマイ」
「……まさか、ウソでしょ?もうココで!?」
「告白されちゃったんですか…!?」
顔本の決め付けではなくルウ達の予想に、若手医師は苦笑いで頷き肯定した。つい今しがた発生した恋バナに女子高生はしっかりと食い付く。
「まだ入口じゃん。さすがにフラれるっていうか、無理があるでしょ!」
「あの、お互い、何も悪くないと思いますっ、タイミングがおかしかっただけで…!」
「ありがとうね。でも、女性を泣かせてしまったことは事実だから……せめて先に帰っていただいて、自分も今から出ようとしていたところに大介達が来たんだ」
顔本と泉海は彼等のやりとりを遠巻きに眺めていた。
「最近のJKってエスパー?なんで先生が告られたってわかったんだよ」
「人並みに関心があればわかるものなんですっ。ていうか堂嶋さんまで居るなんて…」
元S.D.S.メンバーも堂嶋幹夫も、決して嫌いな相手ではない。渋谷時空災害を共に乗り切った、かけがえのない仲間だ。だが顔本との時間を楽しみにしていた泉海にとっては絶対に避けるべき相手であった。
「あとわかんないのは署長と牟田ちゃん。遊園地なんて似ても似つかないキャラっしょ」
「悪かったですね娯楽施設にとっての異物で。私は家族サービスという名のアッシーですよ」
辺りを見渡せば、パラソル付きの食事スペースや植え込み脇のベンチで、牟田と似たような境遇の中年男性等が暇を潰している。ほんのり哀愁を漂わせながら。
「こりゃ失礼」
「またしばらくしたら長時間の運転を課せられるんです。つかの間の休憩の邪魔をしないでいただきたいものですね」
「へいへいお疲れちゃんごゆっくり。で、署長は?」
肩を無遠慮に揉んでくる手を振り払う労力も惜しいのか、牟田はされるがままでフランクフルトを頬張った。
「黒岩さんもご家族と来たんですか?」
「黒岩さんの家族サービスシーンなんてめっちゃレア~」
白羽の矢、とまで大袈裟なものではないが、人様の恋愛に興味をそそられない男子達も黒岩に注目する。
「俺は……俺も、そんなところだ」
「ええ?黒岩さん、貴方独身でしょう」
運転手役故に飲酒が許されない身の牟田が、メロンソーダのストローから唇を離しながら嘘をあっさり暴く。
「怪しい…」
「……」
顔本は探偵のノリで顎に手を添え、容疑者へ詰め寄った。
「さては署長……極秘で捜査に来てるな!?」
何も言い返さなかった黒岩の鼻先へ、顔本は力強く指を差した。
「!?」
「いよっ、私服警官黒岩警察署長!いや無いか。こういうのって泉海さんとか下々の者が出動する筈。ドンは現場に来ないのが定石」
「そうね。私も同僚も、黒岩さんが今日動くなんて知らされていないし……って、何よその言い方!」
泉海は連れの両耳を引っ張って上司の前から退場させようとする。
「もうっ。黒岩さん、顔本さんが済みませんでした。ほらこっち!」
「いててっ、アレでしょっ?指名手配犯がこの辺りへ逃げてきたって情報が警察上層部限定で共有された。しかーし、その翌日は渋谷警察署長が前もって決めていた休暇日。どうしても気になる署長は個人的に犯人の足取りを追い、今に至る…とか!」
「刑事ドラマの見過ぎよ」
「そ、の通り、だ。俺は、俺は遊園地が好きでここに来ている。捜査など関係無い。適当なことを言うな」
泉海はあわよくばこのまま顔本を連れ出してしまおうと試みたが、どもる黒岩にこの人が反応しない訳が無かった。
「ガチかよ当てずっぽだったのに。よっしゃ洗いざらい吐けーっ!」
この場はいつの間にか顔本と黒岩の絡みを見守る会と化していた。
「泉海さん、顔本さん酔っぱらってるの?」
「あの人はシラフでアレよ…みんなもよく知ってるでしょ…」
とうとう泉海は2人きりのデート計画を諦めた。
「……どうしてこうなるの」
目の前の光景に脱力した泉海の肩から彼女の鞄がずり落ちた。
「アレじゃん?運命ってヤツじゃん?」
「!顔本さんもそう思いますか!」
目を輝かせた大介以外は落胆する泉海に気を遣い、この偶然を素直に喜べないでいた。今、遊園地のゲートを通過してすぐの出店が立ち並ぶ休憩スペースにて、計10名の顔見知りが鉢合わせている。
「おじさんはなんで来てるの?」
「いやぁ、ある人から誘われて一緒に入場したところまでは良かったんだけど…」
「デートだっ」
「やっぱり大介のおじさんモテるんだ…!」
大介の次はルウと愛鈴がはしゃぎだした。
「出たよタラシが。んで、その医者キラーは?今トイレ?」
「それが、その……彼女の中でだいぶ盛り上がっていたみたいで……」
堂嶋幹夫は柔らかな笑顔を崩さず、自分からは言いにくい内容を口ごもる。
「?アトラクション行っちゃったの?先生置いてかれたかぁ~ドンマイ」
「……まさか、ウソでしょ?もうココで!?」
「告白されちゃったんですか…!?」
顔本の決め付けではなくルウ達の予想に、若手医師は苦笑いで頷き肯定した。つい今しがた発生した恋バナに女子高生はしっかりと食い付く。
「まだ入口じゃん。さすがにフラれるっていうか、無理があるでしょ!」
「あの、お互い、何も悪くないと思いますっ、タイミングがおかしかっただけで…!」
「ありがとうね。でも、女性を泣かせてしまったことは事実だから……せめて先に帰っていただいて、自分も今から出ようとしていたところに大介達が来たんだ」
顔本と泉海は彼等のやりとりを遠巻きに眺めていた。
「最近のJKってエスパー?なんで先生が告られたってわかったんだよ」
「人並みに関心があればわかるものなんですっ。ていうか堂嶋さんまで居るなんて…」
元S.D.S.メンバーも堂嶋幹夫も、決して嫌いな相手ではない。渋谷時空災害を共に乗り切った、かけがえのない仲間だ。だが顔本との時間を楽しみにしていた泉海にとっては絶対に避けるべき相手であった。
「あとわかんないのは署長と牟田ちゃん。遊園地なんて似ても似つかないキャラっしょ」
「悪かったですね娯楽施設にとっての異物で。私は家族サービスという名のアッシーですよ」
辺りを見渡せば、パラソル付きの食事スペースや植え込み脇のベンチで、牟田と似たような境遇の中年男性等が暇を潰している。ほんのり哀愁を漂わせながら。
「こりゃ失礼」
「またしばらくしたら長時間の運転を課せられるんです。つかの間の休憩の邪魔をしないでいただきたいものですね」
「へいへいお疲れちゃんごゆっくり。で、署長は?」
肩を無遠慮に揉んでくる手を振り払う労力も惜しいのか、牟田はされるがままでフランクフルトを頬張った。
「黒岩さんもご家族と来たんですか?」
「黒岩さんの家族サービスシーンなんてめっちゃレア~」
白羽の矢、とまで大袈裟なものではないが、人様の恋愛に興味をそそられない男子達も黒岩に注目する。
「俺は……俺も、そんなところだ」
「ええ?黒岩さん、貴方独身でしょう」
運転手役故に飲酒が許されない身の牟田が、メロンソーダのストローから唇を離しながら嘘をあっさり暴く。
「怪しい…」
「……」
顔本は探偵のノリで顎に手を添え、容疑者へ詰め寄った。
「さては署長……極秘で捜査に来てるな!?」
何も言い返さなかった黒岩の鼻先へ、顔本は力強く指を差した。
「!?」
「いよっ、私服警官黒岩警察署長!いや無いか。こういうのって泉海さんとか下々の者が出動する筈。ドンは現場に来ないのが定石」
「そうね。私も同僚も、黒岩さんが今日動くなんて知らされていないし……って、何よその言い方!」
泉海は連れの両耳を引っ張って上司の前から退場させようとする。
「もうっ。黒岩さん、顔本さんが済みませんでした。ほらこっち!」
「いててっ、アレでしょっ?指名手配犯がこの辺りへ逃げてきたって情報が警察上層部限定で共有された。しかーし、その翌日は渋谷警察署長が前もって決めていた休暇日。どうしても気になる署長は個人的に犯人の足取りを追い、今に至る…とか!」
「刑事ドラマの見過ぎよ」
「そ、の通り、だ。俺は、俺は遊園地が好きでここに来ている。捜査など関係無い。適当なことを言うな」
泉海はあわよくばこのまま顔本を連れ出してしまおうと試みたが、どもる黒岩にこの人が反応しない訳が無かった。
「ガチかよ当てずっぽだったのに。よっしゃ洗いざらい吐けーっ!」
この場はいつの間にか顔本と黒岩の絡みを見守る会と化していた。
「泉海さん、顔本さん酔っぱらってるの?」
「あの人はシラフでアレよ…みんなもよく知ってるでしょ…」
とうとう泉海は2人きりのデート計画を諦めた。