Case② はじめまして
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顔本がこぼした言葉は全く違う意図として勝手に拾い上げられる。
「そりゃねぇッスよオネーサン!」
「風呂ガマンしてんのは皆イーブンじゃん?」
「あいや、体臭のことじゃなくて」
正面を向くと、いわゆるストリートファッションをバッチリ決めた男達がこちらを見てヘラヘラしている。
「まあこっちの話。それよりいらっしゃい!どんなご相談?」
せっかくここを頼って足を運んでくれたのだ。暇をしていて精神面にかなり余力のある顔本は半笑いの若者を温かく迎え入れる。
「オレら?被災者ってヤツ?ドコも停電だし?しかも休講?ゼミも無いし?ぶっちゃけヒマで?」
「……だから?」
要領を得ない話し方に沸々と怒りが込み上げてくるが、彼は貴重かもしれない意見を打ち上げにきた相談者。顔本窓口係はカウンターに肘を突き、拳で口元をぎゅっと押さえる。
「ピアノ無いッスか!?」
もう1人のスカジャン男はこれまでの諸々をすっ飛ばし、単刀直入すぎる質問をぶつけてきた。
「ピアノ?」
「いやケイサツって?迷子集うじゃん?」
「集う……斬新だね」
「迷子あやすために?オモチャのピアノとか?ハーモニカとか?あると思って?んで?チョット借りに来たワケ」
「はぁ」
顔本の冷めた態度を余所に、終始楽しそうな彼らは更に盛り上がっていく。
「コイツマジチョーテンサイじゃね!?」
「なるほど……音楽を楽しみたいってことね。この非常時に」
「フン!こんな時に…」
「はぁ~あ、良いわね若いって!」
若者の次に並んでいるお年寄り集団は吐き捨てるように呟いたが、人生の先輩があらわにした嫌悪感を顔本は別段尊重しない。
「めっちゃ良いじゃんそれ!」
「オネーサンマジ柔軟!」
「え、なに、2人音楽できんの!?カッコ良いじゃん!」
「オレ史上今日が初っつーの?デビューっつーの?」
「へーっ、子供用のピアノで!?……別にそこまでカッコ良くないな」
「マジ手厳しーっ!」
「いやっ、絵面ね!あくまで絵面の話ね!心意気は超痺れるよ?」
無邪気に目を輝かせる3人とそうでもない大人達との温度差は広がっていく。
「でもごめん。楽器までは守備範囲外だわ。そこらのデパート当たってもらうしかないかな」
「全然オッケー。話聞いてくれて?マジ感謝だし?ノッてきたからボイパしながら帰るわ」
「うわアカペラがあったか!ピアノ要らねー!マジ節穴じゃね!?」
「……それ言うなら盲点じゃね?」
小声の訂正は全く届いていないようで、警察署1階フロアをひと騒がせした男達は至極楽しそうに出て行った。
「根明だなぁ。見習いたいよ」
十二分にエネルギーを貰った顔本は昼休憩を先延ばしし、もうひと踏ん張りしようと気合いを入れる。
「お待たせしましたー、次っ!」
「儂らはあんたがくたばっていないか確認しに来てやったんだよ。今日も元気そうで何より」
そう発言した男性を中心に、カウンターは年配者によって囲まれる。
「ありがとうおじいちゃん。皆さんも?」
「怪我が辛いのに私達のために頑張ってんだってね」
「無理しちゃダメよ」
ここに立ってから初めて優しい言葉をかけられ、相談窓口係は思わず照れ隠しに走る。
「いやいや、自分のやれることをやりたい欲が強いってだけで」
「十分偉いわよぉ」
「さっきみたいな話もわざわざ聞いてやって、ねぇ~?」
「それに比べて、日本の警察が聞いて呆れるわい!」
リーダー格からの悪口を聞いた途端、緩みきっていた顔本の表情が徐々に引き締まる。
「ちょっと父さんっ、お向かいさん達に毒されてるわよ」
「あの人達ホント、極端よねぇ」
今一番欲しい情報を得るチャンスだ。美味しい話が聞ける期待を胸に、顔本はカウンターから身を乗り出した。
「ね、極端って?」
「そりゃねぇッスよオネーサン!」
「風呂ガマンしてんのは皆イーブンじゃん?」
「あいや、体臭のことじゃなくて」
正面を向くと、いわゆるストリートファッションをバッチリ決めた男達がこちらを見てヘラヘラしている。
「まあこっちの話。それよりいらっしゃい!どんなご相談?」
せっかくここを頼って足を運んでくれたのだ。暇をしていて精神面にかなり余力のある顔本は半笑いの若者を温かく迎え入れる。
「オレら?被災者ってヤツ?ドコも停電だし?しかも休講?ゼミも無いし?ぶっちゃけヒマで?」
「……だから?」
要領を得ない話し方に沸々と怒りが込み上げてくるが、彼は貴重かもしれない意見を打ち上げにきた相談者。顔本窓口係はカウンターに肘を突き、拳で口元をぎゅっと押さえる。
「ピアノ無いッスか!?」
もう1人のスカジャン男はこれまでの諸々をすっ飛ばし、単刀直入すぎる質問をぶつけてきた。
「ピアノ?」
「いやケイサツって?迷子集うじゃん?」
「集う……斬新だね」
「迷子あやすために?オモチャのピアノとか?ハーモニカとか?あると思って?んで?チョット借りに来たワケ」
「はぁ」
顔本の冷めた態度を余所に、終始楽しそうな彼らは更に盛り上がっていく。
「コイツマジチョーテンサイじゃね!?」
「なるほど……音楽を楽しみたいってことね。この非常時に」
「フン!こんな時に…」
「はぁ~あ、良いわね若いって!」
若者の次に並んでいるお年寄り集団は吐き捨てるように呟いたが、人生の先輩があらわにした嫌悪感を顔本は別段尊重しない。
「めっちゃ良いじゃんそれ!」
「オネーサンマジ柔軟!」
「え、なに、2人音楽できんの!?カッコ良いじゃん!」
「オレ史上今日が初っつーの?デビューっつーの?」
「へーっ、子供用のピアノで!?……別にそこまでカッコ良くないな」
「マジ手厳しーっ!」
「いやっ、絵面ね!あくまで絵面の話ね!心意気は超痺れるよ?」
無邪気に目を輝かせる3人とそうでもない大人達との温度差は広がっていく。
「でもごめん。楽器までは守備範囲外だわ。そこらのデパート当たってもらうしかないかな」
「全然オッケー。話聞いてくれて?マジ感謝だし?ノッてきたからボイパしながら帰るわ」
「うわアカペラがあったか!ピアノ要らねー!マジ節穴じゃね!?」
「……それ言うなら盲点じゃね?」
小声の訂正は全く届いていないようで、警察署1階フロアをひと騒がせした男達は至極楽しそうに出て行った。
「根明だなぁ。見習いたいよ」
十二分にエネルギーを貰った顔本は昼休憩を先延ばしし、もうひと踏ん張りしようと気合いを入れる。
「お待たせしましたー、次っ!」
「儂らはあんたがくたばっていないか確認しに来てやったんだよ。今日も元気そうで何より」
そう発言した男性を中心に、カウンターは年配者によって囲まれる。
「ありがとうおじいちゃん。皆さんも?」
「怪我が辛いのに私達のために頑張ってんだってね」
「無理しちゃダメよ」
ここに立ってから初めて優しい言葉をかけられ、相談窓口係は思わず照れ隠しに走る。
「いやいや、自分のやれることをやりたい欲が強いってだけで」
「十分偉いわよぉ」
「さっきみたいな話もわざわざ聞いてやって、ねぇ~?」
「それに比べて、日本の警察が聞いて呆れるわい!」
リーダー格からの悪口を聞いた途端、緩みきっていた顔本の表情が徐々に引き締まる。
「ちょっと父さんっ、お向かいさん達に毒されてるわよ」
「あの人達ホント、極端よねぇ」
今一番欲しい情報を得るチャンスだ。美味しい話が聞ける期待を胸に、顔本はカウンターから身を乗り出した。
「ね、極端って?」