Case② はじめまして
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日。
「言い過ぎた、昨日……」
足元が悪くない天気にも関わらず、渋谷警察署を訪れる相談者数はぐっと減ってしまった。
「やっちまったか?自分…」
反して自分の容態は今のところ文句無し。背中を中心に支配する痛みは強烈ではあるが、笑顔を作れる程度には治まった気がする。
もしくは、慣れただけか。
だとしても、一夜明けてまだ生きていられている。その事実が大きな自信に繋がった。
「んん、匂うぞ」
激痛に夢中だった昨日とは異なり、嗅覚や食欲が正常に働き始めたことも顔本に希望を与えていた。
「この匂いのやつ私も欲しい、なー…」
偶然にも、周囲には人っ子ひとり居ない状況。昼時なので、警察官も休憩もしくは交代の時間帯なのだろう。
「安静第一ってどこまでだ?泉海巡査長さーん」
軽く呼んでも、多忙な彼女は当然ながら現れない。何かの係も兼任しているとか言っていた巡査長を、わざわざトランシーバーで呼びつけるのは気が引ける。
「自分で貰いに行って良いかなっ、て!?いたたたた…!」
やはり誰かに御使いを頼むか。
些細なことで困り果てていたところ、丁度良いタイミングで男性警官数人が署に帰ってきた。
「いつつ……っ!お疲れさまです!あの…」
顔本はこの上なく明るく元気に挨拶したつもりだが、相手方は軽い会釈のみで、無言のまま行ってしまった。
「?」
声に反応し目と目が合ったのだから、話の続きがありそうな態度にも気付いている筈。
また別の警官達が通りかかる。
「お疲れさまでーす!」
笑顔も虚しく、どの先輩方もそそくさと素通りしていく。
「あ、えっと…どうも、どうも…へへ……って、挨拶くらい返してくれても良いじゃん!立派な警察官ならさぁ!」
反骨精神を愛想笑いで隠しきれなくなった顔本に対し、やっとグループの後ろ端が口を開いた。
「あんた程疲れてないし立派でもないよ、私達」
完全に突き放す言い方だが、その表情にはどこか悲しさも感じられた。
「……」
どうやら自分は傷付けた側の人間らしい。かと言って弁解するにしても、そもそもの原因を知る由もないため、何も浮かばない。
気まずいスペースを通り過ぎた彼らは仲間内のお喋りを再開した。
「それ俺も言われた。どーせ疲れてないんだろって」
「私のは、ムカつくからって怪我人いじめんな」
「同じジイサン達かな」
「だろうな。他に目立つ集団居ないし」
「感謝しろとは言わないけどさ~、やんなってきちゃうわ」
警察ごっこ2日目を半分終えた顔本は、余計なストレスを抱える羽目になった彼らの背中をじっと見送った。
「……臭うぞ」
「言い過ぎた、昨日……」
足元が悪くない天気にも関わらず、渋谷警察署を訪れる相談者数はぐっと減ってしまった。
「やっちまったか?自分…」
反して自分の容態は今のところ文句無し。背中を中心に支配する痛みは強烈ではあるが、笑顔を作れる程度には治まった気がする。
もしくは、慣れただけか。
だとしても、一夜明けてまだ生きていられている。その事実が大きな自信に繋がった。
「んん、匂うぞ」
激痛に夢中だった昨日とは異なり、嗅覚や食欲が正常に働き始めたことも顔本に希望を与えていた。
「この匂いのやつ私も欲しい、なー…」
偶然にも、周囲には人っ子ひとり居ない状況。昼時なので、警察官も休憩もしくは交代の時間帯なのだろう。
「安静第一ってどこまでだ?泉海巡査長さーん」
軽く呼んでも、多忙な彼女は当然ながら現れない。何かの係も兼任しているとか言っていた巡査長を、わざわざトランシーバーで呼びつけるのは気が引ける。
「自分で貰いに行って良いかなっ、て!?いたたたた…!」
やはり誰かに御使いを頼むか。
些細なことで困り果てていたところ、丁度良いタイミングで男性警官数人が署に帰ってきた。
「いつつ……っ!お疲れさまです!あの…」
顔本はこの上なく明るく元気に挨拶したつもりだが、相手方は軽い会釈のみで、無言のまま行ってしまった。
「?」
声に反応し目と目が合ったのだから、話の続きがありそうな態度にも気付いている筈。
また別の警官達が通りかかる。
「お疲れさまでーす!」
笑顔も虚しく、どの先輩方もそそくさと素通りしていく。
「あ、えっと…どうも、どうも…へへ……って、挨拶くらい返してくれても良いじゃん!立派な警察官ならさぁ!」
反骨精神を愛想笑いで隠しきれなくなった顔本に対し、やっとグループの後ろ端が口を開いた。
「あんた程疲れてないし立派でもないよ、私達」
完全に突き放す言い方だが、その表情にはどこか悲しさも感じられた。
「……」
どうやら自分は傷付けた側の人間らしい。かと言って弁解するにしても、そもそもの原因を知る由もないため、何も浮かばない。
気まずいスペースを通り過ぎた彼らは仲間内のお喋りを再開した。
「それ俺も言われた。どーせ疲れてないんだろって」
「私のは、ムカつくからって怪我人いじめんな」
「同じジイサン達かな」
「だろうな。他に目立つ集団居ないし」
「感謝しろとは言わないけどさ~、やんなってきちゃうわ」
警察ごっこ2日目を半分終えた顔本は、余計なストレスを抱える羽目になった彼らの背中をじっと見送った。
「……臭うぞ」