Case⑥ 希望観測の末
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いざとなれば途中からエレベーターに頼れば良いやと、気軽に始めた警察署登頂計画。全14階の非常用階段を前にして、運動不足かつ怪我を負っている現代人の心は折れかけていた。
「し、死にそ……」
どこまで昇っても階数を示す数字以外、変わり映えのしない閉鎖的空間。顔本は元の廊下へ戻る扉をじっと見つめた。その先には、ボタン1つで最上階まで送り届けてくれる文明の機器がある。
「だめだっ。警察の、みんなの電気っ!」
結局は意地が誘惑に打ち勝った。
渋谷警察署の屋上に足を踏み入れた時には、起床時刻から小一時間経過していた。外も行動するには支障の無い明るさなので懐中電灯は切っておく。
「うおっ、風強っ…」
地上とは流れの強さが違う空気を吸うと心が軽くなり、溜まった疲れが少しだけ吹き飛んだ気がした。
と言うのも、与えられた役割や無許可外出に大介達とのお喋りまで、今までの自分の行動には全て何かしらの理由が伴っていた。
「ほー、こんななってんだ。意外とキレイ。掃除でもしてんの?」
未来に飛ばされてから初の、意味を求められない行為。
ささやかな冒険が限られたスペースの内だとしても、顔本の探求心は大いにくすぐられ、後に押し寄せるであろう筋肉痛や上司が落とす雷をしばし忘れていられた。
「んで、景色は……だろうな」
ここからの眺めには期待し過ぎたのかもしれない。渋谷のビル群を上から見下ろすのは新鮮な感覚ではあるが、境界線から先は荒れた岩肌が続くばかり。これは予想通りに終わった。
見渡す限りの茶色の中に、大都会だった名残として灰色がまばらに点在している。
「東京タワーもスカイツリーも、あんなんなっちゃって……」
周りもたしかに東京だった。そして、たしかに滅びたんだ。
「ひとりぼっちだね、渋谷さんよ」
話しかけた相手は肩を持たない存在の為、手を突いているフェンスを代わりにポンポンと叩く。視点が高所な分、半径1㎞がより狭く感じてしまい心細さが増した。
空は深夜とも早朝とも決め難い色味。脱走が発覚するにはまだまだ猶予がありそうだ。
「し、死にそ……」
どこまで昇っても階数を示す数字以外、変わり映えのしない閉鎖的空間。顔本は元の廊下へ戻る扉をじっと見つめた。その先には、ボタン1つで最上階まで送り届けてくれる文明の機器がある。
「だめだっ。警察の、みんなの電気っ!」
結局は意地が誘惑に打ち勝った。
渋谷警察署の屋上に足を踏み入れた時には、起床時刻から小一時間経過していた。外も行動するには支障の無い明るさなので懐中電灯は切っておく。
「うおっ、風強っ…」
地上とは流れの強さが違う空気を吸うと心が軽くなり、溜まった疲れが少しだけ吹き飛んだ気がした。
と言うのも、与えられた役割や無許可外出に大介達とのお喋りまで、今までの自分の行動には全て何かしらの理由が伴っていた。
「ほー、こんななってんだ。意外とキレイ。掃除でもしてんの?」
未来に飛ばされてから初の、意味を求められない行為。
ささやかな冒険が限られたスペースの内だとしても、顔本の探求心は大いにくすぐられ、後に押し寄せるであろう筋肉痛や上司が落とす雷をしばし忘れていられた。
「んで、景色は……だろうな」
ここからの眺めには期待し過ぎたのかもしれない。渋谷のビル群を上から見下ろすのは新鮮な感覚ではあるが、境界線から先は荒れた岩肌が続くばかり。これは予想通りに終わった。
見渡す限りの茶色の中に、大都会だった名残として灰色がまばらに点在している。
「東京タワーもスカイツリーも、あんなんなっちゃって……」
周りもたしかに東京だった。そして、たしかに滅びたんだ。
「ひとりぼっちだね、渋谷さんよ」
話しかけた相手は肩を持たない存在の為、手を突いているフェンスを代わりにポンポンと叩く。視点が高所な分、半径1㎞がより狭く感じてしまい心細さが増した。
空は深夜とも早朝とも決め難い色味。脱走が発覚するにはまだまだ猶予がありそうだ。