Case④ デマの力
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今まで人々が行っていた親切というものは、当人の心に余裕があったからこそ存在が許されていたのだろうか。ボランティアの手入れが行き届かなくなり頭を垂れた花を視界に入れたくなくて、花壇の角に腰掛けている顔本はうんと顔を上げ天空へ目を向けた。
「良~い、天気ですね~」
こんな余計なことまでぐちゃぐちゃと考えてしまうのは、いつもと違い気が緩み切っているためでもある。
視線はまだらな雲に預けたまま、松葉杖卒業間近の脚の次に包帯が取れた腕を差し出す。担当医に身を委ねている最中の顔本は完全なるオフモード。
だらしのない半開きの口を見つけたのが泉海や黒岩ならば真っ先に注意していたところだが、堂嶋幹夫は見なかったことにして微笑む。
「曇り空がお好きですか?」
「曇りでも日光は日光。日の光って、やっぱ人間にも大事っすよ。ねえ?先生」
「はい」
反対側の脚と腕も念のためチェックしてもらう。それらの診察は極短い時間で完了した。
「自然を楽しめる余裕があることも、良い傾向ですね」
「怪我、治っていってる証拠ですよね?」
「わずかながらですが、改善しています」
そう言い渡しながら、膝を突いていた外科医は患者の前で一旦立ち上がり、彼女の隣へ静かに座った。
「でも痛いっちゃあ痛いんですよ?手術絶対必要だと思うんだけどなぁ」
「そう思われますか」
「あっ、気に障ったらすんません、先生。今のイヤミじゃないですから。素人の自己診断ですから」
「手術ですか。電気も機材も満足に使えるようになれば、すぐにでも」
つい口から出た失言にもわざとらしくなってしまった撤回にも、彼はイラつく素振りを一切見せず真面目に取り合ってくれる。
「うーん…」
「何か気掛かりなことでも?」
「いや、ね。特に何もしてもらってないのに、死ぬ程痛かった怪我が治ってきてるのって…私凄すぎる」
「ははは」
「凄すぎて、変じゃないですか?」
「ははは…」
医師は自分の声色や表情に細心の注意を払って受け流した。
「これが自然治癒力ってやつか…!?」
「本来でしたら即入院ですよ?出来ることならば付きっきりで診て差し上げたい」
「有り難いことに売れっ子受付嬢なんでね、そんな時間無いですよ」
「じゃあ今日は特別にお休みなんですか?」
「や、そうでもないです。実はここんところ客足途絶え気味で」
「……なるほど」
売れっ子と自称する癖に閑古鳥を鳴かすとは。矛盾を即座に指摘しないでやるのは彼の優しさでもある。
「良~い、天気ですね~」
こんな余計なことまでぐちゃぐちゃと考えてしまうのは、いつもと違い気が緩み切っているためでもある。
視線はまだらな雲に預けたまま、松葉杖卒業間近の脚の次に包帯が取れた腕を差し出す。担当医に身を委ねている最中の顔本は完全なるオフモード。
だらしのない半開きの口を見つけたのが泉海や黒岩ならば真っ先に注意していたところだが、堂嶋幹夫は見なかったことにして微笑む。
「曇り空がお好きですか?」
「曇りでも日光は日光。日の光って、やっぱ人間にも大事っすよ。ねえ?先生」
「はい」
反対側の脚と腕も念のためチェックしてもらう。それらの診察は極短い時間で完了した。
「自然を楽しめる余裕があることも、良い傾向ですね」
「怪我、治っていってる証拠ですよね?」
「わずかながらですが、改善しています」
そう言い渡しながら、膝を突いていた外科医は患者の前で一旦立ち上がり、彼女の隣へ静かに座った。
「でも痛いっちゃあ痛いんですよ?手術絶対必要だと思うんだけどなぁ」
「そう思われますか」
「あっ、気に障ったらすんません、先生。今のイヤミじゃないですから。素人の自己診断ですから」
「手術ですか。電気も機材も満足に使えるようになれば、すぐにでも」
つい口から出た失言にもわざとらしくなってしまった撤回にも、彼はイラつく素振りを一切見せず真面目に取り合ってくれる。
「うーん…」
「何か気掛かりなことでも?」
「いや、ね。特に何もしてもらってないのに、死ぬ程痛かった怪我が治ってきてるのって…私凄すぎる」
「ははは」
「凄すぎて、変じゃないですか?」
「ははは…」
医師は自分の声色や表情に細心の注意を払って受け流した。
「これが自然治癒力ってやつか…!?」
「本来でしたら即入院ですよ?出来ることならば付きっきりで診て差し上げたい」
「有り難いことに売れっ子受付嬢なんでね、そんな時間無いですよ」
「じゃあ今日は特別にお休みなんですか?」
「や、そうでもないです。実はここんところ客足途絶え気味で」
「……なるほど」
売れっ子と自称する癖に閑古鳥を鳴かすとは。矛盾を即座に指摘しないでやるのは彼の優しさでもある。