Case③b 大人達と子供
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・状況や時系列は謎
・元ネタはミロが泉海、黒岩、堂嶋幹夫をパペットのパイロットとして現地スカウトしているパロディイラスト
・捏造設定あり
【ニューロスーツを着た泉海】
「体のラインがはっきり出ちゃうのはちょっぴり恥ずかしいわね」
「……」
バストに密着する薄膜に戸惑いを見せるも、責任感の強い泉海巡査長はすぐに照れ笑いを止めた。
「でも、ルウちゃんや愛鈴ちゃん、男子のみんなだって渋谷を守る為いつも着用しているんだし、そんなこと言ってられない状きゃあ!?」
顔本は彼女の無防備な両胸を真顔で鷲掴みした。
「なっ、何するの顔本さん!?」
泉海は即座に退いたため、公然猥褻は一瞬で終了となった。
「衝撃吸収機能に優れ且つ着脱行為を阻害しない、ハイテクノロジーな特殊素材」
「は、はぁ…!?」
「を、使用したスーツなんだろうなぁって。ヒトの手による揉み耐性は無いみたいっすね」
顔本は余韻、否、実証実験で得た結果を再確認するように宙をわきわきと揉み続ける。
「私で試さないで!」
「え?……じゃあ、マリマ」
「誰で試すのもダメ!」
【ニューロスーツを着た黒岩】
「おお、頼もしさアップ」
「まだスーツを着用しただけだが」
いつもと違う装いの渋谷警察署長。顔本はそんな彼の周りをうろつきながら全身をじろじろ眺め、感想を述べる。
「なんか、署長1人でリヴィジョンズ全滅させちゃうんじゃないかなって気になってくる」
「非現実的な発想だな」
「あー、確かに。黒岩さん無双しそう」
「それわかるかも!」
側に居た慶作は顎に手を当てて会話に参加。ルウ達も顔本の意見の方に頷いている。
「私なんかより、パペットたくさん乗ってくれたらなーなんて…」
「手真輪まで何を言っている」
「即戦力であることは確かですよ。黒岩さんが現場に居てくれれば百人力です」
「なんだと!?俺の方が強いに決まってる!」
「張り合うことではないだろう…」
黒岩は子供達の、特に堂嶋大介の反応に呆れ返って俯いた。ミロに適正判断すらされていない段階で盛り上がられても困る。
「そうだよ大介くん、署長は実際あんまり戦わない。どうせ指示出しのお偉いさんだから、第一線じゃなくて安全な場所でふんぞり返るってのがセオリーでしょ」
「彼らの前で仕置きされたいか」
「言い過ぎましたー」
【ニューロスーツを勧められる堂嶋幹夫】
ミロに差し出された小豆色のスーツを前に堂嶋幹夫はたじろいでいた。
膠着状態の警察署廊下へ、松葉杖を卒業したばかりの顔本が小走りで駆け寄って来る。
「ミロここに居たんだ。おやおや、先生もスカウト中?」
「ああ。だがこの通り拒絶されてしまった」
ミロの表情には全く変化が見られないが、肩を少しだけ落としている。
「えー?勿体無い」
「勿体無いとか、そういうことではないでしょう。人間、向き不向きがあります」
「脳神経の観点から判断するならば、大介の親族である堂嶋幹夫の適合率は高い。故に、パペットマスターに向いていると私は思う。後日、浅野良枝にも提案しに行く予定だ」
「ご婦人にも勧めるのですか?」
自分にしろ慶作の母親にしろ、未来のロボットに搭乗しシビリアンと戦闘する姿が全く想像できない。
「とにかく頼む。これもデータ収集のためだ」
「そうは言われましても…」
「加勢するよ、ミロ!」
「助かる」
「ミロさんはともかく顔本さんまで…」
当人以上に乗り気な顔本に、今日の内に言っておかねばと幹夫は目付きを変えた。
「ご自分で何を仰っているのか、お分かりですか?人に、2017年の人間に、戦闘への参加を勧めているんですよ?」
「そう捉えられちゃってたか。いや失礼。私はただね、このエ……悩まし……」
「はい?」
「ぴっち……特殊なスーツを着た先生を見てみたい。それだけなんです」
「……」
堂嶋幹夫は苦言すら諦めてしまう。普段はどんな患者にも分け隔てなく優しく接する彼だが、軽蔑の眼差しをためらいなく顔本へ送った。
「先生今洋服でしょ?首元開放的じゃん。顎ギリギリまでガッチリしてるやつ着た先生、逆にね?良いと思うんだ。逆にね。なのに胴体部分はこの薄さ!っていうね」
「……深くお考えにはなっていないんですね」
「んもー、絶対似合うからぁー、着てみましょうよぉー」
「……そんなに見たいんですか?」
「せっかくだし、着るだけ着るだけ!ね?」
意見のレベルがまるで低い。同年代ではなく、女子版の甥を相手していると思えば耐えられるだろうか。幹夫は自主的に柔らかい笑みを溢した。
「理解に苦しみます」
「じゃあ、もっと簡潔に……人がコスプレするとこもコスプレして恥ずかしがるとこも見てて面白い。これでご理解いただけましたか?」
「更に理解に苦しみます」
「やはり、このスーツは…」
ずっと黙っていたミロは、2人が全く身にならない会話をしている最中、とあることに気が付いていた。
「どしたの?」
「不具合でも見つかりましたか?」
「顔本用だ」
「えっ」
「おや」
顔本と堂嶋医師の表情が交換された瞬間であった。
「私としたことが。堂嶋、引き留めて済まなかったな。明日専用スーツを用意しよう。顔本、これを着てくれ」
「ちょ、待っ、急展開っ」
「何を待てと言うんだ。さあ」
つい先程までの流れをミロは微塵も引きずらない。自身の言動に右往左往する周囲の様子にピクリとも笑わず、かといって顔本に申し訳なさそうにもせず、淡々と目の前の任務をこなす。
「頼む」
切り替えがあまりにも早過ぎる。いや、これこそミロという人間なのだ。
「顔本さんこういうの好きそうじゃないですか」
今日のところは許された外野からの発言は、何たるお気楽なことか。
「操縦とかは興味あるけどっ、私は、自分自身はっ、別に良いんだよそういうの…!」
「良いか悪いかはテスト結果から判断する、安心しろ」
「勿体無いですよ?顔本さん。せっかくの機会なんですから、着るだけ着るだけ」
こんなにも早くしっぺ返しを食らう羽目になるとは。顔本は今更ながら己の軽率な態度を後悔した。
「顔本さんが羞恥に震える様を是非とも拝見したいものです」
「理解に苦しむっつってましたよね!?」
「さあ、何のことでしょう」
「スーツの着脱について説明しよう。泉海、そこの空き部屋を使用させても構わないだろうか」
「勿論よ」
待ってましたと言わんばかりに1名がミロ側の勢力に加わった。
「良かったわね~顔本さん。S.D.S.の哨戒任務、あんなに羨ましがっていたじゃない。それに、ご自身の身を以てして特殊素材を体験できるのよ?」
警察の制服に着替えた泉海が、いつの間にか顔本の背後に立っていた。
「私も試してみようかしら、その効果…!」
先程の顔本と同様に、両の手は宙を揉みしだく。口角が吊り上がってはいるが、彼女の眉間は明らかに怒りを表している。
「誰で試すのもダメってさっき…やあああー!!」
あっさり取り押さえられた顔本はその辺の小部屋に閉じ込められ、ぴっちりスーツ姿で廊下に再登場するまで自由を許されなかった。
「うぅ~、くそ~」
「良いじゃないですか、よくお似合いですよ」
「バカにしくさって~…」
堂嶋は一応フォローの意も込めて拍手を送るが顔本を追い詰めるだけに終わる。
「顔本。泣く程着用が困難だったか?」
「精神的にね!」
「そんなっ…」
この光景を強く望み一番働きかけた泉海はというと、何故だか酷く絶望した様子で顔本へフラフラと歩み寄る。
「なんでこうも…」
「?」
「私より…っ!」
「ひあああ~!?」
泉海巡査長は込み上げる感情のままに仕返しを開始した。
「結構痛い!強いぃっ!」
そのまま背中を壁に押し付けられ、顔本は逃げ場を失う。
「このーっ!」
「もーいいでしょーっ私そんな揉んでなかったぁー!」
「いいえ、まだ足りません!もっと反省しなきゃだめ~っ!」
ひるんだ顔本は全力で暴走している泉海をなかなか剥がすことが出来ない。
「うああっ、ん、なんかっ…変なっ……だあああっ!!参ったーっ、参ったあー!!」
「2017年の人々のスキンシップ形式は斬新だ」
「違いますからね。お二方、そういった実質的な行為は余所でやっていただけませんか…」
「騒がしいぞ」
穏やかな口調による指摘の後、曲がり角の先からお叱りの声が届く。
「ミロ、このスーツの着脱につい」
一筋の希望を抱き力を振り絞って逃げてきた顔本が、色違いのニューロスーツ姿でいる黒岩にぶつかった。
「顔本、お前まで候補に入っていたのか!?」
彼に受け止められた顔本は涙目のまま懇願する。
「署長!助けて!泉海さんに胸揉み尽くされる!いいやもぎ取られる!」
顔本は黒岩の腕の中から飛び起き、高身長の彼にぴったりくっついて盾にする。
「それで解決するならば潔く差し出せ」
「はいぃい!?渋谷警察のトップがそれ言っちゃう!?」
「どうせ元凶はお前なんだろう」
「くっ、味方が居ない…!」
残念ながら全て見抜かれている。がっくしと頭を垂れた顔本はしがみついている腕に体重を掛けた。
「……それより、離れてくれないか」
「相談窓口係から盾も奪うおつもりで?」
「……胸部が……」
「狂舞?」
今の顔本の胸元はゆっくり押し付けられているため、ニューロスーツの特殊素材は2人の間を邪魔しないよう限り無くゼロの感覚へ変貌していた。
それを黒岩の目線でようやく認知する。
「うわっ!無自覚セクハラしてたっすんません!!」
微動だにしなかった上司から顔本は即座に離れた。
「……いや、気にしていない」
「……全く気にされないのもそれはそれでなんかムカつくなー」
「あ、顔本さんも着てるじゃん」
現パペットマスター達が居まずい空気を丁度掻き消しに来てくれた。出方をうかがっていた泉海も一旦真面目モードに切り替える。
「やっぱなんか雰囲気違うな」
「いつも警官服しか着てないからね私。ひと味違うだろー?」
「よっ、特攻隊長!」
「似合ってるよー顔本さんっ」
「ふんっ、ふんっ!どうよ?」
「あははっ、それじゃボディビルディングだよ!」
最初は目に涙を浮かべていた顔本も、子供達を前にすると余裕が芽生えてきた。ある程度時間も経過しているし、この状況に慣れてきたようだ。
「たださー、中にブラジャー付けらんないのが難点だねー」
慣れ過ぎたようだ。自身の胸を無遠慮に掴み上げて不満を漏らす。
「!?」
大胆な行動に、男子諸君だけでなくルウ達も閉口してしまった。
「こんなんじゃ垂れちゃうよー」
手を退かせばそこは、重力に従って数回微かに揺れ動く。
わざとでもそうでなくとも質が悪い。黒岩署長は青少年らを庇うようにして立ちはだかった。
「早急に着替えなさい」
「え?これ?まだ泉海さんに続き揉ませてないですけど」
黒岩への返答は誤解を招き、子供達は更に顔本から距離を取った。女子は泉海からも。
「あとミロの指示も仰がなきゃ」
「良いから着替えろ。その……色々と乱れる!!」
・元ネタはミロが泉海、黒岩、堂嶋幹夫をパペットのパイロットとして現地スカウトしているパロディイラスト
・捏造設定あり
【ニューロスーツを着た泉海】
「体のラインがはっきり出ちゃうのはちょっぴり恥ずかしいわね」
「……」
バストに密着する薄膜に戸惑いを見せるも、責任感の強い泉海巡査長はすぐに照れ笑いを止めた。
「でも、ルウちゃんや愛鈴ちゃん、男子のみんなだって渋谷を守る為いつも着用しているんだし、そんなこと言ってられない状きゃあ!?」
顔本は彼女の無防備な両胸を真顔で鷲掴みした。
「なっ、何するの顔本さん!?」
泉海は即座に退いたため、公然猥褻は一瞬で終了となった。
「衝撃吸収機能に優れ且つ着脱行為を阻害しない、ハイテクノロジーな特殊素材」
「は、はぁ…!?」
「を、使用したスーツなんだろうなぁって。ヒトの手による揉み耐性は無いみたいっすね」
顔本は余韻、否、実証実験で得た結果を再確認するように宙をわきわきと揉み続ける。
「私で試さないで!」
「え?……じゃあ、マリマ」
「誰で試すのもダメ!」
【ニューロスーツを着た黒岩】
「おお、頼もしさアップ」
「まだスーツを着用しただけだが」
いつもと違う装いの渋谷警察署長。顔本はそんな彼の周りをうろつきながら全身をじろじろ眺め、感想を述べる。
「なんか、署長1人でリヴィジョンズ全滅させちゃうんじゃないかなって気になってくる」
「非現実的な発想だな」
「あー、確かに。黒岩さん無双しそう」
「それわかるかも!」
側に居た慶作は顎に手を当てて会話に参加。ルウ達も顔本の意見の方に頷いている。
「私なんかより、パペットたくさん乗ってくれたらなーなんて…」
「手真輪まで何を言っている」
「即戦力であることは確かですよ。黒岩さんが現場に居てくれれば百人力です」
「なんだと!?俺の方が強いに決まってる!」
「張り合うことではないだろう…」
黒岩は子供達の、特に堂嶋大介の反応に呆れ返って俯いた。ミロに適正判断すらされていない段階で盛り上がられても困る。
「そうだよ大介くん、署長は実際あんまり戦わない。どうせ指示出しのお偉いさんだから、第一線じゃなくて安全な場所でふんぞり返るってのがセオリーでしょ」
「彼らの前で仕置きされたいか」
「言い過ぎましたー」
【ニューロスーツを勧められる堂嶋幹夫】
ミロに差し出された小豆色のスーツを前に堂嶋幹夫はたじろいでいた。
膠着状態の警察署廊下へ、松葉杖を卒業したばかりの顔本が小走りで駆け寄って来る。
「ミロここに居たんだ。おやおや、先生もスカウト中?」
「ああ。だがこの通り拒絶されてしまった」
ミロの表情には全く変化が見られないが、肩を少しだけ落としている。
「えー?勿体無い」
「勿体無いとか、そういうことではないでしょう。人間、向き不向きがあります」
「脳神経の観点から判断するならば、大介の親族である堂嶋幹夫の適合率は高い。故に、パペットマスターに向いていると私は思う。後日、浅野良枝にも提案しに行く予定だ」
「ご婦人にも勧めるのですか?」
自分にしろ慶作の母親にしろ、未来のロボットに搭乗しシビリアンと戦闘する姿が全く想像できない。
「とにかく頼む。これもデータ収集のためだ」
「そうは言われましても…」
「加勢するよ、ミロ!」
「助かる」
「ミロさんはともかく顔本さんまで…」
当人以上に乗り気な顔本に、今日の内に言っておかねばと幹夫は目付きを変えた。
「ご自分で何を仰っているのか、お分かりですか?人に、2017年の人間に、戦闘への参加を勧めているんですよ?」
「そう捉えられちゃってたか。いや失礼。私はただね、このエ……悩まし……」
「はい?」
「ぴっち……特殊なスーツを着た先生を見てみたい。それだけなんです」
「……」
堂嶋幹夫は苦言すら諦めてしまう。普段はどんな患者にも分け隔てなく優しく接する彼だが、軽蔑の眼差しをためらいなく顔本へ送った。
「先生今洋服でしょ?首元開放的じゃん。顎ギリギリまでガッチリしてるやつ着た先生、逆にね?良いと思うんだ。逆にね。なのに胴体部分はこの薄さ!っていうね」
「……深くお考えにはなっていないんですね」
「んもー、絶対似合うからぁー、着てみましょうよぉー」
「……そんなに見たいんですか?」
「せっかくだし、着るだけ着るだけ!ね?」
意見のレベルがまるで低い。同年代ではなく、女子版の甥を相手していると思えば耐えられるだろうか。幹夫は自主的に柔らかい笑みを溢した。
「理解に苦しみます」
「じゃあ、もっと簡潔に……人がコスプレするとこもコスプレして恥ずかしがるとこも見てて面白い。これでご理解いただけましたか?」
「更に理解に苦しみます」
「やはり、このスーツは…」
ずっと黙っていたミロは、2人が全く身にならない会話をしている最中、とあることに気が付いていた。
「どしたの?」
「不具合でも見つかりましたか?」
「顔本用だ」
「えっ」
「おや」
顔本と堂嶋医師の表情が交換された瞬間であった。
「私としたことが。堂嶋、引き留めて済まなかったな。明日専用スーツを用意しよう。顔本、これを着てくれ」
「ちょ、待っ、急展開っ」
「何を待てと言うんだ。さあ」
つい先程までの流れをミロは微塵も引きずらない。自身の言動に右往左往する周囲の様子にピクリとも笑わず、かといって顔本に申し訳なさそうにもせず、淡々と目の前の任務をこなす。
「頼む」
切り替えがあまりにも早過ぎる。いや、これこそミロという人間なのだ。
「顔本さんこういうの好きそうじゃないですか」
今日のところは許された外野からの発言は、何たるお気楽なことか。
「操縦とかは興味あるけどっ、私は、自分自身はっ、別に良いんだよそういうの…!」
「良いか悪いかはテスト結果から判断する、安心しろ」
「勿体無いですよ?顔本さん。せっかくの機会なんですから、着るだけ着るだけ」
こんなにも早くしっぺ返しを食らう羽目になるとは。顔本は今更ながら己の軽率な態度を後悔した。
「顔本さんが羞恥に震える様を是非とも拝見したいものです」
「理解に苦しむっつってましたよね!?」
「さあ、何のことでしょう」
「スーツの着脱について説明しよう。泉海、そこの空き部屋を使用させても構わないだろうか」
「勿論よ」
待ってましたと言わんばかりに1名がミロ側の勢力に加わった。
「良かったわね~顔本さん。S.D.S.の哨戒任務、あんなに羨ましがっていたじゃない。それに、ご自身の身を以てして特殊素材を体験できるのよ?」
警察の制服に着替えた泉海が、いつの間にか顔本の背後に立っていた。
「私も試してみようかしら、その効果…!」
先程の顔本と同様に、両の手は宙を揉みしだく。口角が吊り上がってはいるが、彼女の眉間は明らかに怒りを表している。
「誰で試すのもダメってさっき…やあああー!!」
あっさり取り押さえられた顔本はその辺の小部屋に閉じ込められ、ぴっちりスーツ姿で廊下に再登場するまで自由を許されなかった。
「うぅ~、くそ~」
「良いじゃないですか、よくお似合いですよ」
「バカにしくさって~…」
堂嶋は一応フォローの意も込めて拍手を送るが顔本を追い詰めるだけに終わる。
「顔本。泣く程着用が困難だったか?」
「精神的にね!」
「そんなっ…」
この光景を強く望み一番働きかけた泉海はというと、何故だか酷く絶望した様子で顔本へフラフラと歩み寄る。
「なんでこうも…」
「?」
「私より…っ!」
「ひあああ~!?」
泉海巡査長は込み上げる感情のままに仕返しを開始した。
「結構痛い!強いぃっ!」
そのまま背中を壁に押し付けられ、顔本は逃げ場を失う。
「このーっ!」
「もーいいでしょーっ私そんな揉んでなかったぁー!」
「いいえ、まだ足りません!もっと反省しなきゃだめ~っ!」
ひるんだ顔本は全力で暴走している泉海をなかなか剥がすことが出来ない。
「うああっ、ん、なんかっ…変なっ……だあああっ!!参ったーっ、参ったあー!!」
「2017年の人々のスキンシップ形式は斬新だ」
「違いますからね。お二方、そういった実質的な行為は余所でやっていただけませんか…」
「騒がしいぞ」
穏やかな口調による指摘の後、曲がり角の先からお叱りの声が届く。
「ミロ、このスーツの着脱につい」
一筋の希望を抱き力を振り絞って逃げてきた顔本が、色違いのニューロスーツ姿でいる黒岩にぶつかった。
「顔本、お前まで候補に入っていたのか!?」
彼に受け止められた顔本は涙目のまま懇願する。
「署長!助けて!泉海さんに胸揉み尽くされる!いいやもぎ取られる!」
顔本は黒岩の腕の中から飛び起き、高身長の彼にぴったりくっついて盾にする。
「それで解決するならば潔く差し出せ」
「はいぃい!?渋谷警察のトップがそれ言っちゃう!?」
「どうせ元凶はお前なんだろう」
「くっ、味方が居ない…!」
残念ながら全て見抜かれている。がっくしと頭を垂れた顔本はしがみついている腕に体重を掛けた。
「……それより、離れてくれないか」
「相談窓口係から盾も奪うおつもりで?」
「……胸部が……」
「狂舞?」
今の顔本の胸元はゆっくり押し付けられているため、ニューロスーツの特殊素材は2人の間を邪魔しないよう限り無くゼロの感覚へ変貌していた。
それを黒岩の目線でようやく認知する。
「うわっ!無自覚セクハラしてたっすんません!!」
微動だにしなかった上司から顔本は即座に離れた。
「……いや、気にしていない」
「……全く気にされないのもそれはそれでなんかムカつくなー」
「あ、顔本さんも着てるじゃん」
現パペットマスター達が居まずい空気を丁度掻き消しに来てくれた。出方をうかがっていた泉海も一旦真面目モードに切り替える。
「やっぱなんか雰囲気違うな」
「いつも警官服しか着てないからね私。ひと味違うだろー?」
「よっ、特攻隊長!」
「似合ってるよー顔本さんっ」
「ふんっ、ふんっ!どうよ?」
「あははっ、それじゃボディビルディングだよ!」
最初は目に涙を浮かべていた顔本も、子供達を前にすると余裕が芽生えてきた。ある程度時間も経過しているし、この状況に慣れてきたようだ。
「たださー、中にブラジャー付けらんないのが難点だねー」
慣れ過ぎたようだ。自身の胸を無遠慮に掴み上げて不満を漏らす。
「!?」
大胆な行動に、男子諸君だけでなくルウ達も閉口してしまった。
「こんなんじゃ垂れちゃうよー」
手を退かせばそこは、重力に従って数回微かに揺れ動く。
わざとでもそうでなくとも質が悪い。黒岩署長は青少年らを庇うようにして立ちはだかった。
「早急に着替えなさい」
「え?これ?まだ泉海さんに続き揉ませてないですけど」
黒岩への返答は誤解を招き、子供達は更に顔本から距離を取った。女子は泉海からも。
「あとミロの指示も仰がなきゃ」
「良いから着替えろ。その……色々と乱れる!!」