Case③a 相談係兼任
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・男子組とお喋り
S.D.S.の男子3人は顔本の話を大人しく聞いていた。彼女は机の向こう側の寝台で腕組みをしている。
「じゃあ次!戦闘において優先すべきことと言えば?はい出席番号3番堂嶋くん!」
「そんなの決まってる、敵を片っ端からブッ倒す!」
「ハルクくらい頑丈なら君はそれで良いよ」
ガイは顎に手を当てずとも回答内容が既に固まっていた。
「負傷しないこと、ですか」
「そう!殺されない、死なない、怪我しない」
「じゃあ俺あってんじゃん。やられる前に相手を倒せば良いんだろ」
「あのさぁ…」
「まあまあ大介」
慶作は顔本が出しておいた羊羮でうるさい友の口を塞いだ。
「顔本さんの話には続きがあるからひとまず聞こうぜ?でしょ?」
彼からのパスに顔本はしっかりと頷いた。
「てことで、今日は自分の弱点を把握しましょう!」
「いきなり飛躍しましたね」
「長所を伸ばせだとか得意なことで生きていくだとか平和な世界じゃ言われてたけどね、戦闘の場において足引っ張るようじゃ正直命取り!」
この場に愛鈴が居なくて本当に良かった。慶作はポーカーフェイスを崩しかけた。
「それは仲間でカバーし合えば問題ない!だろ?俺達幼馴染みなんだから息もぴったりだし」
「単独で任務に当たる時は?」
「えーっと…」
「チームワークを頼りにできないミッションは、自分の問題解決能力がモノを言う!」
「う……まあ、そうか…」
「本格的だな」
ガイは腕組みをして椅子の背もたれに体を預けた。呟きとは対を成す態度だ。
「ありがと」
「当初の想像よりは、って意味です。で?これから自分の弱点を発表すれば良いんですか?」
「ほい」
顔本は自分の手元にあらかじめ用意しておいた紙と筆記用具を生徒達に渡す。
「何すんの先生?」
「ここに自分の弱点を書き出すべし。嫌いなもの、苦手な状況、怖いこと。で、そいつらの原因を深堀りする」
「はぁ」
大介は面倒臭そうに顔本を睨む。
自己分析にウィークポイントの炙り出しと改善なんて、ヒーローになるためには至極当たり前の責務。退屈なおさらい授業は期待未満だった。
「原因のそのまた原因の…って出しきってようやく、改善策なり代替案なりの出番!」
「ロジカルシンキングの訓練か。まあ、無駄ではないな」
「なんか道徳の時間っぽくて懐かし~い」
ガイと慶作は受け取った白紙の上でシャープペンシルの芯をカチカチと出した。大介はあることに気付き、ペン回しを中断する。
「なあ、顔本さんはやんないの?」
「私?」
「これじゃあなんか、俺らだけ弱味見せるみたいじゃんか」
それを聞いた2人は手の動きと真面目な表情を止めた。
「たしかに、不公平ではあるな」
「せんせーずるーい」
「はあ?やんないなんて、ひとっことも言ってませんけど?」
顔本は慌てる素振りを一生懸命に隠し、堂々と予備の印刷紙を棚から引き抜いた。
「ん~?…ああ~?」
「それだけ悩むことができるって、顔本さんの人生割と幸せなのかも」
「いや、これ以上出てこないってだけ」
「もう全部書き出せたんですか?」
「おうよ」
男子学生に向けて掲げた紙にはたったの3行。
怒鳴る署長
イヤミ言う牟田ちゃん
ぷんぷん泉海さん←そうでもない
「……」
「……」
「……」
特に最初の文字列をぐるぐると囲んでいた円は、見た者を閉口させた。
「じゃ、例として原因と解決策を…」
字をすらすらと書き出していくペン先を3人とも目で追っていた。
何故怒られるか→ふざけたり勝手に行動するから→何故そうするのか→そうしたいから→最初から我慢して真面目に行動すれば良し
何故イヤミ言われるのか→私の言動が気に食わないから→何故気に食わない?→乱暴だから?→上品になれば良し
「……」
書き終えたところで顔本の仮眠室が静寂に包まれた。
「今日はもうお終い。帰って」
頬をぺたりと机に押し付け、張りを完全に失った声で授業終了を告げる。
「はあ~?もう終わりかよ」
「5分と持たなかったな」
「先生元気出して?個性だから気にしない気にしない。どーにかなるって~」
ガイは建設的な授業を彼女に期待すべきではなかったと席を立った。
「案外打たれ弱いんですね」
「悪かったな!」
「今の心理状況をご自身のウィークポイントとして再考されてはいかがですか」
「ガイ、さすがにキツいっしょーそれ」
「顔本さん自身が言い出したことだ」
自分のせいにされた顔本は頬乗せから顎乗せに変えて机上の紙を乱暴にずらす。
「うぅ~、そういう署長みたいなとこ大っ嫌い!」
「どうとでも」
「そーいう態度も!」
「まあまあ顔本さん。はい、あーん」
仲裁者はこの部屋に居る2人目の子供にお菓子を食べさせて容易く鎮めた。
「はあ~、慶作くんホント天使だわー」
「はい、あーん」
「あーむ……私があとホニャララ歳若かったらなぁ」
「ええー?今のままでも十分どストライクですよー?」
「こうやってフォローも手厚いしさ~。はい、あー」
「残念、本日はもう売り切れました」
空になった皿を掲げる世話焼き男子と、わかりやすく機嫌を直した大きな雛鳥。彼らのやり取りを大介とガイは遠巻きに眺めていた。
「顔本さんの慶作への評価って、やけに高いんだよな」
「それは当然だ、毎日と言って良い程大介の相手をしているだろ」
S.D.S.の男子3人は顔本の話を大人しく聞いていた。彼女は机の向こう側の寝台で腕組みをしている。
「じゃあ次!戦闘において優先すべきことと言えば?はい出席番号3番堂嶋くん!」
「そんなの決まってる、敵を片っ端からブッ倒す!」
「ハルクくらい頑丈なら君はそれで良いよ」
ガイは顎に手を当てずとも回答内容が既に固まっていた。
「負傷しないこと、ですか」
「そう!殺されない、死なない、怪我しない」
「じゃあ俺あってんじゃん。やられる前に相手を倒せば良いんだろ」
「あのさぁ…」
「まあまあ大介」
慶作は顔本が出しておいた羊羮でうるさい友の口を塞いだ。
「顔本さんの話には続きがあるからひとまず聞こうぜ?でしょ?」
彼からのパスに顔本はしっかりと頷いた。
「てことで、今日は自分の弱点を把握しましょう!」
「いきなり飛躍しましたね」
「長所を伸ばせだとか得意なことで生きていくだとか平和な世界じゃ言われてたけどね、戦闘の場において足引っ張るようじゃ正直命取り!」
この場に愛鈴が居なくて本当に良かった。慶作はポーカーフェイスを崩しかけた。
「それは仲間でカバーし合えば問題ない!だろ?俺達幼馴染みなんだから息もぴったりだし」
「単独で任務に当たる時は?」
「えーっと…」
「チームワークを頼りにできないミッションは、自分の問題解決能力がモノを言う!」
「う……まあ、そうか…」
「本格的だな」
ガイは腕組みをして椅子の背もたれに体を預けた。呟きとは対を成す態度だ。
「ありがと」
「当初の想像よりは、って意味です。で?これから自分の弱点を発表すれば良いんですか?」
「ほい」
顔本は自分の手元にあらかじめ用意しておいた紙と筆記用具を生徒達に渡す。
「何すんの先生?」
「ここに自分の弱点を書き出すべし。嫌いなもの、苦手な状況、怖いこと。で、そいつらの原因を深堀りする」
「はぁ」
大介は面倒臭そうに顔本を睨む。
自己分析にウィークポイントの炙り出しと改善なんて、ヒーローになるためには至極当たり前の責務。退屈なおさらい授業は期待未満だった。
「原因のそのまた原因の…って出しきってようやく、改善策なり代替案なりの出番!」
「ロジカルシンキングの訓練か。まあ、無駄ではないな」
「なんか道徳の時間っぽくて懐かし~い」
ガイと慶作は受け取った白紙の上でシャープペンシルの芯をカチカチと出した。大介はあることに気付き、ペン回しを中断する。
「なあ、顔本さんはやんないの?」
「私?」
「これじゃあなんか、俺らだけ弱味見せるみたいじゃんか」
それを聞いた2人は手の動きと真面目な表情を止めた。
「たしかに、不公平ではあるな」
「せんせーずるーい」
「はあ?やんないなんて、ひとっことも言ってませんけど?」
顔本は慌てる素振りを一生懸命に隠し、堂々と予備の印刷紙を棚から引き抜いた。
「ん~?…ああ~?」
「それだけ悩むことができるって、顔本さんの人生割と幸せなのかも」
「いや、これ以上出てこないってだけ」
「もう全部書き出せたんですか?」
「おうよ」
男子学生に向けて掲げた紙にはたったの3行。
怒鳴る署長
イヤミ言う牟田ちゃん
ぷんぷん泉海さん←そうでもない
「……」
「……」
「……」
特に最初の文字列をぐるぐると囲んでいた円は、見た者を閉口させた。
「じゃ、例として原因と解決策を…」
字をすらすらと書き出していくペン先を3人とも目で追っていた。
何故怒られるか→ふざけたり勝手に行動するから→何故そうするのか→そうしたいから→最初から我慢して真面目に行動すれば良し
何故イヤミ言われるのか→私の言動が気に食わないから→何故気に食わない?→乱暴だから?→上品になれば良し
「……」
書き終えたところで顔本の仮眠室が静寂に包まれた。
「今日はもうお終い。帰って」
頬をぺたりと机に押し付け、張りを完全に失った声で授業終了を告げる。
「はあ~?もう終わりかよ」
「5分と持たなかったな」
「先生元気出して?個性だから気にしない気にしない。どーにかなるって~」
ガイは建設的な授業を彼女に期待すべきではなかったと席を立った。
「案外打たれ弱いんですね」
「悪かったな!」
「今の心理状況をご自身のウィークポイントとして再考されてはいかがですか」
「ガイ、さすがにキツいっしょーそれ」
「顔本さん自身が言い出したことだ」
自分のせいにされた顔本は頬乗せから顎乗せに変えて机上の紙を乱暴にずらす。
「うぅ~、そういう署長みたいなとこ大っ嫌い!」
「どうとでも」
「そーいう態度も!」
「まあまあ顔本さん。はい、あーん」
仲裁者はこの部屋に居る2人目の子供にお菓子を食べさせて容易く鎮めた。
「はあ~、慶作くんホント天使だわー」
「はい、あーん」
「あーむ……私があとホニャララ歳若かったらなぁ」
「ええー?今のままでも十分どストライクですよー?」
「こうやってフォローも手厚いしさ~。はい、あー」
「残念、本日はもう売り切れました」
空になった皿を掲げる世話焼き男子と、わかりやすく機嫌を直した大きな雛鳥。彼らのやり取りを大介とガイは遠巻きに眺めていた。
「顔本さんの慶作への評価って、やけに高いんだよな」
「それは当然だ、毎日と言って良い程大介の相手をしているだろ」