ポクタル

仕事熱心な彼はラチェットの分のジュースを用意しに小さな建物に入っていった。

「……」

遠くで仲間が敵の船を破壊する音が聞こえる。順調そうだ。

目を閉じて全身の力を抜く。

こうして横になると、体全体がだるいことに気付く。今ポケットに入っているナノテック発生装置はほとんどラチェットのために使っているし、シップで座ったまま寝る程度では、知らない内に溜まっていた疲れを取り去るには不十分なのかもしれない。まともに休養をとったのは海洋惑星キャナルで受付嬢の家に泊まらせてもらった時くらいだ。

「これ終わったら…ラリタニウムの…」

様々な思考を次々と巡らせる。この星でやるべきこと、次の星でやるべきこと、ショップが使えないこと、ブラーグのこと、囚われた人類のこと、地球のこと。体は疲れているが、頭はまだまだ働きたいらしい。

ところで少し前になるが、ガスパーの終盤でラチェットに疑いをかけられた時。当時は焦っていて気が回らなかったが、彼に疑われたきっかけとなったブラーグの発言が今更ながら引っかかる。

“何でも、全知全能の人間だとか。武器も俺達のことも、この銀河の運命も全て知っているらしい”
“こ~れはこれは工作員ナンバー2、ボスが心配しておられましたよ?”

何故、科学者ブラーグとその手下はあんなことを言っていたのだろうか?

まるで、こちらのことをあらかじめ調べ上げているかのような口振りだ。

「……つーか、何で私のことあんなに…!」

疑問が心配へと変わり頭が冴え、瞼を開いた。そして一切の身動きを許されなかった。

自分の周りをぐるりと取り囲むのはモーニングコール用のラジカセではなく、この星に居る筈のなかった二足歩行の敵。全員の銃口がこちらに向けられている。

「……やっば」
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