ポクタル

青空の下、ジェットファイターが順調にブラーグの船を追撃していく。その様子を、ここのオーナーと観光客一人は呑気に見上げていた。

「そうだお客さん。あとでジュース代、ビーチチェアとパラソルの貸し出し代、払ってねー」
「ええ?ボルト取んの!?」

ジュース片手にくつろいでいた客は上体を跳ね上げた。

「当たり前だねー。サービスを受けるにはそれ相応の対価が必要だヨ、エヘェ」
「黙って自ら用意する奴の口から聞きたくなかったよ、それ」

たしかにジュースは美味しいし今座っているイスも良い木が使われていそうだが、これらが有料であることを利用前にきちんと教えてほしかった。

が、使ってしまったものは仕方がないので腹をくくる。今回はガラクトロンショップで買い物が出来なかった分、手持ちには少し余裕がある。

「で、いくら?」
「2万9千8百ボルトねー」
「待って」

その数字の前ではキンキンに冷えたジュースも生ぬるく感じた。

「何その金額」
「何ってお客さん、さっきも言った通り、ジュース二杯とパラソルとビーチチェアの分ねー。ブラーグ追っ払ってくれてるお客さんのジュースは、うちで一番高いスペシャルジュースねー」
「……後で払うよ…」

払えないこともないのだが、ボルトは全てラチェットに預けてしまっている。帰ってきたらリーダーはどんな顔をするだろうか。

「あ、お腹空いてる?サンドイッチくらいならすぐ用意できるヨ」
「いらない」

これ以上贅沢する訳にはいかない。先程の金額で既に目眩がしているのだ。眉間を揉むと想像以上に気持ち良い。

「私ちょっと寝るからさ、ラチェット達帰ってきたら起こして」

それを聞いた経営主はどこからかラジカセを取り出し、爽やかな音楽を流し始めた。

「モーニングコールってことだねお客さん、ヘヘ。音量はこのくらいでセットしとくヨ」
「やっぱいい。自分で起きるわ」
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