ポクタル

「この魚、なんで私達ばっかり狙ってくんの!?」

ゲームプレイ時から気にくわなかった。背のトゲを武器に回転攻撃してくる雑魚敵は、ボートを操縦する男にだけは見向きもしない。

「それはねー、エヘェ、ボクがこの子達のご主人様だからだねー」

彼が野生生物含めこのリゾート地を管理しているのだから納得だ。

「躾がなってないんじゃないの?ご主人様!」
「前まではこんなに凶暴じゃなかったんだねー。ブラーグ共がこの海を汚染してから変わっちゃったんだヨ。お陰で、この子達との触れ合いツアーに来ていたお客さんまで居なくなっちゃったねー」

今乗せてもらっているボートが平坦で柵が全く無いのは、温厚だった頃の魚達とツアー客との距離を縮めるためなのだろう。

インフォボットで観たコイツは観光客の生死も気にかけない程に楽観的で全く感情移入できなかったが、彼にも人生がある。彼も被害者の内の一人なのだ。

「大丈夫。全部私達がなんとかするから」
「それホント!?」
「おねーさん!勝手なこと言うなよ、弾も無いのに!」

ラチェットはパンチングラブの勢いでいろんな方向へ突進しながら魚をボートの外へ蹴散らしていく。

「弾が無い…?そう言えば、アンタらさっきから弾使わない武器で道開けてくれてるねー、ヘヘ。何で?」
「ガラクトロンがブラーグに乗っ取られたから、さっき弾薬補充できなかったの。この先手に入るかどうかわかんないから、なるべく温存しておきたくてね」

サックキャノンで吸い込んだ敵を海へ向かって打ち放ちながら回答した。

「へー、初耳だヨ」
「知らなかったッスか?大変なのは、ここポクタルだけじゃないってことッス」
「ハイハイ着いたヨ、ボートから降りてねー!さああともうちょっとで目的地だからね、頑張ってねー、エヘェ」

岸に着いたところで話をぶった切られた。この男は外の世界の情勢に興味が無いようだ。
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