バタリア 2回目

この星での戦いは二度目となるが、また何度か攻撃を食らってしまった。

しかし、今回は自分の心配は要らなくなかった。何故か今になって、ラチェットのズボンのポケットから癒しの光が必ず駆けつけてくれるようになったのだ。

「おっと、助かった」

更には余って行き場を失ったナノテック数個が自分の周りを漂っている。

無限に回復できることがこんなに頼もしいとは。これならいくらでも戦えそうだ。

「急に携帯がねえさんの受けたダメージに対して機能し始めたッスね」
「うん。だけど」
「ようやく一個だよ!死ぬかと思った」

この端末、今度はラチェットの回復をしなくなった。

切り込み隊長役の彼は道端の透明な箱を壊しながら愚痴をこぼす。

「コレ壊れてんじゃないの!?」
「そう?ラチェット、ちょっと貸してみて」

預けていた携帯を本来の持ち主が手にした途端、青白い光の玉が溢れ出し、それらは全てラチェットに吸い込まれた。

「わ!」
「ちゃんと発動するッスね」
「壊れてんじゃないのか…」
「恐らくこの携帯電話、所持していない仲間に向けてナノテックを放出する仕組みッス」
「ええ?持ってる本人は回復してくんないの?」

水源惑星にて、ラチェットが初めて死に顔を披露した時。海洋惑星にて、ラチェットが溺れて意識を失った時。いつも自分が携帯を手にしていた。

それが今は逆のパターン。ラチェットが所持していれば、体力回復されるのは所持していない人間だけ。

「ああ…そういうこと」
「じゃ、おねーさんが持っててよ」
「何で私なの?」

その役目は、戦いに強いラチェットの方が適任ではないだろうか。

「確かにオイラの方が力は強いけど、実際おねーさんの方が上手く立ち回れてるし、ケガする回数はオイラより少ない。バテにくい人に持たせた方が良いだろ?」

さも当たり前かのように言うとラチェットはポケットから例の携帯電話を取り出した。

「まあ、持ったまま倒れられるのが一番困るけど……良いの?」

オークソンで喧嘩した時から半ば人質として預けていたものだ。それを簡単に返されるとは思わなかった。

「何が?」
「いや…何でも…」
「…これはもともとおねーさんのものだからさ。やっぱり、おねーさんが持つべきだよ」

確かな口調と真剣な眼差し。リーダーは一つ前の惑星での口喧嘩をド忘れした訳ではなさそうだ。一度預けた理由を踏まえて、仲間を信じた上で、この便利アイテムを返してくれている。

「そう…じゃあ、任せてよ!」
「おう!」

本当はわざわざ預ける必要なんか無かったんだ。こうして仲間の信頼をしっかり得ている。

予想外の出来事はちらほら起こるものの、自分も戦いに充分参加できてきているし、便利な回復アイテムの仕組みだってわかってきた。順調そのものじゃないか。

勝手な充実感で胸を満たしながら、ラチェット・クランクと共に次の惑星ポクタルへ向かった。
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