アース

二人が私を放してくれた時には、既に皆を乗せたいくつもの宇宙船が飛んで行った後だった。もう何も見えない空を見上げ、立ち尽くす。

ラチェットが歩み寄って来る。

「…もしかすると、地球に残っている人って、おねーさんが最後…かな?」
「もしかしなくても、そうでしょ」

空は雲一つ無い、清々しい青色。私はこれから、どうすれば良い?

いきなり何もかも無くなった。これから、本当に、どうすれば良い?

「……」
「……ねえさん」
「何、クランク」
「更に追い撃ちをかけるようで気が引けるけど…これを、観てほしいッス」

インフォボットだ。

「惑星ノバリスのインフォボットッス」

ゲームの内容と同じ、星の一部を切り取るってやつか。

ビッグバッドボス。あんたのせいで、もう何もかも無茶苦茶。

「さっきのブラーグ達は、このビッグバッドボスの手下ッス」
「…うん」
「奴は恐らく、この地球も欲しいところだけを切り取ろうと企んでいるッス」
「…でしょうね」
「このままここにいたら危ないってことだよ!」
「…わかっているよ」
「いいや、わかっていない!」
「いきなりどうしたッスかラチェット」
「おねーさんは地球から逃げなきゃ死んじゃうんだよ!!本当に何にも、自分の命まで無くなって……それでもここでボーっとして待ってるっているの!?」
「……」

このままだと、死ぬのか、私。

「…オイラを助けに来てくれて、バクダンも使いこなせて…おねーさんはもっと強い人かと思っていたけれど。勘違いだったみたいだな」
「ラチェット…ねえさん…」
「行こうぜクランク、こんな腑抜けにもう用は無い」

死んでたまるか。訳のわからないまま死んでたまるか。

「…待って」

振り向かれる。

「ラチェット。人間は…地球人は、すごく弱いんだよ」
「言い訳なら聞きたくないね」
「でもね、守りたいものがあれば、どこまでも強くなれるの。本当は強い生き物なんだよ」

彼は黙って聞いてくれている。

「私は、家族を守りたい。ご近所さんも、日本人も地球人も守りたい……厚かましいけれど、ラチェットとクランクも守りたい」
「…おねーさん!」
「ねえさん!」
「守りたい人達のために、戦うよ」
「そうこなくっちゃ!」
「さすがねえさんッス!」
「いつまでもボーっとしている訳にはいかないよ!次はノバリスに行くんでしょ?…それでさ……私も…連れていって…くれないかな?」
「もちろんさ!」
「ねえさんが居ると心強いッス!」
「あ、足手まといじゃあ…ない?」
「今更何言ってんのさおねーさん」
「そこは否定してよ!あと、私はおねーさんじゃなくて」
「そうと決まればすぐ出発ッス!」
「オイラの船、三人乗れるかな?」
「…まあ良いか」

こうしてこの良いコンビに、私は着いて行くことにした。
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