バタリア 2回目
今渡っているレールはちょうど上下逆さま地帯に入った。
「頭に血が昇る~」
「もうすぐゴールだよおねーさん」
マグネブーツの扱いも、慣れてしまえば意外と簡単だ。今は歩き方なんかより体内の血流をどうにかしたいと思える程余裕が生まれている。
かなり歩きにくいだろうと覚悟していたのに。
全体重を支える程の強力な磁力は、実は足を離すタイミングで自動で弱まっているのかもしれない。そう考えると、他のガラメカだって使い手の都合の良いように作動してくれる優れモノ揃いだ。
「便利なもんだな…」
「ん?」
「ガラメカのこと」
多種多様なアイテムを生み出すガラクトロン社の技術は大したものだ。
「おっと」
ひっくり返って浮いているように見える敵が現れた。感心している場合ではない。
「おねーさん、後ろ来たら教えて!」
ラチェットはその背丈程もあるオムレンチを構えた。自分も応戦するため、ファイヤーバーナーを取り出す。
「ねえさん、ガラメカは使えないッス」
「え?…あっそうか!」
マグネレール上では数ある武器の内、オムレンチしか使うことができなかったことを思い出し納得した。
「ん?」
だが、何故使えないのか?今もこうして取り出し手に構えている。このまま発射してはいけない理由がわからない。
「……何でだっけ?」
「ええ?おねーさん、この世界のことゲームで見たんじゃなかったの?」
オムレンチを振り回しながらラチェットが口を挟む。
「細かいところまでは知らないよ」
「ラチェット、ねえさんが持っている知識は恐らく暫定的なものッス」
「どういうこと?」
「ガラメカの使い方やビッグバッドボスの動きを熟知している一方で、ガラメカの詳しい仕組みや地球の外の歴史については把握していないッス。つまり、テレビゲームで触れるような部分に限定された知識ってことッスよ」
「じゃあ、おねーさんの持ってる情報ってほんの一部なんだな」
「ああ、確かに」
他にもホバーボードレース受付お姉さんの家とか、地球人の女が異星人の男性からどう見られているかとか、ブラーグに連れ去られた人間の用途とか、知らないことだって多い。
「で、さ。ガラメカが今使えない理由を教えてほしいんだけど…」
奮闘するラチェットを余所に、逆さまのまま歩きながらクランクによる解説を受ける。
「フーム…まず、ねえさんはガラクトロン社とビッグボスドレック社をご存知ッスよね?」
「うん」
「この二つの大手企業が市場を独占し、競争していることも?」
「まあ、うん」
それは容易に想像できる。メガコープなんて名前も思い出したが、あれはシリーズ二作目で登場し誰かさんに乗っ取られる会社だ。
「フム。次に、ブラーグに限っては平地に生息する人型の他に、壁や天井を這うことを得意とする突然変異種が存在するッス」
「うん……ん?」
ネビュラG34で出くわしたクッション大のカエルが脳裏に浮かんだが、あれはブラーグではなく野生の雑魚敵だ。
「見たこと無いよ」
「ムム、なるほど…」
「ゲームにそいつ等は出てこないってことだな」
空飛ぶ小さい敵を掃除し終わったため、ラチェットも会話に加わる。
「まあ、あんな怖くて強いのゲームに出せないか」
「ワタシ達に会う前に、奴らに遭遇していなくてねえさんはツいてたッスね。ちなみに、突然変異種の誕生はオークソンの汚染が原因ッス」
「へー…」
クランクの言う通り、あんな劣悪環境におかれたらミュータントの一つや二つ誕生したって何らおかしくない。ブラーグだって、最初からガスマスク常備で星の汚染を始めた訳ではないだろうし。
と言うか、ちょっと知りたくない情報まで耳に入ってきてしまった。この先その化け物ブラーグに出会うことのないよう願う。
「ガラクトロン社はブラーグに自社製品のガラメカを悪用されることを防ぐため、まずは大抵のガラメカにストッパーを取り付けたッス。生き物で言う、三半規管のような装置ッス。何故だかお分かりッスか?」
「その壁や天井を歩けるブラーグに、ガラメカを使わせないため?」
「ご名答ッス」
今手に持っているバーナーも例外でない。使おうにも、平地に立っていない今はそのストッパーが炎の発射を許さないだろう。
「まあ、結局改造して悪用されちゃってるんだけどね」
「ええ~…」
かの有名なガラクトロン社が挙げた対策としては、間抜けというか不十分というか。かなり昔の出来事なのだろうか。
「あ!ならさ、ガラクトロン社は私達の味方になってくれるんだよね?」
「期待して問題ないッス。敵の敵は味方ッス」
「だね。しかもおねーさんは店員のおっさんのお気に入りだし」
ラチェットの言う通り、これまでは結構モテている。ガラクトロン店員に至っては100パーセントだ。買い物でオマケなんかしてくれるし、何より気分が良い。今後顔を合わせるであろうガラクトロン社のCEOだって優しくしてくれるかもしれない。
「頭に血が昇る~」
「もうすぐゴールだよおねーさん」
マグネブーツの扱いも、慣れてしまえば意外と簡単だ。今は歩き方なんかより体内の血流をどうにかしたいと思える程余裕が生まれている。
かなり歩きにくいだろうと覚悟していたのに。
全体重を支える程の強力な磁力は、実は足を離すタイミングで自動で弱まっているのかもしれない。そう考えると、他のガラメカだって使い手の都合の良いように作動してくれる優れモノ揃いだ。
「便利なもんだな…」
「ん?」
「ガラメカのこと」
多種多様なアイテムを生み出すガラクトロン社の技術は大したものだ。
「おっと」
ひっくり返って浮いているように見える敵が現れた。感心している場合ではない。
「おねーさん、後ろ来たら教えて!」
ラチェットはその背丈程もあるオムレンチを構えた。自分も応戦するため、ファイヤーバーナーを取り出す。
「ねえさん、ガラメカは使えないッス」
「え?…あっそうか!」
マグネレール上では数ある武器の内、オムレンチしか使うことができなかったことを思い出し納得した。
「ん?」
だが、何故使えないのか?今もこうして取り出し手に構えている。このまま発射してはいけない理由がわからない。
「……何でだっけ?」
「ええ?おねーさん、この世界のことゲームで見たんじゃなかったの?」
オムレンチを振り回しながらラチェットが口を挟む。
「細かいところまでは知らないよ」
「ラチェット、ねえさんが持っている知識は恐らく暫定的なものッス」
「どういうこと?」
「ガラメカの使い方やビッグバッドボスの動きを熟知している一方で、ガラメカの詳しい仕組みや地球の外の歴史については把握していないッス。つまり、テレビゲームで触れるような部分に限定された知識ってことッスよ」
「じゃあ、おねーさんの持ってる情報ってほんの一部なんだな」
「ああ、確かに」
他にもホバーボードレース受付お姉さんの家とか、地球人の女が異星人の男性からどう見られているかとか、ブラーグに連れ去られた人間の用途とか、知らないことだって多い。
「で、さ。ガラメカが今使えない理由を教えてほしいんだけど…」
奮闘するラチェットを余所に、逆さまのまま歩きながらクランクによる解説を受ける。
「フーム…まず、ねえさんはガラクトロン社とビッグボスドレック社をご存知ッスよね?」
「うん」
「この二つの大手企業が市場を独占し、競争していることも?」
「まあ、うん」
それは容易に想像できる。メガコープなんて名前も思い出したが、あれはシリーズ二作目で登場し誰かさんに乗っ取られる会社だ。
「フム。次に、ブラーグに限っては平地に生息する人型の他に、壁や天井を這うことを得意とする突然変異種が存在するッス」
「うん……ん?」
ネビュラG34で出くわしたクッション大のカエルが脳裏に浮かんだが、あれはブラーグではなく野生の雑魚敵だ。
「見たこと無いよ」
「ムム、なるほど…」
「ゲームにそいつ等は出てこないってことだな」
空飛ぶ小さい敵を掃除し終わったため、ラチェットも会話に加わる。
「まあ、あんな怖くて強いのゲームに出せないか」
「ワタシ達に会う前に、奴らに遭遇していなくてねえさんはツいてたッスね。ちなみに、突然変異種の誕生はオークソンの汚染が原因ッス」
「へー…」
クランクの言う通り、あんな劣悪環境におかれたらミュータントの一つや二つ誕生したって何らおかしくない。ブラーグだって、最初からガスマスク常備で星の汚染を始めた訳ではないだろうし。
と言うか、ちょっと知りたくない情報まで耳に入ってきてしまった。この先その化け物ブラーグに出会うことのないよう願う。
「ガラクトロン社はブラーグに自社製品のガラメカを悪用されることを防ぐため、まずは大抵のガラメカにストッパーを取り付けたッス。生き物で言う、三半規管のような装置ッス。何故だかお分かりッスか?」
「その壁や天井を歩けるブラーグに、ガラメカを使わせないため?」
「ご名答ッス」
今手に持っているバーナーも例外でない。使おうにも、平地に立っていない今はそのストッパーが炎の発射を許さないだろう。
「まあ、結局改造して悪用されちゃってるんだけどね」
「ええ~…」
かの有名なガラクトロン社が挙げた対策としては、間抜けというか不十分というか。かなり昔の出来事なのだろうか。
「あ!ならさ、ガラクトロン社は私達の味方になってくれるんだよね?」
「期待して問題ないッス。敵の敵は味方ッス」
「だね。しかもおねーさんは店員のおっさんのお気に入りだし」
ラチェットの言う通り、これまでは結構モテている。ガラクトロン店員に至っては100パーセントだ。買い物でオマケなんかしてくれるし、何より気分が良い。今後顔を合わせるであろうガラクトロン社のCEOだって優しくしてくれるかもしれない。