オークソン

暑苦しい星の次は、大地も空気も崖の下の海のような水場も汚染され一面緑色に染まった星、オークソン。ブラーグが手放した工場は今も稼働し続け、廃液を無限に垂れ流している。船のハッチ越しに見ても、どこもかしこも本当に汚い。

「うわぁ…」
「なんか……人の気配しないね…」

こんな気分の滅入る星には長居したくない。用事を済ませて、空気の綺麗な星に行きたいものだ。

「よっと」
「うぐぅ!?」
「うっ…げほ!くっさー!!閉めっ!」

このステージはガラメカのO2マスクが無ければ、特に外来生物は汚染された空気に耐えきれない。ハッチを開けるなら開けるで、是非その前に一言欲しかった。

一人だけ先に降り立ったクランクが心配そうに見てくる。

「換気換気!早く!」

ラチェットが目の前にあるスイッチを押し、呼吸可能な空気が無事に送られてきた。

「げほ、ふー…この星の探索はオイラ達には無理だな」
「見て、クランクは平気そう。頑張って~、気をつけてねー」

外の彼にはくぐもった声が聞こえているのだろうか。毒ガスをものともしないちびロボは、手を振りながらおそらく「ウーッス!」と返事した。

「大丈夫かな…」

ゲームがそこまで得意ではない私は、この惑星の2度目の探索辺りから苦労し始めた。主人公が何度も死んだ。

「クランクなら大丈夫さ」

1度目の探索はガジェボットの扱いや謎解きに慣れれば、言う程詰まってしまうことはなかった。そう、心配無用だ。

「だよね」
「ああ」

今自分達にできるのは、彼の帰りをひたすら待つことだけ。

「……」
「……」
「ハー……」
「……」

会話が無い。

何か話さなきゃ。

「……」
「……」

前の星ガスパーにて、ラチェットは信じると言ってはくれた。が、それでもこの人間に対する不信感は最高潮だろう。じゃなきゃ、腕組みしながらこちらを凝視してくる理由が無い。

かけられた疑いを再度しっかり晴らさなければ。私はブラーグの仲間じゃないと。

先手を打とう。

「おねーさん」

打てなかった。

「何?」
「前に、言わなくても別に良いって言ったけどさ、やっぱりあのこと話してくれない?」
「……そっち?」

ごく最近疑われたことではなく、今までずっと隠してきたことの方だ。

「そっち…って、どっち?」
「地球出身の人間。厳密に言うと日本人ね。今は全人類を助けるために宇宙を旅していまーす。家族構成は」
「おふざけ無し!わかってるんだろ?オイラが本当に聞きたい事」
「……」
「おねーさんは、どうしてそんなに物知りなの?何を抱えてるの?」
「……」
「ガスパーで敵が言ってた、全知全能ってやつ、本当なの?」
「……」

いつもと違って逃げ場は無いし、ここまで問い詰められてしまえば流石に誤魔化しきれない。丁度ゆっくり話す機会ができたんだし、もう観念してしまおう。

「うん。本当」
「……どうして?」
「……ゲーム」
「は?」
「ゲーム。好きなテレビゲームが、あって…」
「まさかそれ、さっきの続き?おねーさんってホントおふざけ好きだよね」
「最後まで聞いてよ。お願いだから」
「……わかった」
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