バタリア 1回目

船から雨の中へ降り立った途端、口髭を蓄えた軍人のおっさんに仕切られる。

「全員、直ちに気をつけぇ!」

デカい声に思わず三人とも敬礼。

「…て、なーんだ、援軍は女と子供か」
「む」
「それと、小さいロボットもお忘れなくッス」

明らかにバカにした態度に、クランクの場を和ませるフォローも無視しムキになってしまう。

「女だろうが子供だろうが、とにかく使える奴なら文句無いでしょ?兵不足って聞いたけど?」

しっかり訓練した男性兵士より使えないことは否めないけどね。それでも、相手は藁にもすがる思いだろう。

「確かに。重要なのは任務遂行だが、その為には敵前逃亡しない部下が必要だ!」

ゲーム中では彼についてほんの数シーンしか描写されていないが、実際にはかなりの兵を失っているのだろう。主に脱走で。

「ふむ…となると、お前の言い分は通るな。ブサイク女も少しは役に立つではないか」
「なっ…ブ、ブサ…!?」

こんな侮辱をラチェットは微塵も気にせず話し始める。

「ねえ、おねーさんもおっさんも!役に立つ以前にオイラ達は援軍じゃな」
「本題に入る!ブラーグの爆撃艦隊を墜とすには、我が軍が誇る回転砲台、ブラックキャノンしかない!やらねばこの星はお終いだ。まずは街の入り口に集合!」
「……」
「…行っちゃったね、失礼なおっさん」
「あんなんじゃ部下が逃げ出すのも納得だな」
「手伝ってあげるッスよ」

クランク以外は隊長に対して不快感極まりないが、その通りだ。

「まあね。彼もこの星もブラーグの被害者なんだし」

奴の持つインフォボットも欲しいし。やっぱりいつも通りに、既知のストーリーに沿っていきたいところ。

「えぇー?どうせ罠だぜ、また」
「……」
「……」
「…じゃ、行けよ。行きたい奴が行ってこいよ」
「…負け犬の遠吠えッスか」
「ふん、ちがわい。オイラにケンカ売ってんのかよ」
「ワタシの発言の、どこをどう捉えたらケンカ売ってるように聞こえるッスか?」
「あぁ!?んじゃあ教えてやるよ、そーゆーところが」
「まあまあ。行く・行かないどっちにしろ、ショップを覗くことには変わりないでしょ?」
「…フン!」

この頃のラチェットとクランクは、どうもケンカ腰だし不穏な空気が否めない。特にラチェットは出会った頃に比べ、だいぶひねくれてしまった。クォークの件をかなり引きずっている。

上手く、までは行かないにしろ、二人の仲を失敗しないように取り持つ必要がある。ストーリーに無かったからあり得ないとは思うが、空中分解なんてたまったもんじゃない。

「あい、らっしゃい!…お、勇敢なヒーローにべっぴんさんか!」
「だから、小さいロボットもお忘れなくッス!」

やはり地球人女のモテは健在。6ボルトぽっちの不良や孤軍奮闘していた隊長からの不評は一体何だったのだろうか。まあ今そのことは別に良い。

「なぁそれ、わざと言ってんの?」

今のラチェットに「ヒーロー」はNGワードだ。

急いでガラクトロンショップの商品欄をスライドさせる。

「ほ、ほら!新しいガラメカ入ってるじゃん、良かったね」
「ロケットバズーカか……よし、おねーさんが持ってなよ」
「毎度あり!」
「良いの?」

非常に有り難い。威力がそこそこあり、遠距離攻撃が可能。おまけにホーミング機能も付いている。かなり心強い武器だ。

「ああ。後ろからしっかりサポートしてよね。後・ろ・か・ら!」
「む」
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