アンブリス

連行中、何をふっかけてもクォークは終始無言。加えて、秘密惑星アンブリスに着くまでは目隠し以外特に何もされることは無かった。

ラチェット達が中ボス戦の広間の真上に来る前にそれは外され、代わりに両手足を縛られ口を塞がれてしまう。

「ここの横っちょで大人しくしててねー」
「……」

ムービーシーンに入る前の通り道。その途中に不自然に出っ張った小さな台座に乗せられてしまえば何もできない。彼らが来てくれるまでクォーク、否、スティーヴの言う通りにしていた。

酷い仕打ちを覚悟していたが、拘束のみとは拍子抜けだ。まあ、ストーリー通りこうして二人が来てくれるので無駄に争う必要は無いだろう。

「おっと…ついに来れちゃったんだね」
「おねーさん!」
「んむー!」

リーダーに何も伝えられない。

クォークは手のひらを返す。
目の前の台座は底が抜ける仕組み。
落ちた先には中ボス戦。

前もって言っておけば良かったかも。

「クォーク、なんでおねーさんをあんな」
「囚われのヒロインっぽくしたのかって?テンション上がるっしょ。そんなことより、さあその台座に立って!」
「なるほどッス、ねえさんも迫真の演技ッス!ラチェット、早く前に来るッスよ!」

やはりバカでかい敵との戦いは逃れられないか?

「んぅ~ん~!」
「やーな予感がするんだけどさぁ…」
「さては、臆病風に吹かれたか?」

今は吹かれてもいいんだよラチェット。

「そんなつもりじゃないんだけど…」
「ん゙ー!」
「まあ、この後おねーさん助けなきゃだしな」
「!?」

なんと、私自身が中ボス戦のふたを切って降ろすきっかけになろうとは。

「ありがとうクランク、そしてお嬢さん。お陰で助かったよ。ヒーローとお話したいだろう?」

小さな円盤でこちらへ飛んできたクォークによって、口を塞いでいた布がやっと外された。

ラッキーだ。彼らに助言できない展開が一番まずかったから。

「…ぷはっラチェット!クランク!」
「お久しぶりッスねえさん」
「すぐ迎えに行くって、言ったろ?」
「ああ、ありがとう。でも」

今は鼻の下こすりながらそんなこと言ってる場合じゃ、

「ハーイ、感動の再会はこのくらいにして!そろそろ本題に移ろうか」

リモコンのスイッチが押され、二人はマグマと土の足場と広い橋のあるステージへ呆気なく落ちていった。
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