キャナル

少し泳いで行き水中から顔を出すと、今居るプールを囲む円形の足場にたどり着く。いよいよ、あのトラウマステージか。

「こっちに道があるよおねーさあぁああーっ!?」

率先して進むリーダーさんは土や苔で覆われたダストシュートの様な通路に吸い込まれていった。

「ててて……早く来なよー!」

その先のゲートを開けば水攻めが始まる。そこかしこからコース上に水がどんどんなだれ込む恐怖。一定時間内にエレベーター前まで辿りつけないと主人公は溺れ死んでしまう。しかも、もたもたどころかわずかなミスも許されない程に時間制限がシビア。

焦りとゲーム慣れしていなかった頃の不器用さにより、過去に何匹のラチェットを葬り去ったことか。

「よし……行くか!」
「ラチェット。ねえさんもここを滑り降りてくるなら、少し下がった方が良いッス」
「そうだな」

ガコン

相棒達の会話と不穏な音が行く先からかすかに聞こえる。

「うわ、何だコレ!?水が!」
「どんどん溜まっていくッス!」

自分の耳を信じたくない。

「ラチェット!クランク!先行ってなさい!!ゲート開いたでしょ!」

急いで滑り降りると、着いた先はもう膝丈まで水がせり上がってきている。

行くしかない。

水に浸かってタイムロスしないように、背負っているプロペラを駆使しながら全速力で進む。戸惑いながら前を走るラチェットに追いついた。

「どーなってんのコレ!!罠!?」
「罠かどうかは知らないけど、さっさと進む!」
「ラチェット!もっと急ぐッス!このままじゃ溺れるッスよー!!」

背負われてるだけのクランクが足をバタつかせる。

たしかこの斜め下に向かう通路を抜ければ水攻めは終わり。安全な筈!先にはもう空気は残されていない。頬まで満タンになるくらい思い切り息を吸って、ラチェットと同時に潜る。
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