キャナル

ラチェット達は彼女の案内で、元居たホバーボードレース受付会場に戻ってきた。着くなりラチェットは「忘れてた!」と一言残し、辺りの木箱を壊しに行く。

「本当にありがとうございました」
「お礼を言いたいのはこっち。アナタ達、スキッドを助けてくれたんでしょ?ありがとう。何せホバーボードレース業界は、彼で半分成り立っているようなものだから」
「そうなんだ…」

人間の目からは、どいつもこいつもスキッドと大差無かったけどな。これは言葉に出さずしまっておく。

「そうだ。あの、一つ…聞いておきたいんですけど…」
「!」

その質問に、何故か待ってましたと言わんばかりに不適な笑みを浮かべられる。

「……何?」
「その…」

まるで暴露のタイミングでニヤケる裏切り者かのような態度にひるむが、思い切って切り出す。

「昨日いただいた魚って、この星で穫れた魚…?」
「ハァ?」
「えっ?」

通貨がジャラジャラ回収される音をバックに、お互いしばし沈黙。

「……フフ、違うわ。余所の惑星から取り入れた物よ。ここの海で穫れた魚なんか食べたら、ワタシでもお腹壊しちゃうわ」
「なーんだ、おねーさんも気になってたんじゃん」

ボルト稼ぎから戻ってきた頭をぺしっと叩いて黙らせる。

気になるに決まっている。ここが水源惑星や汚染される前のリゾート惑星だったら、私だってこんな心配してなかった。

「じゃあ、お世話になりました!」
「ありがと!」
「恩に着るッス!」
「元気でね」

見送られながら宙に浮くタクシー型の移動装置に乗り込む。一度あれで船着き場まで戻ってから、違うルートでクォークに会いに行く予定だ。

「待って。今度は私が先に乗る。私が良しって言うまで、絶対に飛び乗るんじゃないわよ…」
「揺らさないってば」
「ねえ、アナタ達は」

再度呼び止められる。少し思い詰めたような表情をしているが、すぐに素敵な笑顔で送り出された。

「いえ、何でもないわ。しっかりやるのよ」
「はい!」
「おう!」
「ウッス!」

自分らを心配してくれたのだろうか。だがあまり気にしないことにした。すぐにはぐらかされたのは、きっと大した話じゃなかったから。
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