キャナル

コースはゲームの通り。

「わっとと…!」

しかし体感は、指先と体全体とでは訳が違った。

「おねーさん!」
「もうっ、見てられないッス!」

受付会場のモニターから見守る相棒達は、連れの幼稚な走りに冷や冷やしていてもたってもいられない。

「クランクはここに居て!」
「ラチェット!?どこ行くッスか!?」
「あのビリ、初心者か?」
「大丈夫かしら?つーかあの子、どっかで見たことあるような…」
「ありゃあ走り切れねぇだろうな」

赤の他人にも心配される始末。

運動神経はここのところ向上してきているものの、体を動かす当人のセンスがまだ追いつけていない。

ジャンプやカーブが上手くできずに、どんどん他選手との差が開いていく。

このままでは終わる。色々と。

「冗談じゃな…わっ!」
「ああ!あいつ落ちるぞ!」

ラチェットが居なかったら、崖に体を打ち付けながら海へ落っこちて魚の餌になっていただろう。コース脇の岩場から手を伸ばしてくれた彼に感謝だ。

「ま、間に合った…!」
「ふー…ありがと。やっぱりムズいね」
「そう言ったじゃんか!ほら、リタイアしに戻るよ」
「それはしない」
「は!?」

コースまで引き上げられたので早速ボードを置き直す。

「自分が何言ってるかわかってるの?死にかけたんだよ!?」
「わかってる、でも私は優勝したいの」

自分の身体を宇宙人に捧げるつもりはない。

「相手はプロだよ、一回ミスったら追いつきっこないって」
「でも」
「だめ!」

初心者がごちゃごちゃ言い争っている内に、先頭集団は最終ラップを終えようとしていた。

「へっ、優勝も今夜のお楽しみもイタダキだゼ」
「そりゃどうかな?」
「!?テメェ…もう復帰しやがったのか!」
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