キャナル

「…あれ?」

蒸気で垂直方向に浮遊するマンホールは自分が乗ると若干上昇しにくくなる。やっとバランスを掴めてきたというのに、これではプロペラを使っても高い足場に届くかどうか微妙なところだ。先に楽々飛び移ったラチェットとクランクはまごついている私に気付く。

「おねーさんさ、ちょっとおも」
「ラチェット、それ以上言ったらねえさんの沽券を落とすッス。気付いてしまっても、黙ってレディーがこちら側に渡ってくるのをじっと待つのが紳士たるものッス」
「手は貸さないのかよ。あの高さまでしか上昇しないなら渡って来れないかもしれないじゃん」
「何時間でも待つッス」
「スイングショットでこっちに引っ張ってみる?」
「こちらの総重量と姉さんの重量を考えるッスよ。逆にワタシ達が引っ張られるのがオチッス。余計なことはしないに限るッス」
「おねーさんの体重が減るまで待つかぁ」
「大概にしろよ二人とも」

その声がしてから次に浮いてきた彼女はバクダングラブをしっかり構えていた。

「ねえさんが構えているあれ、向こうの戦車を狙っているものだとワタシは信じるッス」
「だから置いてけっつったじゃねーか、YO!」

握りしめていたバクダンはその野次のする後方へ。まだヨゥヨゥ聞こえるのでいくつか追加。

「あいつ、いつの間について来てんのよ」
「標的、向こうの戦車だったら良かったな」
4/20ページ